リニューアルした大丸心斎橋店本館の外観
Image by: 南充浩

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大丸心斎橋店本館が"ハイブリッド型百貨店"に、何が変わったのか?

リニューアルした大丸心斎橋店本館の外観
Image by: 南充浩

 4年間の改修工事を終え、大丸心斎橋店本館が9月20日、リニューアルオープンする。建築家ウィリアム・メレル・ヴォーリズの設計による建物は、大阪・御堂筋沿いのランドマークとして長年親しまれてきた。改修に関しては、建物を残すべきという反対意見も少なからずあったが、それがどう生かされたのか。また近隣の梅田、難波、天王寺には年間売上高1,000億円を越える大型百貨店が並ぶ中、売上高ではそれらよりも低かった大丸心斎橋店はどのような店作りを目指すのか。(取材・文:南充浩)

 ウィリアム・メレル・ヴォーリズが設計した旧本館のレンガや大理石はほぼ再利用された。低層階の外観も旧本館とほとんど同じ作りを再現しているため、違和感は少ない。また、1階の天井やエレベーターホールの装飾も67%のパーツを再利用しているという。

 リニューアルした大丸心斎橋店本館の売り場は、地下2階から地上10階まで。売場面積は4万平方メートルで、旧本館よりも9,000平方メートル広がった。しかし売り場面積だけでいえば、近年大型化する百貨店の中にあってはさほど大きいとはいえないため、売り場構成からは工夫がうかがえる。

 売り場全体の65%は、定期賃貸借契約(定借)によるテナントで構成。ファッションビルやショッピングモール形式と百貨店のハイブリッド型だといえる。これに関しては批判もあるだろうが、これまで百貨店が慣れ親しんだ消化仕入れによる売り場作りが行き詰まりを見せている中で、異なる取り組みを試してみるのはそう悪いことではない。

 売り場の特徴としては、ファッションのフロア数が減ったこと、また食品のフロアが地下1階と地下2階の2層あることも挙げられるだろう。さらに9階はインバウンド観光客向けのフロアとして位置付けられているが、そこにはカフェ併設の「ポケモンセンターオーサカDX&ポケモンカフェ」や、「週刊少年ジャンプ」のキャラクター類を扱う「ジャンプショップ(JUMP SHOP)」など、外国人が高く評価する日本のアニメや漫画関係のショップがある。これらは定借によるテナント誘致の効果だといえる。また、9階にはコンビニの「ローソン(LAWSON)」もあり、従来型百貨店では考えられなかった店舗が並んでいる。

 2、3階は欧米ラグジュアリーブランドのフロアとなっている。これを除くとファッションフロアは4~6階の3層しかない。正確にいうと7階も半分くらいはファッションなので3.5層ということになる。4階はファッションカルチャーのフロアで、メンズとウィメンズが混在する。5階はウィメンズ、6階はメンズ、7階は「オアシスとなるフロア」で、ビューティー&コスメがメインとしながらも、ベビー・子ども服やウィメンズ向けのフォーマルウェアもあるという構成になっている。通常の百貨店に比べると、メンズ、ウィメンズ、子ども服のそれぞれのカテゴリーを大幅に圧縮して1フロアにまとめているという印象を受ける。また、それぞれのカテゴリーもテイストによる統一感はなく、かなりバラバラなテイストのブランドを並べていることも大きな特徴だといえる。

 例えば、4階のファッションカルチャーのフロアだと、「セオリー(Theory)」や「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」「ポール・スミス(Paul Smith)」といった百貨店御用達ブランドや、「デンハム(DENHAM)」「ディーゼル(DIESEL)」など高価格帯のカジュアルブランドだけではなく、ヨガウェアを展開する「ルルレモン(Lululemon)」まで並んでいる。また地下2階は単なる食品売り場ではなくフードホールを展開し、時間消費型の売り場となっている。これらの点に"脱百貨店"の工夫の跡が見られるのではないかと思う。心斎橋店の西阪義晴店長は「今までのようなファッション重視ではなく、ライフスタイルや時間消費型を重視した売り場づくりをした」と話す。

 またリニューアルに際して、1階御堂筋側の入り口では彫刻家の名和晃平氏による新作が展示されている。金と銀の2体の鳳凰で、これは大丸のシンボルである孔雀の原型となったものである。もともと大丸は鳳凰をシンボルにする予定だったが、出来上がってきたものが何故か孔雀になっていて、それ以来そのまま孔雀を使用しているという逸話がある。今回はその原点に戻って、原点たる鳳凰を展示している。

 本館のコンセプトは「Delight the World 世界が憧れる心斎橋へ」と定め、「ローカリティを極め、グローバルに発信する」「顧客がメディアとなるようなドラマチックな世界観を演出する」「目利き力で有名無名にかかわらず正当性の高い商品を提供する」「生活の中に美を見出しモノと人との調和をはかる『次世代のアーツアンドクラフツ』を育む」「地域と共にシビックプライドの向上・復権を目指す」といった5つのフィロソフィーを掲げている。初年度売上高については、本館単体は非公表で、2020年2月期で本館・北館・南館の3館合わせて890億円を見込む。定借比率が65%という環境においてはかなり強気の売り上げ計画だといえる。

 オーソドックスな百貨店とは一線を画したブランドラインナップと売り場構成となっているが、これが果たして吉と出るか。もしそれなりの反響があるなら、これに続く百貨店も出てくるのではないだろうか。

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