LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトングループ(=以下LVMH)の所有するパリの老舗百貨店「サマリテーヌ(LA SAMARITAINE)」の改装プロジェクトが、「周辺の景観にそぐわない」としてフランスの控訴院から再び工事許可取り消しの決定を受けた。LVMHは、国務院(最高裁)に上告する意向を示している。

当初、2014年の開業を目指してスタートしたサマリテーヌの改装プロジェクトは、建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞を2010年に受賞した共同設計事務所SANAAが建築デザインを担当。歴史を感じながらもラグジュアリーな雰囲気を演出するというガラス張りのデザインへの建て替えを発表したが、これに対して景観保護団体などがデザインへの不服申し立てを行い、一審の地方行政裁判所は昨年5月、工事許可の一部を取り消す決定を支持していた。
ボンマルシェに次ぐパリで2番目のデパートとして知られているサマリテーヌはセーヌ川沿いに位置し、元来の建築デザインはアールデコ様式で、一部の壁画やステンドグラスは文化財に指定。2000年代初期にLVMH傘下となった後、老朽化など防災安全上の理由から2005年に閉店した。改装完了時には、ホテルやオフィス、市営住宅スペースが併設される予定になっている。