震災に直面したファッション業界と立ち上がるデザイナー

 3月11日に発生した東北巨大地震が、ファッション業界に影を落としている。ショー中止、発表形式の変更など、コレクション発表直前だったブランドの動きは様々だ。被害が日ごとに深刻化し、街が閑散としている今、ファッションに出来る事とは何か。混乱した状況の中で決断し、立ち上がろうとするデザイナー達に聞いた。
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G.V.G.V. 2011年春夏コレクションより


 東北を震源に日本全体を襲った巨大地震は、まさに東京でファッションウィークが始まろうとする直前に起こった。都心でも震度5強という強い揺れを観測。帰宅難民が街に溢れ帰った11日夜には都内で「sunao kuwahara(スナオクワハラ)」のプレゼンテーションが予定されていたが、急遽中止となった。百貨店や商業施設、ブランドショップは店を閉め、その後も節電や安全確保のために休業もしくは営業時間の短縮を余儀なくされている。


 津波による壊滅的な被害の広がりとともに被災者が増え続ける今、「ファッションショー」を開催するか否か。デザイナーや関係者らは苦渋の決断を迫られた。しかし、15日に日本ファッションウィーク推進機構が「第12回東京発日本ファッション・ウィーク(JFW in Tokyo)」の中止を正式発表したことを機に、次々と3月中に予定されていたコレクション発表の中止や延期が決まっていった。Etw-Vonneguet-2011SS0.jpg
東北地方の一部の縫製工場は大きなダメージを受けており、また断続的に続く余震や交通機関の混乱を危惧した安全面、節電対応、外国人モデルの帰国といった重層的理由が挙がっている。華やかなイベントに対する自粛意識があるのも事実だ。ブランドの対応は様々だが、JFW参加ブランドでは唯一、「Etw.Vonneguet(エトヴァス・ボネゲ)」のみ期間中にショーを開催する姿勢を見せている。「今もずっと何かに立ち向かっている人たちと同じように、強く生きようと伝えたい」と、デザイナーのOlga(オルガ)氏。22日に行われるショーを、USTREAMを通じて世界に発信しようと試みている。


Etw.Vonneguet 2011年春夏コレクションより


 ショーではなく別の発表形式へシフトするなど、新たな動きも出始めた。18日に開催するはずだったランウェイショーを急遽取りやめた「White Mountaineering(ホワイトマウンテニアリング)」デザイナーの相澤陽介氏は「本当に残念」と肩を落としたが、「出来ることは必ずある。ファッションの力を信じたい」と願い、新たにWEBを通じて発信することを検討中だ。

whiteny11aw0.jpg震災直後はショックを隠せず「ファッションが何の役にたつのか・・・」と苦悩したという「G.V.G.V.(ジーヴィジーヴィ)」デザイナーMUG氏もショーを中止する決断を下したが、「出来る限り早くFASHIONが笑顔で楽しめる様に、必ずその日が来ると信じて今出来る事をやっていきたい」と、前向きに行動を起こそうとしている。また、JFWに先立って延期を決めたファッションイベント「roomsLINK(ルームスリンク)」は、開催スケジュールを4月19日〜21日(予定)に再設定。多くのデザイナーや来場バイヤー、プレス関係者らに声を掛け、東京コレクションの復活に奮闘している。



White MountaineeringがNYで発表した2011年秋冬コレクションより


 また、「自粛などと言っていられない」といった声もある。「VANQUISH(ヴァンキッシュ)」を展開するせーの代表の石川涼氏は、日本全体で自粛ムードが広がっていることを受け「このままではだめだ。もっと楽しい事を発信していかないと」と啖呵を切った。いち早くチャリティ企画に取り組みつつ、18日には予定通り「渋谷109MEN'S」に新ブランド「LEGENDA(レジェンダ)」1号店を開いた。「今は災害も怖いけれど、人々の気持ちやモチベーションが下がって街や経済が意味なく崩壊していくことが恐ろしい」と話す「THE CONTEMPORARY FIX(ザ・コンテンポラリー・フィックス)」オーナー吉井雄一氏の判断も早かった。震災直後に店舗の売上の一部を寄付することを決め、次週から予定していたショップイベントを、急遽チャリティイベントに変更。「僕らが元気にイベントを楽しむことでアクションに変えて行きたい。"こんな時だからこそ"イベントを実行するんだよ! 」とブログに綴っている。


 震災から1週間。あまりにも深い津波の爪痕や、被災者の心の傷が癒えるのは何年かかるのかわからない。危機的状況が続き、売上げが激減するブランドやショップも多い。しかし、ファッションを通じて喜びや楽しさを伝えようとするデザイナーや、少しでも早い復興を願って立ち上がろうとしている人々が多いのは事実だ。ファッションが嗜好品ではなく必需品となるか、今日本のファッション業界は試されている時なのかもしれない。

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