【短期連載】BGMから読み解く「ショップと音楽」の関係性 <1>ウィメンズショップ編

 店に入るとさり気なく聞こえてくる音楽。ガールズブランドではビートの効いたEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)、セレクトショップでは大人っぽい楽曲が流れている。そんな店舗BGMについてブランドはどのような位置付けをし、またその選曲に腐心しているのか。4~6月にかけて、セレクトショップを中心に一部ブランドショップのBGMについてUSENコンテンツ・プロデュース統括部の協力を得て調査。ジャンルの傾向と選曲方法、ショップと音楽との関わり方についてまとめてみた。第1回目はウィメンズショップ編。(アナログフィルター『Journal Cubocci』編集長・久保雅裕)

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調査協力企業名「ブランド名または店舗名」は以下の通り(順不同):
アバハウスインターナショナル「カリテ」、アーバンリサーチ「KBF」、ビームス「ビームスハウス丸の内」「ビームス ウィメン 渋谷」、ナノユニバース「東京店(渋谷神南)」、ヰノセント「ニーム」「ラ・マリンフランセーズ」、パルグループ「ガリャルダガランテ」、ウィーブ・トシ「カシラ代官山店」、サザビーリーグ「エストネーション六本木ヒルズ店」、サザビーリーグ「ロンハーマン」、ル・ドーム「イエナ」、ノーリーズ、サンエービーディー「フリーズマート」、トゥモローランド「丸の内店」「エディション表参道店」、シップス「メンズ・レディス複合店」「カージュ」

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 まず基本の音楽ジャンルを縦軸「トレンド⇔ルーツ」、横軸「カジュアル⇔エレガント」のマトリックスに落とし込んだ。縦軸は時間軸の色合いが強く、横軸は所謂ファッションテイストではなく、「カジュアル=大衆的・土着性が強い」、「エレガンス=大人っぽい・高貴な」といった意味合いが強い。したがって右下は「クラシック」、左下は「ワールドミュージック」、右上は「エレクトロニカ」、左上には「最新ヒット」を配置した。

ルーツ系のディープさを求めないレディス系


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図2

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図3

 レディス業態の強い店舗やブランドの傾向を見ると2、3図のように大きくはルーツ系から離れたところに存在していた。

 中庸ながらもトレンド性が強かったのがベイクルーズグループ・ル ドームの「イエナ」。「スロー」「エッジ」「ミディアム」の3パターンに分けて選曲されており、DUNE × CRAYONカルテル(KARTELL)などのアーティストをピックアップし、最先端のメロディックなエレクトロ、ハウス、ソウル、ファンク、インディー系のディスコなど現代の欧州エレクトロ・フレンチのセンスが感じられる。

同じくトレンド性の強さを兼ね備えていたのがシップスのナチュラル系レディス業態「カージュ」で、メロウでエレクトロなサウンドが特徴的だった。IO ECHO × TOKiMONSTADAHLIA SLEEPSなどハイセンスなインディーポップやエレクトロポップ、メロディックラウンジなど今の世界各都市のシーンを反映するようなCD未リリースの新しい作品も選曲されていた。

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ガリャルダガランテ

 この中庸部分で徐々にトレンド性を薄めて行くとアバハウスインターナショナルの「カリテ」、アーバンリサーチの「KBF」「ノーリーズ」、パルグループの「ガリャルダガランテ」と少しだけ時間軸が過去に戻って行くようだ。

カリテ」では「ホテル・コスト」シリーズを手がけた人気フレンチDJ(ラウンジミュージック)、ステファン・ポンポニャック(STÉPHANE POMPOUGNAC)がフィーチャーされていた。

KBF」はケッテル(KETTEL)「WINGTIP」ビビオ(BIBIO)「A MINERAL LOVE」など聴き慣れたクラブミュージックでありつつ、アーティスティックなエレクトロニカやエレクトロの要素が特徴的だ。ファッションともリンクするような今話題の作品をセレクトしている。

ノーリーズ」は、音楽ジャンルはクラブミュージックを主に採用し、ディープハウスのTHE AVENER「FADE OUT LINES」やアシッドジャズのインコグニート(INCOGNITO)「LISTEN TO THE MUSIC」などハウスビート、ラウンジビートが特徴的で統一感のあるハウス、クラブジャズ、ジャズボッサ、エレクトロなどを選曲。

ガリャルダガランテ」は、シーズン毎にテイストが異なるが、今回はQUANTIC & ALICE RUSSELL「LOOK AROUND THE CORNER」などソウルフルで少しだけラテンファンクなビートが印象的なラテンジャズ、ソウル、ラウンジの楽曲をフィーチャーしていた。

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ビームス ウィメン 渋谷

 これに対してトレンド性とエレガンス性を兼ね備えた選曲だったのが、「ビームス ウィメン 渋谷」。エレクトロニカをメインにアンビエントやSSW(シンガーソングライター)を融合させたアーティスティックな世界観と少しノスタルジックなサウンドが特徴で、話題のモッキー(MOCKY)「THE TOUCH」のようなエレクトロニカのサウンドをベースにスフィアン・スティーヴンス(SUFJAN STEVENS)のようなインディフォークやスパイスとしてRAYONのトラウトロックも融合させるなど選曲の妙が垣間見える。

 同じ社内で分かりやすい違いが見えたのが「ヰノセント」。時代感は少し懐かしさの残る線を押さえつつエレガンスに振れていた「ニーム」は、「アメリ」や「シェルブールの雨傘」などフランス映画のサントラやヴァネッサ・パラディ(VANESSA PARADIS)などのフレンチポップスをセレクトしつつ、SSWやポップジャズも採用し、レトロで可愛いサウンドだ。

 一方「ラ・マリンフランセーズ」は、時間軸は同じでも思い切り横幅を広く取っている。ウディ・アレン(WOODY ALLEN)の映画音楽コンピ「MUSIC FROM THE FILMS OF WOODY ALLEN」チェット・ベイカー(CHET BAKER)の名作「SINGS AND PLAYS」セロニアス・モンク(THELONIOUS MONK)、人気のフレンチ系ジャズSSWのザーズ(ZAZ)がセレクトされ、ジャズ、SSW、ポップス、映画音楽など幅広く、オランダのポップアーティスト、ベニー・シングス(BENNY SINGS)もフィーチャーするなどニームよりもほんの少しだけマニッシュな傾向だった。

次回【短期連載】BGMから読み解く「ショップと音楽」の関係性、第2回はメンズ・複合ショップ編に続く

(アナログフィルター『Journal Cubocci』編集長・久保雅裕)

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