【短期連載】BGMから読み解く「ショップと音楽」の関係性 <3>選曲の裏側編

 店に入るとさり気なく聞こえてくる音楽。そんな店舗BGMについてブランドはどのような位置付けをし、またその選曲に腐心しているのか。4~6月にかけて、セレクトショップを中心に一部ブランドショップのBGMについてUSENコンテンツ・プロデュース統括部の協力を得て調査。ジャンルの傾向と選曲方法、ショップと音楽との関わり方についてまとめてみた。最終回となる第3回はBGM選曲の裏側を探る。(アナログフィルター『Journal Cubocci』編集長・久保雅裕)

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【連載】BGMから読み解く「ショップと音楽」の関係性
<1>「ビームス ウィメン 渋谷」や「KBF」などウィメンズショップ編
<2>「エストネーション」や「ロンハーマン」などメンズ・複合ショップ編

たかが音楽、されど音楽

 店舗の雰囲気を構成する要素としての音楽について、大前提としては、まずは商品と接客ありきで、音楽はあくまで副次的というのが大方の意見だ。「音楽はすごく大切にしているが、あくまで洋服、スタッフ、内装、香り、ディスプレイなど全体の要素の一つなので、主張し過ぎないようにしている」(ロンハーマン)や「タレントなどを使用したブランドイメージ戦略は行わないのと同様、人や香り、音での印象をつけたくない。あくまでもブランドが主役と考えている」(アバハウスインターナショナル)といったように。だからと言って各社とも手を抜いている訳ではない。

 選曲はプロに外部委託したり、内製化するにしても、音楽に詳しいスタッフが担当している場合が多かった

 外注している企業は、シップスが「UNITED FUTURE ORGANIZATION(U.F.O.)」の松浦俊夫氏、イエナはコレットの音楽担当兼タレントスカウトとして知られるCLEMENT VACHE、ガリャルダガランテはイタリアのダンス系に強いレーベル「イルマレコード」、エストネーションやフリーズマート、KBFも音楽関係者にそれぞれシーズンテーマなどを刷り合わせ、細かい場合は月単位で、また長いスパンでも春夏、秋冬のシーズン立ち上がりとセール期、クリスマスの年5回程度のサイクルで更新していた。

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ナノユニバース 加藤将氏のブログより

 内製化している企業ではVMD担当者か、ブランドディレクターとPRが行っているケースが目立った。ナノユニバースは「ほぼ音楽業界人」と言われるVMDとウェブの音楽・映画担当者の加藤将氏が毎月10~12時間分のプレイリストを作成している。ビームスは、「ビームスレコーズ」を立ち上げたビームス創造研究所の青野賢一氏が「空間の一部なので接客の邪魔をしない程度に、商品、お店、お客様の間をつなぐような自然感のある」環境作りと位置付けて選曲している。ロンハーマンのVMD担当、阿部隼也氏は「心地良いだけの曲がずっと続いても面白くないので、時には刺激的な曲、緊張を緩ませてくれる曲、聴いたことのある曲、旬な曲なども意識して入れている」という。カシラのクリエイティブディレクター、秋元信宏氏は「代官山店は主にゆったりしたジャンルで音は少し低め、表参道店はクラブミュージック系で大き目、渋谷店はロック系で」と顧客層に合わせて選曲

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ビームス創造研究所の青野賢一

 また「各店舗にある程度任せている」というのは、ヰノセント、トゥモローランドなどで、日本語の歌詞はNGだったり、USENのチャンネルをいくつか指定したりとある程度の縛りをかけて任せているケースが殆どだった。

 フリーズマートは、店舗設計のさいに音響設計会社を入れ、スピーカー配置などもこだわって設置している。 

音楽業界との関わり方でこだわりを打ち出すブランドも多い

アーバンリサーチ主催の「アーバンリサーチ・ドアーズ タイニーガーデンフェスティバル」

 音楽業界との関わり方では、カルチャーとしての位置付けから積極的な店舗が多い。カシラはセカオワ、高橋幸宏ほか多数のアーティストへの衣装提供や「サマーソニック」とのコラボブース出展、「カシラロックフェス」なども開催している。アーバンリサーチは「アーバンリサーチ・ドアーズ」ブランドで、今年5回目を迎える音楽フェス「タイニーガーデンフェスティバル」を1500人規模で開催しており、子供たちも一緒にテントで泊まり、アットホームな雰囲気でファミリー層を呼び込んでいる。イエナは今春夏の立ち上がりに、ジェーン・バーキンの娘でミュージシャンのルー・ドワイヨンを「メゾン イエナ 自由が丘店」に呼んでインストアライブを行った。ガリャルダガランテは、ライブハウスの「ブルーノート」でイルマレコードとコラボし、ライブも開催。ナノユニバースは多くのミュージシャンとのコラボ企画を行なってきたが、今年は、アミューズ所属のアーティストへの衣装提供やPR展開などのコラボを予定している。フリーズマートは音楽フェスの「グリーンルーム」にブース出展したり、LDHから4月にデビューしたLeolaのプロモーションDVDを店舗プロジェクターで映写するとともに衣装提供、SNSでの展開など彼女のファンへのブランドPRを展開している。ノーリーズは、FM放送局「J-WAVE」との連携を10年以上続けており、交流も深めているそうだ。ヰノセントは、ユニバーサルミュージックとコラボし「ボンジュール・ニーム」「フェット・ブルー」の2枚のアルバムを発売している。またビームスと「フジ・ロック・フェスティバル」とのコラボは有名だ

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 各社とも、店舗BGMの重要性を欠かせないVMDの一要素として捉え、そこでもどのような差別化ができるかを探り続けているように見えた。消費者一人一人の持つライフスタイルに寄り添おうと試みる限り、音や香り、灯りや内装など五感に訴える要素に手抜きがあっては伝わるものも伝わらなくなる。レベルアップする接客シーンに一役買う音の役割がますます重要になってくる。

(アナログフィルター『Journal Cubocci』編集長・久保雅裕)

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