ショッピングがパーティー化「お買い物イベント」相次ぐ

2011年11月開催のFNOにて
2011年11月開催のFNOにて

 ショッピングが単なる「買い物」だったのはもう昔の話。近頃はショッピングという行為自体をまるでパーティーのような心躍る出来事に変えるイベントが相次いで開かれるようになってきた。以前から顧客向けの展示会のような催しはあったが、最近は地域全体を会場に見立てたり、たくさんのブランドが共同でセールパーティーを開いたりするような広がりを見せ始めた。米国では気の合う仲間で一緒にショップを巡る「ショッピングパーティー」が広まっているが、日本でもお買い物とパーティーをミックスしたようなイベントが浸透しそうな気配だ。(文:ファッションジャーナリスト 宮田理江

 街全体を会場に、音楽やアート、カフェなどと連動させたイベントが「FIRST FRIDAY HARAJUKU(ファーストフライデー原宿)」。第1回が東京・原宿地区で5月4日に開催された。原宿エリアのセレクトショップや、カフェ、ギャラリーなどが参加。アパレルショップは限定アイテムを用意したり、タイムセール、DJイベントなどを企画して、思い思いに来場者を楽しませた。イベント名が示す通り、毎月第1金曜日に開催。午後6時からのスタートという時間設定は、ナイトショッピングに誘う。ショッピングの前後にアートに触れたり、食事を楽しんだりできるので、ショップとの往復に終わらない立体的な過ごし方ができる。

 あちこちのショップやカフェでパーティーが開かれるので、パーティーをはしごするような「一夜セレブ」的な気分に浸れるのも、この催しの魅力と言える。東急プラザ内にオープンした「The SHEL'TTER TOKYO」でもショップ内パーティーが開かれた。服を見た次はギャラリーへ、その次はライブイベントへと、傾向の異なるイベントを連続的に体験できるから、重層的なカルチャー発信力を持つ原宿らしさを感じ取りやすい。毎月決まった曜日に開催されるので、あらかじめ予定を立てて友達と誘い合って出掛ける楽しみも生まれる。

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「FIRST FRIDAY HARAJUKU」が開催された「東急プラザ 表参道原宿」


 国内最大級のファッションセールパーティー「STOCK STYLE(ストックスタイル) 2012 S/S」(入場無料)は5月11〜13日、ベルサール渋谷ファースト(東京・渋谷)で開催された。人気30ブランドの今季のアイテムを最大8割引のセール価格で購入できるというお得感の高いイベントだ。通常のセールはシーズンの終わりに組まれるが、こちらは主な百貨店やファッションビルのバーゲンよりも一足早いセールとなるタイミング。まだシーズンに十分間に合うという点でも、消費者にとってのメリットが大きい。

 「パーティー」という味付けが施されているから、ただのバーゲンのような「買っておしまい」といった物寂しさを感じにくいのも、この催しのよさ。会場ではファッションショーやトークショーなどのイベントが開かれ、ショッピングの合間も退屈しない。タレントやモデルなどのゲストが日替わりで現れ、イベントに参加するので、さらにムードが盛り上がる。ゲストも会場内でショッピングを楽しむという演出も取り入れられていて、来場者はあこがれのゲストと一緒にお買い物パーティーに招かれたような特別な気分にも浸れる。随所にちりばめられた「パーティー」の要素が参加者のモチベーションを高め、お買い物モードに誘う。

 リアルイベントとは本来、距離のある電子商取引(EC)の世界でも、イベント的な演出をセールスに生かす動きが出始めた。ファッション通販サイトの「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」を運営するスタートトゥデイ が9月15、16日に、幕張メッセ(千葉市)で大型展示・販売イベントを開くと報じられた。発売前の新作を会場で予約し、後日、購入できる仕組みだという。こちらはセール価格ではないようだが、会場で実物を目にできる点で、これまでのファッションECの枠から踏み出す試みと言える。知り合いと誘い合って出掛けて、たくさんのアイテムを見て回れるという点ではショッピングパーティー的な要素もある。

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リアルイベントの開催が予定されている「ZOZOTOWN」


