Mitsuhiro Minami

「洋服好き」や「セール好き」、ブランドは顧客を再度整理すべき

南 充浩

繊維業界記者・ライター兼広報アドバイザー

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先日、業界の先輩お二人からいろいろと噂話をお聞きしたのだが、その中で、消費者のこんな分類が出た。

1、洋服の好きな人
2、実需で買う人
3、セールで買う人

である。

季節の立ち上がりでプロパー(定価)で買う人は1の「洋服の好きな人」である。

体感気温に合わせて洋服を買う人は2の「実需で買う人」である。
3は言わずもがなである。

さて、洋服は春夏よりも秋冬の方が見ごたえがあるし、盛り上がる。
とくにメンズだとTシャツとかポロシャツ単品の着こなしになるからなんだか物足りない。
レディースでも同じような感じだが、メンズよりアイテムの種類も豊富だからもう少しファッションを楽しめる要素は大きい。

秋冬は重ね着ができる。
いくら暖冬でもセーター+ジャケット+コートくらいには重ね着が可能だ。

秋冬商品の立ち上がりはなぜか防寒物がプロパーで売れる。
防寒物というとコートとかブルゾンである。
これらのアイテムは他のシャツ、Tシャツ類に比べると値段が高い。
低価格店で買ってもそこそこの値段になる。まさか990円とか590円では売っていない。
1月のセールまで待てば、確実に3割引きにはなる。
1月まで待たなくても昨今なら12月上旬から始まるプレセールで3割引き内外には安くなる。

実需品をさらにセールで買う筆者は、「そこまで待てば良いのに」と思うのだが、1の洋服の好きな人はそうではない。

1のようなお客を顧客化するとブランドの利益率は高くなる。
ただし、1のお客の絶対数は確実に少ない。
言葉は悪いが、ブランド間で争奪戦になる。
どれだけそういう顧客を取り込めるかがブランドビジネスのカギになる。
ただし、絶対数が少ないからいくら高額で購入してくれるといっても限度がある。
この層の顧客だけで何百億円もの売上高を稼ぐことはよほどのブランド力がない限りは不可能だ。

1よりも絶対数が多いのが2の「実需で買う人」といえる。
暑くなったから半袖Tシャツを買い、寒くなったから防寒物を買うという人だ。
とくにバブル崩壊以降はこの「実需で買う人」が増えた。
実需で買う際に価格が安くなっていればさらに購買数が増える。
100億円単位のビジネスを狙うなら2の層をどれだけ取り込めるかがカギになる。

実需期に合わせて「週末値引き」を行うユニクロはここを徹底しているといえる。

3のセールで買う人も重要だ。
最後に値下げ品を買ってくれる人だから、この層がいないと在庫は処分できない。
これも相当数存在する。

大規模な売上高を稼ぐには2と3を多く取り込む必要がある。
ただし、そのブランドはどちらかというと実需型になり、ファッション感度は低くなる。

そして3つの層の絶対数は上に行くほど少なくなっており、ピラミッド型をしている。

1の層を多く取り込むためにはファッション感度はある程度高くしなくてはならないが、何百億円単位の売上高を目指すことは相当に難しい。そこまでの人口は存在しない。
素材や縫製の上質化も必要だろう。

当たり前のことをくどくどと書いてみたが、バブル崩壊以降、ファストファッションブームを経て、意外にこの整理ができていないアパレル企業、ブランドが増えたのではないかと感じる。

例えば、数年前のジーンズの低価格競争や、3年くらい前から始まった軽量ダウンジャケットの低価格競争なんていうのはその最たる例だろう。

ジーユーが990円のジーンズを出したからうちは980円、うちは880円、という量販店が続出した。
量販店だけならまだしも、中価格帯、高価格帯のジーンズブランドまで値下げした。
しかし、990円のジーンズを買う人に対して、9800円のジーンズを7800円に下げたところで何の効果もない。
その人は元から7800円のジーンズになんて興味がない。

軽量ダウンでも同じだ。
ユニクロの5900円に追随して効果があったと聞いた量販店は皆無である。
一般メディアはこのあたりを区別して考えられないから、ユニクロが5900円ダウンを発売したら高額ダウンは売れないと報道しがちだが、正統なアウトドアブランドのダウンジャケットは数万円以上するような高額な商品も売れている。
購入する人や着用する用途がまったく違う。
モンクレーというブランドが好きか嫌いか、品質がアウトドアブランドに比べて高いか低いかという議論は置いておいて、購入する層も使用用途も全く異なる。
それでもモンクレーを買った人がユニクロのウルトラライトダウンを買うこともあるが、それは着るシーンが異なるのである。

このあたりを分けて考えないと、ブランドビジネスは成り立たない。

以前、ユニクロのフリースブームのころ、某百貨店ブランドが2900円のフリースジャケットを発売したことがある。これも冷静に考えてみれば悪手である。
なぜならユニクロの1900円フリースが売れているからといって、その百貨店ブランドが2900円フリースを発売する必要はなかった。さらにいうとフリースジャケットそのものを発売する必要もない。
またユニクロの1900円フリースが欲しい層に、そのブランドが2900円フリースをアピールしたところでまったく響かない。
ユニクロの1900円フリースへの対抗的役割はイオンあたりに丸投げしておけば良いのである。

これは15年くらい前の話だが、今でも似たようなことは掃いて捨てるほどある。

アパレル業界はこの当たり前の話を再度整理して分析・分類しないと、いつまで経っても空疎なスローガンを掲げただけで終わってしまう。

そんなわけで今日も業界は平常運転である。

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