Mitsuhiro Minami

米国ジョガーパンツの流行は「従来型ジーンズの終わりの始まり」?

南 充浩

繊維業界記者・ライター兼広報アドバイザー

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欧米に全く縁のない生活をしているからマックスリーさんのニューヨークブログを毎回興味深く拝読している。
今回のジョガーパンツに関するエントリーも好調のようだが、筆者が注目したのは冒頭の一文である。

http://www.apalog.com/maxre/archive/167

ヤング層のジーンズ離れが深刻化している中、唯一、スキニージーンズは引き続き売れているが、かなり雲行きが怪しくなってきた。

とある。

どこの市場と明言されていないので、ニューヨーク市場もしくはアメリカ市場だと推測するのだが、もし仮にそうだとすると、この状況は我が国の市場とほぼ同じである。

ヤング層はジーンズに対して特別感を抱いていないし、それでもスキニージーンズはこの数年間売れ続けてきた。それにもちょっと飽きが来ているようだが、次のトレンドは見つけられていない。
ひどく大雑把にまとめると、我が国のジーンズ市場はこういう状況にある。
ジーンズ市場を支えているのは間違いなく中高年男女である。
そして中高年が支持をするから余計に若者は敬遠するのではないかとも思える。

日米で示し合わせたように同じ動きになっているというのも興味深い事例である。

そこで注目されているのがジョガーパンツだという。
日本でもジョガーパンツは何年か前から注目されており、ジーンズブランドも取り入れてきた。
エドウインはすでに「ジャージーズ」という商品を出しており、好調に動いているという。

ジョガーとかジャージーズとか呼ばれている商品には二通りある。

1つは、裏毛などのニット素材の商品
もう1つは、超強力ストレッチの薄手布帛素材商品

である。

どちらも売りは「柔らかくキックバック性があり、動きやすいこと」である。

筆者は裏毛などを使ったデニム風ニットが面白いと感じていた。
編み物なのに、デニムっぽい見え方だからである。
けれども、その後、薄手布帛素材の方が市場に受け入れられているように感じる。

ブランドによってばらつきがあるとはいえ、ニットデニムが期待されたほど需要が伸びなかった理由はなんだろうか。

1つは、洗い加工が施しにくい
もう1つは、目付が軽いとすぐに膝が出てしまってシルエットが崩れてしまう

ことにあるのではないかと考えている。

多くのデニム風のニットはヒゲなどの加工が施しにくい。
ヒゲが明確に出にくいだけでなく、擦っている最中に糸が切れたら、そこから穴が開いてしまう。
布帛では糸が何本か切れてもすぐには大穴は開かない。
また摩擦にも強いのでヒゲ加工が施しやすい。

世間ではスエットパンツが流行しているので、筆者もユニクロで7分丈のスエットパンツを購入してみた。
試着してみるとどう見ても寝間着を穿いたオッサンにしか見えなかったので、そのまま寝間着にした。
ちなみに筆者が定価で買うはずもなく、990円に値下がりしたときに購入した。


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(990円に値下がりしてから購入したユニクロの7分丈スエットパンツ)

予想したよりも生地が薄い。正確にいうなら目付が軽い。

寝間着としてしばらく着用してみて「寝間着にして正解だった」と感じた。
というのは、すぐに膝が出てしまったからである。
おそらく洗濯すればある程度は元のシルエットに戻ると思うが、本来、そこそこタイトなシルエットのはずが、膝が出たためにダボっとしたシルエットになり、変型版のサルエルパンツにも見える。

ニット素材のパンツは興味深いが、膝が出る危険性が高いことを改めて痛感した。

このような素材特性を考慮すると、布帛製のジョガーパンツへの支持が増えることは何の不思議もない。

さてさて、ニット製であろうが布帛製であろうが、注目商品が現れるというのは市場の活性化につながるので喜ばしいことである。

しかし、ジョガーパンツやジャージーパンツの「楽さ」はジーンズとはくらべものにならない。
今春から何本かストレッチ混の細身パンツを購入したが、よほどの太目シルエットでない限り、筆者はノンストレッチのパンツは穿きたくなくなった。
それほどに快適であり、細身のノンストレッチパンツは不快である。

話は横道にそれるが、長らく店頭でGAPの商品を見ているが、GAPはなぜか頑なにストレッチ素材を使わない。これは謎である。
ナチュラル感が売りの無印良品でさえ、タイトシルエットパンツにはストレッチが採用されている。

それはさておき。

シルエットに少しゆとりがあり、それでいて(ニット、布帛ともに)ストレッチ性のあるジョガーパンツが本格的に流行したならば、ジーンズというアイテムはさらに復活の芽がなくなるのではないかと感じられる。
ジョガーパンツに比べると圧倒的にジーンズは快適ではないからである。

一度快適さに慣れてしまった消費者が再び不便な商品を志向するようになるまでには相当の年月が必要なのではないかと思う。

もしかしたらジーンズの素材開発の根本から考え直さなくてはならなくなるのではないだろうか。
ジョガーパンツの流行が「従来型ジーンズの終わりの始まり」にならなければ良いのだが。

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