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「マウジー」と「エンフォルド」 、ニューヨーク出店の狙いとは?

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バロックジャパンリミテッドが展開する「マウジー」と「エンフォルド」が続けざまに米国のニューヨークに出店した。

先にオープンしたのがエンフォルドで、ワシントンSQの西側、7番街と8番街に挟まれるブリーカーストリート沿い。マウジーはダウンタウンのブロードウエイと6番街の間のブルームSt.に面する。両店ともNYを代表する観光&ショッピングエリア、ウエストビレッジとサウス・オブ・ハウストンSt.、所謂ソーホーの一角である。

SPAが足下市場で手応えを感じ、グローバル戦略に踏み出す時、ニューヨークに出店するのは珍しくない。ただ、バロックJLは「アジアへの情報発信基地の拠点を目的とするために、米国市場に参入した」と語っている。4月には現地法人のバロックユーエスエーリミテッドを設立しており、米国で店舗展開する上で、NYはマーケティングやプロモーションのすべてを含む情報拠点として、全社を支援する態勢を司るようである。

同社が語る「アジアへの情報発信基地の拠点を目的とするために米国市場に参入」を額面通りに読むと、「アジアへの情報発信が何で米国なの?」と思う。 同社はすでに中国・香港に160店舗以上を出店していて、十分に情報発信しているではと、 素人目には考えられるからだ。

それゆえ、米国市場に参入する真意とは何か。非常に気になるところだ。まあ、マウジーの店舗の場合、中国・香港での展開は、大半がインショップだろう。そのため、商品を売るだけの拠点であって、店づくりにコストをかけているとは思えない。そうした店づくりの中で、ラインナップされている商品がブランドの世界観を十分に発信できているかと言えば、やはり疑問符が付く。

昨今のお客はインターネットのサイトで商品を検索し、気に入ったアイテムが見つかると、近くのショップに行って現物を確かめようとする。消費者の購買心理なんて洋の東西を問わず、大して変わらないはずだ。でも、ブランド側にすれば、それではお客にロイヤルティをすり込み、顧客化しているとは言いきれない。やはりマウジー、そしてエンフォルドが他と一線を画するブランドであることを示すには、空間演出を最大限に施したショップでVMD駆使したストーリーと、スタッフの秀逸なトークによって世界観を伝えて行くことが何より重要なのである。

なおさらバロックJLがグローバルSPAを目指すには、世界中のお客はもちろん、カジュアルウエアの一大市場としてのポテンシャルをもつアジア攻略抜きには考えられない。こうしたエリア内にある中華系をはじめとするファッション企業、バイヤーたちが注目するのは、やはりニューヨークからのトレンド発信なのだと判断したのではないか。オープンがファッションウィーク期間中だったというのも、彼らに見てもらう狙いがあったはずだ。言い換えれば、ニューヨークでも悔しいかなチャイニーズマネーとバイイングパワーは侮れないということである。

社内的に見ると、ニューヨークでの展開は何より企画にあたるスタッフのモチベーションが違ってくる。マウジー&エンフォルドは日本の東京と異なり、世界のニューヨークでどう評価されるのか。エンフォルドはアパレルメーカーが集まる7番街の南に位置することもあり、ドメスティックいやジャパニーズコンテンポラリーをリサーチに訪れる業界人も少なくないと思う。

マウジーは完全にショッピングエリアと化したソーホーにあるだけに、世界のトップブランドと比較されるのは言うまでもない。さらに辛口で名が通る現地メディア、インスタイルやナイロンといったファッション誌の論評も気になるところだ。

良きにつけ悪しきにつけ、評価はそのまま企画スタッフのやる気につながり、それ以降のクリエーションさえ左右しかねない。スタッフが世界の目というプレッシャーをクリエイティビティに昇華させることができれば、マウジーはひと皮むけ、エンフォルドは更なる高みを目指せるはずである。

一方で、資金的なバックアップも見逃せない。バロックJLは今から3年前、筆頭株主がフランスの銀行系投資ファンドCLSAサンライズキャピタルから、中国最大手の婦人靴小売チェーンを運営する百麗国際(ベルインターナショナル)ホールディングスに代わった。

