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【インタビュー】スタイリスト中村のんが語る原宿の歴史と真の魅力

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原宿の歴史を伝えるスタイリスト

2014年に70年代の原宿のシーンを展示した写真展『70's 原風景 原宿』をプロデュース。2015年には写真集『70'HARAJUKU』(小学館)を出版。2017年は東急プラザ表参道原宿の5周年記念イベントとして開催する70年代・80年代・90年代それぞれの原宿を振り返る「OMOHARA写真展」のディレクターを...と、彼女はここ数年、原宿の歴史を今に伝える活動に力を注いでいる。一体なぜ? 今回は、70年代から原宿を拠点に活躍し続けているスタイリスト・中村のんさんの"オモハラ観"を覗かせてもらった。

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《プロフィール》
1956年、東京生まれ。スタイリスト。桑沢デザイン研究所リビングデザイン科在学時代より、スタイリストの草分け、高橋靖子のアシスタントを4年務めた後、22歳でフリーに。CM、広告を中心に、雑誌、写真集、CDジャケット、プロモーションビデオ、ステージ衣装等、活動範囲は多岐に及ぶ。


70年代の原宿のムードを伝える理由

アトリエで楽しそうに作業する30代のゴローさんこと高橋吾郎さん(インディアンジュエリーブランド『ゴローズ』創立者)。サングラスをかけて大型バイクにまたがる役者になる前の舘ひろしさん。――彼女が出版した写真集『70'HARAJUKU』には今の僕らが知る原宿とは違う「70年代の原宿」のムードが写っていた。

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写真集『70'HARAJUKU』(小学館)。表紙は日本初のフリースタイリスト・高橋靖子さん(左)と、日本で初めてパリコレに器用されたモデル・山口小夜子さん

「私は日本初のスタイリスト・高橋靖子さんにアシスタントとして連れ歩かれて、10代の頃から山本寛斎さん、矢沢永吉さんなど才能あるクリエーターたちがこの街にいる様子を間近で見させてもらってきました。当時は今みたいに経済優先じゃなくて、みんながただやりたいことに挑戦している自由な雰囲気の街でした。小さくてもいいから何かを始めよう、というね。広告代理店の人たちもマーケティングなんて誰もやってなくて。けど、そんな中から大きなブームが次々と生まれていました。みんなが動物的直感で時代を作っていたように思います」

まだラフォーレ原宿もなく、カフェなんて言葉もなく、ブティックも喫茶店も数えられる程度。その分、新しいことに挑戦するエネルギーに満ち溢れた街であった。そんな70年代の原宿を甦らせる写真展をプロデュースし始めたきっかけは、2011年の東日本大震災により、世の中のムードが変わったことだと話す。

「2011年以降、コンプライアンスが一気に厳しくなって、窮屈な気持ちで働いている人が増えたように感じます。クリエイターも『空気を読め』と言われる時代になってしまって。みんなが『昔は良かった...』と諦め気分で。けど、そんなことばっかり言ってても仕方ないよねと思う気持ちと、でも、このまま進んだら本当にどんな時代になってしまうんだろう...という不安の狭間で、ふと自分が青春を過ごした70年代の自由な原宿の風景を、もう一度見たくなったんです」

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70年代に様々なジャンルのクリエイターが集まっていた伝説の喫茶店『レオン』店内の写真(撮影:染吾郎)

楽しかった時代のムードに再度触れることで、自分が今の時代に何をすべきか、改めて考えたい。2014年、彼女は"自分が見たい景色"を見るために、時代を共有してきたカメラマンたちに声を掛け、70年代の原宿の風景を集めた写真展を開催することに。そして、そんな彼女の行動に共感する人は予想以上に多かった。

「とても小さなギャラリーで、キュレーターでもない素人の私が開催する写真展でした。でも、菊池武夫さんや丸山敬太さんに声をかけると、2つ返事でトークショーに出演してくださることが決定。開催すると、懐かしがる人はもちろん、その時代の原宿に興味を持つ若い世代の方も多く来てくださいました。当時お会いしたことのなかった藤原ヒロシさんも来場して『感動的な写真展に出会った』とJ-WAVEで紹介してくださったり。最初は継続するつもりもない、ほんの思いつきの試みだったのですが、周囲から後押しをいただけたおかげで、写真集を出版したり、翌年にはさらに大きなスペースで写真展を開催したりと、共感してくださったいろんな人とのご縁によって、原宿の歴史を伝える活動を継続する流れになりました」

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2017年4〜5月には東急プラザ表参道原宿にて「OMOHARA展」として中村さんが集めた70年代の原宿の写真が展示された

計算もせず、ただやりたいことをやる。すると共感する人が集まり、だんだんと大きなものになる。これはまさに、70年代の原宿を思い出す体験だと中村さんは語った。

恩師・高橋靖子さんとの出会い

そんな中村さんに、「初めての原宿」の思い出を聞いてみた。

「初めて来たのは中学2年生のとき。当時ちょうど『anan』が創刊されて、原宿が注目され始めた頃で、毎週来る度に店がポツポツと増えていました。散歩しながら一軒一軒覗くのが楽しくて、それは新宿にも渋谷にもない魅力でしたね」

