【短期連載】BGMから読み解く「ショップと音楽」の関係性 <2>メンズ・複合ショップ編

 店に入るとさり気なく聞こえてくる音楽。そんな店舗BGMについてブランドはどのような位置付けをし、またその選曲に腐心しているのか。4~6月にかけて、セレクトショップを中心に一部ブランドショップのBGMについてUSENコンテンツ・プロデュース統括部の協力を得て調査。ジャンルの傾向と選曲方法、ショップと音楽との関わり方についてまとめてみた。第2回目はメンズ・複合ショップ編。(アナログフィルター『Journal Cubocci』編集長・久保雅裕)

 

【連載】<1>「ビームス ウィメン 渋谷」や「KBF」などウィメンズショップ編

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図4

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図5

 複合店やユニセックスの場合、左上に向かうサーフボード型、即ち聴き覚えのある最新ヒットに近い楽曲も織り交ぜる傾向が多く見られた。

 「カシラ代官山店」はビッグネームアーティストの最新ヒッツからエレクトロニカ、ジャジーヒップホップ、ロック、ソウルなど多彩で、ジャパニーズロックのテ(te')、デヴィッド・ボウイ(DAVID BOWIE)の遺作や話題のシーア(SIA)も起用するなど独特なセレクトだ。

 続いて左上に伸びていたのが「エストネーション」。ロックリミックスとジャズリミックスの2つのテイストを曜日や雰囲気で使い分けており、ロックはレッド・ホット・チリ・ペッパーズ(RED HOT CHILI PEPPERS)「DARK NECESSITIES」など最新ヒットやポップス、ロックの90年代以降の人気曲も取り入れた元気で明るい音と夏らしいアーティストも積極的に起用していた。一方のジャズは知的、クール、メロディックな色気のある雰囲気で、ボビー・ハッチャーソン(BOBBY HUTCHERSON)「MONTARA(THE ROOTS REMIX)」はクラブジャズのキラーチューンだ。



 もう少しメジャーっぽさを避けたのが「ナノユニバース」。SSW(シンガーソングライター)、エレクトロ、新世代ソウル、ジャズなどの音楽ジャンルを越えて新世代のミュージシャンの作品が選ばれている。スペインのカタロニア語で歌うクララ・ペーヤ(CLARA PEYA)やイスラエル出身フランス在住のヤエル・ナイム(YAEL NAIM)などワールド色のある質の良いSSWや今の先端のシーンを象徴するブレイクボット(BREAKBOT)のエレクトロサウンド、テラス・マーティン(TERRACE MARTIN)に代表される新世代ブラックミュージックもフィーチャーされていた。

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ナノユニバース東京店

 本当の意味で中庸に位置したのが「トゥモローランド丸の内店」だが、そのセレクションは先端的だ。テイラー・マクファーリン(TAYLOR MCFERRIN)スナーキー・パピー(SNARKY PUPPY)などソウルやファンクと融合した先端系のジャズやアーランド・オイエ(ERLEND OYE)メイヤー・ホウソーン(MAYER HAWTHORNE)ザ・ジャック・ムーヴス(THE JACK MOVES)といった新世代のソウルミュージックのセレクトが印象的だった。

 そしてその下に位置するのが「フリーズマート」。70年代のファンクからソウルクラシックスをベースに80年代以降のポップスやブラックコンテンポラリーもセレクトされているという元気な内容。ワイルド・チェリー(WILD CHERRY)クール・アンド・ザ・ギャング(KOOL & THE GANG)グロリア・ゲイナー(GLORIA GAYNOR)といった70年代のディスコチューンをベースに80年代のシンディ・ローパー(CYNDI LAUPER)マイケル・ジャクソン(MICHAEL JACKSON)スタイル・カウンシル(THE STYLE COUNCIL)、更にはブラックコンテンポラリーも選曲されたタイムマシーンのようなラインナップだった。

 もう少しルーツ寄りから左上のトレンドまで幅を取った選曲だったのが「ロンハーマン」で、絶妙な緩急がついており、ソウルでもポップスでも、どこか海の香りがする選曲だ。チャートに上るようなアーティストもラインナップされているが、あえて大ヒットソングは外されている。マーヴィン・ゲイ(MARVIN GAYE)「GOT TO GIVE IT UP」のようにルーツ系のソウルミュージックやチャーリー・プース(CHARLIE PUTH)「LEFT RIGHT LEFT」リアーナ(RIHANNA)「WORK」のように人気のポップスを起用しつつも、アンダーソン・パック(ANDERSON .PAAK)ブレイクボット(BREAKBOT)など今のサウンドもセレクトされている。

 これに対して右寄りの「ビームスハウス丸の内」と「シップス複合店」、左下寄りの「エディション表参道店」が異彩を放っていた。

 大人の雰囲気を醸し出す「ビームスハウス丸の内」は、地中海やブエノスアイレスなどのフォルクローレからジャズ、クラシックなど良質なインディレーベルの作品が起用されている。ピアノ、ギター、チェロ、バンドネオンなどの柔らかな室内楽器のサウンドで時々歌も入り、外国の風や海や緑が見えてくるようなリラックスできる音楽が特徴だ。またAINE MINOGUE「DAY OF EMERALD」ダニエル・ディ・ボナベンチュラ(DANIELE DI BONAVENTURA)「MARIA E IL MARE」などアンビエントの要素も取り入れられている。左のワールドミュージックへの飛び地も作りたくなるほどの選曲幅でもある。

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ビームス丸の内

 「シップス複合店」は、プログレ系ジャズバンドのスナーキー・パピー(SNARKY PUPPY)「I REMEMBER」エレクトロのモッキー(MOCKY)「ART BRAKEY」LAPSLEY(ラプスリー)「CLIFF」などジャズ、ファンク、ネオソウル、エレクトロ、ポップ、SSW、ハウスなどを上手にカスタマイズしている。

 


 よりカジュアル性が強く、時間軸としてはそれほどトレンド性の強くないゾーンとなった「エディション表参道店」は、ウィルコ(WILCO)ピクシーズ(PIXIES)ニルヴァーナ(NIRVANA)ザ・ブラック・ホリーズ(THE BLACK HOLLIES)など、オルタナティブロックのインパクトがあり、その他にヒップホップのJ・コール(J.COLE)やSSWのレジーナ・スペクター(REGINA SPEKTOR)のように、また違う音が入ってくる面白さがあった。

次回BGMから読み解く「ショップと音楽」の関係性、第3回は選曲の裏側編

(アナログフィルター『Journal Cubocci』編集長・久保雅裕)

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