
女優・タレントがブランドと組んで、新たなおしゃれを提案する動きがこのところ一段と目立つようになってきた。これまでの「名前貸し」的な薄いコラボレートではなく、「プロデュース」という形で、商品コンセプトやテイストに本人のアイデア、ポリシーをしっかり反映しようとしているのが、最近の傾向だ。
ワコールは9月4日、女性お笑いコンビ「オセロ」の松嶋尚美さんがプロデュースしたインナーウェア「Split Cherry~女の子には、ふたつの顔がある。」を発売した。「大きいムネのコ向けのかわいいブラジャーがないやん!!」という松嶋さんの声を受けて企画されたブラジャーとショーツだ。女性がルームウェアとして着られるメンズショーツも用意されている。ファッションリーダーとして人気の高い松嶋さんの発想を生かした格好だ。
プライベートでの実体験を生かして、女優の江角マキコさんは子供服のプロデュースを始めた。コラボ相手は日本のSPAブランド「I.T'.S. international(イッツ インターナショナル)」だ。出産後に子供服をプロデュースした芸能人にはタレントの千秋さんや辻希美さんの例がある。
タレントのスザンヌさんはファッション通販ブランド「image(イマージュ)」の秋冬服をプロデュースした。創刊25周年を迎え、イマージュはスザンヌさんをCMキャラクターにも起用している。彼女の人なつこい印象は服にも好感を寄り添わせる。
もっと主体的に取り組む芸能人も現れた。タレントの若槻千夏さんは自らが率いる新ブランド「Faiyancil(ファジャンシル)」をスタートさせた。このところ勢いづく古着リメイクのブランドだ。「自分だけの服。他の人とはかぶらない。そんな服作りを大好きな古着でしたいと思ってました」と、コンセプトを語る。先行するブランド「WC(ダブル シー)をビジネス面でも成功させ、9月の第11回「TOKYO GIRLS COLLECTION(TGC)」にも参加した。
女優やタレントが企画に参加して成功した例としては、タレントの神田うのさんがプロデュースしたグンゼのストッキング「Tuche(トゥシェ)」のケースが有名だ。ファッションモデルや読モ、ファッション関係者などが、これまでもファッションブランドをプロデュースしてきてヒットした。「デザイン」というよりも、「プロデュース」するという傾向が広がれば、有名人がファッション界に参入する試みは今後ますます増えてきそうだ。
(文:ファッションジャーナリスト 宮田理江)