 日本最大級の会員制ファミリーセールサイト「Gilt Groupe(ギルト・グループ)」傘下で体験型サービスを提供する「GILT CITY」は、ファッションショーと音楽ライブを融合させたパーティーイベントのチケットの取り扱いを発表した。ラグジュアリーホテル「ザ・ペニンシュラ東京」の24階にあるレストラン「ピーター」を会場に5月26日、NYコレクションでも人気の大御所ブランド「BCBGMAXAZRIA(ビーシービージーマックスアズリア)」の2012年春夏コレクションをランウェイショーで披露する。ロンドンから来日するDJユニット「Us3」や、日本のトップDJらのパフォーマンスも一緒に楽しめるという、五感に訴えるイベントだ。

 パーティーに参加した女性全員に、「BCBGMAXAZRIA」銀座店でのショッピングの際に使える、同ブランドのクラッチバッグがもらえるクーポン券がプレゼントされるというおまけ付き。さらにゴージャスな気分に浸れるVIPプランでは、ソファ席をリザーブ。フランス産のプレミアムウォッカをボトルで味わえるという、特別なナイトアウトを満喫できそうな仕掛けになっている。

 国内でイベント連動型ショッピングの先駆けとなったのは、国内最大級のファッションイベントに成長した「東京ガールズコレクション(TGC)」だろう。ステージ上で披露される今季の新作をその場で携帯電話から注文できる仕掛けは、盛り上がりとセールスを同時に成り立たせる演出として受け入れられた。ランウェイショーを見るというレア体験を通して、その場で携帯電話経由での実売に結びつけるという消費誘導だ。

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2012年3月に開催されたTGC


 米国版「VOGUE」誌のアナ・ウィンター編集長が発案者に名を連ねるナイトショッピング・イベント「FASHION'S NIGHT OUT(ファッションズ・ナイト・アウト)」は実際にショップを訪れるリアル系のイベントで、深夜まで営業しているショップの中から選んで、誰でも好きな店で買い物ができるというオープンな仕組み。こちらは一夜限りというレア感がショッピングマインドをそそる。デザイナーやファッションアイコンら大勢の著名人がイベントやショッピングに参加する点でも「特別な一夜」のムードが出る。日本でも既に秋の恒例イベントとして定着しつつある。先に紹介した「FIRST FRIDAY HARAJUKU」はFNOの応用版とも見える。

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2011年11月開催のFNO

 ショッピングイベントのよさは、お買い物を孤独な行為に終わらせないで、友達や来場者と体験や感想を分かち合えるところ。SNSを介したつながりも広がりを見せつつあり、互いにアドバイスし合ったり、コーデを投稿しあったり、仲間の着こなしアイデアを参考にしたりといった結びつきが深まる流れにある。イベントをきっかけに買った商品には、その時の記憶が残るから、アイテム自体にも愛着が持てる。ブランドやショップのファンを育てる手法としても、ショッピングイベントは業界の関心を集めつつある。

 仲間同士で出掛ける場合、互いの視線が気になるので、ドレスアップのチャンスともなる。つまり、ショッピング自体がおしゃれの動機付けになるというわけだ。おしゃれ好きの間では、当日の装いに特定のテーマを設定する「しばり(ドレスコード)」付きのイベントも開かれるようになってきた。大半のイベントは販売側やメディアが提案するものだが、自分で企画することだってできないことはない。友達を誘ってアート鑑賞や食事などをショッピングの前後に組み入れて、ワンデーイベント風に設計して出掛ければ、おしゃれのモチベーションを高め合う機会が生まれる。ファッション業界で広がりを見せつつある「ショッピングのパーティー化」は、友達付き合いやファッションスキルアップなどの面でも効果が期待できるだけに、今後さらにバリエーションを広げていくに違いない。

(文:ファッションジャーナリスト 宮田理江


宮田理江 - ファッションジャーナリスト -
rieface_01.jpg 複数のファッションブランドの販売員としてキャリアを積み、バイヤー、プレスを経験後、ファッションジャーナリストへ。新聞や雑誌、テレビなど数々のメディアでコレクションのリポート、トレンドの解説などを手掛ける。コメント提供や記事執筆のほかに、企業・商品ブランディング、広告、イベント出演、セミナーなどを幅広くこなす。著書にファッション指南書『おしゃれの近道』『もっとおしゃれの近道』がある(共に学研)。
 http://fashionbible.cocolog-nifty.com/blog/

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