株式は日本のオリックスも30%程度有するが、中国進出に際しては現地の事情に詳しいパートナーが必要なことから、百麗国際HDが選ばれたと言われている。第3位の株主には同じくCLSAから株式を取得した香港のファンドCDHランウエイインベストメントが顔を並べ、中華系資本による支援が同社の世界戦略を担っていると言って間違いない。

では、マウジーやエンフォルドにとって、ニューヨーク展開にはどんな可能性があるのだろうか。ファッション都市として見たニューヨークは、最初に五番街がラグジュアリーブランドのメッカとなり、次いで広告代理店の街だったマジソンアベニューにブランドの旗艦店が集まりだした。それらは欧州から見た米国市場攻略の橋頭堡でもあったのだが、世界に冠たる情報発信の街としての機能も捨て難かったと思う。

80年代になると、それまで倉庫街だったダウンタウンにクリエーターたちがオフィスを構え、90年代からは次第にブランドショップが進出するようになった。この頃からディフュージョンラインやストリートを意識したブランドがソーホーを中心に続々出店するようになり、一気に不動産バブルを迎えたのである。

同じダウンタウンでも、ウエストビレッジはグリニッジビレッジよりも古くからある街区で、アーリーアメリカンな落ち着いた佇まいから、70年代のガイドブックではギャラリーが集まっているとの触れ込みだった。しかし、この地区もバブルの影響か、90年代以降、ギャラリーは賃料の安い北側のチェルシー地区に移転している。

マウジーが店舗を構えるブルームSt.の2ブロック北のプリンスSt.とブロードウエイの角にはアルマーニエクスチェンジが1991年に1号店を出店した。ただ、ソーホーのような人気エリアで、低価格SPAが単独展開するのは容易ではない。今では家賃の安いミートパッキング地区や郊外SCなどにも出店して包括的に収益が上がるような戦略を取っている。日本でも数年前から全国展開し始めているが、同じことが見て取れる。

日本では衰えを見せないユニクロはニューヨークで苦戦気味だ。五番街、ソーホーに出店しているが、今年はマンハッタンより家賃が安いスタッテンアイランドの店舗を閉鎖した。理由は売上げ不振のよるものと言われるが、ランニングコストを考えるとマンハッタンの店舗も決して順風満帆とは言えないはずである。ただ、どちらともペイしないのであれば費用より効果を重視し、ソーホー店を残す選択をしたとも受け取れる。

ニューヨークの変遷をずっと見て来た人間から言わせてもらうと、マウジーもエンフォルドもショップ運営だけで見れば、コスト的にとても合わないと思う。当然、それはバロックJLとしても織り込み済みだろうし、それ以上の目的があるからこそニューヨークに出店したのである。

ただ、売れなければそれは評価されていないのと同じで、情報発信に水を差すことにもなりかねない。アジアのファッション企業やバイヤーにとって、ニューヨークでの販売実績は、ビジネス展開における重要なデータ以外の何ものでもないからだ。有能な業界人なら、まずブランド単品で捉えることはしない。色、柄、デザイン、素材といったゾーンで見ていく。服種、ゾーン内のカテゴリー別でも分析するはずだ。マウジーはジーンズ、エンフォルドはコートという固定概念を捨てて見てるバイヤーもいるだろう。

もちろん、グローバルブランドがひしめくニューヨークだから、マウジーやエンフォルドに対する他社の評価を聞き出したり、ライバル店と比較したりもする。もちろん、女性スタッフに買い物してもらい、意見を聞くことも忘れないだろう。米国とアジアではサイズも気候も感性も違う。

どんなアイテムが売れて、どんなアイテムは厳しいかは、冷静に分析していくと思う。その裏付けとなる数字が企画力やクリエイティビティ以上に重要な意味を持つのだ。バロックJLは非上場だから、バランスシートは公開はしていないが、彼らは何らかの形で入手していくと思う。

バロックJLがニューヨーク出店を手段ではなく目的と語っている以上、激戦地での売上げ実績という結果を残すことが、何よりアジアへの情報発信であることは言うまでもない。

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