「プラダ(PRADA)」が、2024-25年秋冬コレクションを発表した。テーマは「INSTINCTIVE ROMANCE(本能的なロマンス)」。
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毎シーズン同じ会場であっても、天井が昇降したり、スライムが流れてきたりドラマチックな演出を仕掛けることでも知られるプラダのショースペース。今シーズンはメンズ同様、ガラス張りのフロアを金属フレームで取り付け、テラリウムのような空間が観客の足元に出現した。人工的に作られた"庭"ながら、シダや落ち葉、小石などが敷かれ、あたかもずっとそこにあったかのような地面がガラスの床越しに見える。単に1月に行われたメンズショーのリピートというだけでなく、それは今回のテーマである「ロマンス」を語る上での物語的な没入演出かもしれないし、今シーズン、ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)とラフ・シモンズ(Raf Simons)が探求した「今日のファッションを形作った過去を遡る」という行為の時間経過を表現したものなのかもしれない。
コレクションでは「過去を理性的に考察するのではなく、現代にも通じる美の理想に対して心がどう揺れ動くのかを探求する」という観点のもと、ヴィクトリア朝、1920年代、1950年代と時空を超えた様々な年代の要素をレファレンスしつつ、 これまでとは異なる新しい視点を提案。男性的なタフな素材を繊細で女性的なシルエットに変容させたり、メンズウェアの象徴的なバイカージャケットは胸の膨らみがわかるほど体に沿って作られていたり、逆にリボンやラッフルといった女性らしさを表現するディテールは、"可憐さ"という概念を排除した装飾として存在しているかのよう。
Image by Hiroyuki Ozawa
ミウッチャを象徴するような丈感のスカートのスーツスタイルは一見正面からだと、細身で厳格な仕立てに見えるが、横から見るとボリュームが増し、スカートはエプロンのように前だけで後ろはシルクスリップが露わになっている。フォトブースが正面だけでなく背面にも設置されるべき、と思わせるほど一方からは隠された二面性を持つ再構築的なアイテムが多く登場し、素材や色でコントラストを効かせた意外性のあるルックでオーディエンスの興味を引いた。
Image by PRADA
Image by Hiroyuki Ozawa
ベルトに取り付けられたハンドバッグは形や大きさも様々。ベルトを腕に通す持ち方は新しい提案というより、手を胸当てるようなポージングを生み出すための役割を担っていたように見える。上部のフレームがアイブロウのように見えるアイウェアは顔の印象をシャープに変えるユニークなアイテム。
Image by Hiroyuki Ozawa
終盤に登場したのは1950年代ファッションを彷彿とさせるオペラコートやオフショルダーのドレス。これらはリナイロン素材で仕立てられ、エレガントなシルエットをタフなファブリックと無骨なグローブやファスナーのアクセサリーやディテールなどによって現代的な解釈でアップデートされている。
Image by Hiroyuki Ozawa
理想の美への憧れや、ファッションに対する愛といったロマンチックな思考。「ファッション界において、その言葉はある意味タブーなのかもしれません」 と語るミウッチャだが、それこそが「美しいものを作る」というミウッチャとラフの絶対的な共通認識であり、クリエイションの原動力であり、そして我々見るものの心を毎シーズン惹きつけて離さない理由でもある。歴史を振り返ること=ノスタルジーに浸るだけの懐古主義ではなく、「私たちが何者なのか、どうしてそのような服を身につけるのか」といった問いへの自己探究であり、さらには未来へ前進しようとする2人のデザイナーにとって不可欠な日常的な行為なのだろう。
Guest Snap for PRADA 24-25AW
永野芽郁
Image by Hiroyuki Ozawa
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