Fumitoshi Goto

2019年アメリカ国内の閉鎖店舗数が約9,300店に、チェーンストアで起きている「イノベーションのジレンマ」

激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ

在米28年のアメリカン流通コンサルタント

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■今年も残り10日程度となってしまった。小売業界にとって2019年は大量閉店が目立った年となった。調査会社のコアサイト・リサーチによると、これまでに発表されたアメリカ国内の閉鎖店舗数はトータルで9,300店を上った。

昨年1年間で閉鎖となった5,864店を超え、約60%も増えたことになる。店舗閉鎖8,139店となった2017年をはるかに凌ぐペースで大量閉店が起きたのだ。

コアサイト・リサーチでは2012年から統計を開始して閉店数が最多となった。

閉店数で最多となったのは靴チェーンでかつて全米ナンバーワンだったペイレス・シューソースだ。ペイレスでは2月に企業清算を行い約2,100店を閉鎖した。

婦人服小売チェーンのドレスバーンも事業終了に向けて全米にある650店舗をすべて閉鎖したことで、親会社のアシナ・リテール・グループではドレスバーンを含む800店近くの閉鎖と報告されている。

また子供服チェーンのジンボリーも今年1月、2度目の破産法を申請し全750店をスクラップした。

この3社の閉店数だけで今年の閉鎖店舗数の3分の1を占めたことになる。

他に中西部や南部に展開するディスカウントチェーンのフレッズ(Fred's)の564店、ティーンや若い女性向けのファッションを扱うシャーロット・ルッセの512店、デパートメントストアのショップコの371店、ダラーストアのファミリーダラーの359店、スポーツ栄養補助食品やダイエット商品の販売を手掛けるGNCの332店、ファッション雑貨を展開するチャーミング・チャーリーの261店の閉店だ。

閉鎖となる店舗数が3桁に及ぶチェーンストアはアベニューやシアーズ、ディスティネーション・マタニティ、ウォルグリーンなどまだまだ続く。

直近では9月に倒産したファストファッション大手のフォーエバー21も100店舗以上の閉鎖が話題となった。

8月に経営破綻した高級ファッションのバーニーズ・ニューヨークも国内に残す予定だった店舗すべてが閉鎖となり現在、最大25%ディスカウントと閉店セール中だ。

 大量閉店につながった一番の要因は買い物がリアル店舗からオンラインに移っているからだ。

年末商戦の開始を告げるブラックフライデーでは数年前からオンラインで買い物する客数が実店舗で買い物する客数を勝っている。

全米小売業協会のデータによると、2019年の感謝祭(11月28日)から翌週月曜日(12月2日)まで5日間の買い物客数の比較ではオンラインが1億4,220万人に対して実店舗では1億2,400万人となった。

調査会社ショッパートラックのデータでもブラックフライデーのリアル店舗の客数は前年に比べて6.2%の減少と報告している。

ブラックフライデーだけでなく現在は小売全体の16%がEコマースを占めており、さらに買い物がネットに移ると見られているのだ。

スイスの金融グループUBSはEコマースが伸びることで2026年までにアメリカ国内の7.5万店が閉店するとの試算を発表している。

UBSの予想ではオンラインストアのシェアが1ポイント上昇する毎に8,000~8,500店が閉鎖となる。

実店舗を閉鎖に追い込むのはECマーケットで圧倒的なシェアを誇るアマゾン。アマゾンなどのEコマースサイトが売り上げ全体の16%から2026年には25%になる。それまでに最大で7.5万店と閉鎖となるとみられている。

 ペイレスシューズのようなインパクトはないが、チェーンストアによる大量閉店は来年も続くのだ。

トップ画像:閉店セールで店内がほぼ空っぽになったフォーエバー21。閉店まで後6日と貼られている。

2019年チェーンストアの閉店数(コアサイト・リサーチ調査)。閉店数で最多となったのは靴チェーンでかつて全米ナンバーワンだったペイレス・シューソース。ペイレスでは企業清算で約2,100店を閉鎖した。婦人服小売チェーンのドレスバーンも全店閉鎖したことで、親会社のアシナ・リテール・グループではドレスバーンを含む800店近くの閉鎖となった。子供服チェーンのジンボリーも750店をスクラップした。この3社の閉店数だけで今年の閉鎖店舗数の3分の1を占めたことになる。

⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。ハーバード・ビジネス・スクール教授のクレイトン・クリステンセン氏が著した「イノベーションのジレンマ(The Innovator's Dilemma)」という名著があります。後藤はコンサルティングでもクライアントに読むようにすすめているビジネス書です。「イノベーションのジレンマ」では、豊富な事例を交えて破壊的技術革新が大企業を衰退させるというイノベーション理論を解説しています。簡単にいえば、業界トップとなった企業が顧客の意見に耳を傾け、さらに高品質の製品やサービスを追求・提供することで、かえってイノベーション(変革・革新)から退いてしまい、失敗を招くということです。最近の事例では、銀塩フィルムに固執したことでデジタル化に乗り遅れてしまったコダック社が挙げられています。この名著では大企業になったからこそ「すべてを正しく行う」がゆえに、破壊的な革新となるイノベーションを採用することが難しくなるというジレンマを事例から解き明かしています。

⇒チェーンストアで起こっている大量閉店がまさにイノベーションのジレンマなんですね。顧客の意見に真摯に耳を傾けて最適な売り場をつくるあまり、オムニチャネルに乗り遅れてしまっているのです。今、消費市場は「地殻変動」と喩えられる市場構造の根本的な変化となっています。破壊的変化に直面しているからこそ、リアル店に固執するあまり大手は逆に身動きが取れなくなっているのです。例えば物流一つとっても売り場に向けて最適化された物流から、個別の顧客に送る物流のフルフィルメントセンターを採用するのは極めて困難。その前にチェーンストアで成功したリーダーが、チェーンストアを否定し異なるビジネスモデルを採用することがそもそも難しいのです。当ブログでもよく喩えていますが、巨人ファンから阪神ファン、もしくはその逆になるほどハードなことです。沈みゆくタイタニック号の上で、デッキチェアを並べ替えても意味がありません。客が来なくなっている売り場を買いやすい売り場にしても意味がないのと同じです。
 まだ読んでいない方は正月でも、クレイトン・クリステンセン氏が著した「イノベーションのジレンマ(The Innovator's Dilemma)」を読んでみてください。

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