Mitsuhiro Minami

「雑貨の取り扱い=ライフスタイル提案型」ではない

南 充浩

繊維業界記者・ライター兼広報アドバイザー

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(センスオブプレイスの生花コーナー)


 最近、ブランド店の内覧会や展示会、記者会見に出席してひどく脱力することがある。
それは席上で「ライフスタイル提案型を目指して雑貨の取り扱い量を増やしました」という類の説明を聞く時である。
たしかにライフスタイルの中に雑貨は含まれているが、それを安易に解釈して、まるで「雑貨=ライフスタイル」と考えているブランドや企業も少なくないように感じる。

その公式が正しいとするなら雑貨屋すべてライフスタイル提案型ということになる。
果たしてそうだろうか?筆者にはそうとは感じられない。
リニューアルを果たす前のダイソーがライフスタイル提案型だったとはとても思えない。


先日、アーバンリサーチの新業態「センスオブプレイス」が席上、話題に上ったことがある。
同社が仕掛けるトレンドカジュアルの低価格SPAブランドである。
しかし、これだけなら単なる低価格SPAブランドということになり、テイストはやや異なるがH&Mでもジーユーでもしまむらでも置き換えは可能である。

関西圏での旗艦店であるグランフロント大阪店を見ると、入口横に生花コーナーがある。
街の花屋に備え付けられているのと同じ冷蔵庫まで完備している。
近年増えた「それほど世話の必要がない観賞植物を売り場にちょちょっとそろえてみました」という程度ではない。かなり本格的な設備である。
オープン時に取材した際には、実際に花屋経験者をスタッフとして雇用したそうである。


取材した際にはこの花屋の存在意義にいまひとつピンと来なかったのだが、これがあることで、単なる低価格SPAブランドとは一線を画した存在になっているとようやく最近気が付いた。
アーバンリサーチという企業はこういう付加価値作りというかブランド作りがお得意である。

同社の「フリーマンズ スポーティング クラブ」というメンズショップには何故か散髪屋が併設されている。

こういうのは一見無駄に見えるが、実はライフスタイルを提案しているといえる。
こういう部分がないと、それは単に洋服を販売する店ということになり、それは「物」の競争であり、下手をすると低価格競争に巻き込まれる。
「物」のみを販売するなら、似たような感じでさらに安い物を多くの消費者は選択する。
極端に言えば、品質もそこそこなので、似たようなデザインのユニクロ商品で十分ということにもなる。

現在は「物」自体をアピールするよりもブランドやショップに対する共感や賛同者を多く集めることが重要である。

そのためには別に花屋や散髪屋じゃなくても、店に足を運ばせる何かがあれば良い。
ボーンフリーのように店内で歌手のライブを開いてもよい。
ワークショップを開催してもよいし、新商品の試着撮影会を開いてもよい。

別にニットメーカーでもニット専門店でもないユナイテッドアローズがなぜか、「ニットが出来るまで」という生産工程をまとめた動画を作っている。
これなんかもそういう取り組みの一種ではないかと思える。

服を買うこと以外に、店に足を運んでもらう取り組みが必要であり、そういう共感を得る取り組みがライフスタイル提案型というのではないか。

「物」のみを重視しすぎると、スペック競争や低価格競争が引き起こされる。
一時期、14オンス以上のヘビーオンスデニムブームというのが局地的に存在したが、あれなんてまさにスペック競争で「重ければ重いほど良い」なんていうわけのわからない重さ競争の風潮があった。
最初は18オンスくらいだったのが、21オンスになり、23オンスになり、28オンスにまでなった。

けれど本来はデニム生地の重さを競うのが目的ではなかったはずだ。
昨今、デニムといえども軽量化が求められる風潮に対するアンチテーゼ的な意味合いがあり、ヘビーオンスデニムで作ったジーンズはこれほどカッコイイんだぜ、ということを見せたかったのではないか。

A社が21オンスを作ったからうちは23オンスを作る。
そんな競争がしたかったのだろうか?

まあ、少し脱線したが、一見非効率な花屋を併設することで「センスオブプレイス」は単なる低価格SPAブランドとは一線を画している。散髪屋併設もしかりだ。アーバンリサーチのこういうところにいつもセンスを感じる。

南 充浩

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