その後も原宿に通い続けファッションへの興味を深めていった彼女は、高校生になると、当時『装苑』と人気を二分していたモードファッション誌『服装』に才能を発見(投稿した手紙が評価)され、イラスト付きエッセイの連載を開始。それが、当時原宿で活躍していたスタイリストであり、恩師となる高橋靖子さんと出会うきっかけになった。

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原宿で一緒に仕事をする高橋靖子さん(左)と中村のんさん(右)

「15歳年上のヤッコさんも当時『服装』で連載をしていて、大ファンだったんです。だから、私の存在だけでも知ってもらえたら...と編集部で住所を教えてもらって、長い手紙を出しました。手紙には、好きなミュージシャンや好きな服やお店のこと、当時のボーイフレンドとの関係、思いつく限りのことを自分を全開にして書きました。するとヤッコさんから『宇宙の片隅に私と同じことを考えて生きている女の子がいて驚きました』と返事がきて...。17歳の自分が語ったことに、30代の大人の女性が、しかも私が大好きなデヴィッド・ボウイのスタイリストもやった有名なスタイリストさんが共感してくれたことに天にも昇る気持ちになりました」

そんな2人は、同じ宇宙どころか、同じ街・原宿にいた。きっと熱いエネルギーを持つ者たちが自然と集まる街だったのだろう。高校を卒業すると、中村さんは高橋さんの元でアルバイトを始める。

「私は桑沢デザイン研究所に通っていたんですけど、携帯電話もない時代なので、何かあるとヤッコさんが学校に電話をかけてきて、よく校内放送で呼び出されていました(笑)。渋谷から飛んでいくと、原宿で一流のプロの方々から色んなことを教えてもらったり可愛がってもらえる。とても素敵な時間でしたね」

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70年代の表参道(撮影:染吾郎)

中村さんが愛する70年代の原宿の、古き良き賑やかなムードがうかがえる。

原宿の魅力は70年代だけにあらず!

70年代の原宿に強い思い入れを持つ中村さんだが、原宿の歴史を伝える活動を行う中で気付いた原宿の真の魅力について、こう話す。

「70年代は、時代の先端をいくクリエーターや、クリエーターを目指す学生たちが集まってきて、カルチャーを通して繋がってゆく街でした。そして、そこから色んなものが生まれた。80年代は、DCブランドを中心とした『ファッションの街』として一気に全国的な人気に。バブルがはじけた90年代は、まさにストリートカルチャーの時代。『原宿ポップ』とも言われている原宿ならではの派手なファッションや、『裏原カルチャー』が生まれた時代でもありました。街の雰囲気はどんどん変わっていきましたが、それぞれの時代ごとに、青春をこの街で過ごした人たちが、自分を育ててくれた空気感に深い愛着・誇りを持っていることをリアルに感じています。めまぐるしく変化しつつも、常に他の街と異なる個性を持ち、愛されながらその歴史を積み重ねてきた。とても尊いことだと感じています」

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2017年7〜8月には『OMOHARA写真展 vol.2 80's』も開催された

自分自身が70年代の原宿を愛するように、他の時代の原宿を愛する人もいる。その事実こそがこの街の持つ財産なのだという。

「写真展に来る若い世代の人たちや外国の人たちと話しても感じますが、各時代の若いジェネレーションのエネルギーによって徐々に作られてきた街という点が、世界にも類を見ない原宿の唯一無二の価値や面白さとして人々を魅了しています。一方で、建物の老朽化、街に訪れる人数の増加などもあり、古いものを建て直さなければならないという時期に来てもいる。2020年にはオリンピックも開催されますしね。大事なのは、ここで、文化や歴史、人々の想いをどれだけ尊重した形で街を次のステージに持っていけるか。原宿が守り続けてきた"個性"をどれだけ残せるか。原宿を愛する人たちは次の時代を見据え、行政や大企業がやることをしっかりと見張らなければならないと思います」

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取材は中村さんの希望により、70年代の思い出のカフェ『コロンバン』で行われた

自身も写真展を開催するうえで、原宿への強い想いを持つ様々な層の存在を意識し、緊張感を持って取り組んでいると語った中村さん。彼女が現在に甦らせてくれている輝かしい街の歴史を見に行けば、過去の原宿を知らなかった人も、きっとその価値を感じられるはず。できれば、そこで「昔は良かったんだ」と終わらせることなく、これからの時代の原宿はどんな個性を持つべきだろう...と一緒に考えてみてほしい。

Text:Takeshi Koh
Photo:Takako Iimoto

《お知らせ》
2017年11月17日~12月25日、東急プラザ表参道原宿にて『OMOHARA写真展 vol.3 90's』が開催されます!

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