女性特有の健康課題にテクノロジーを生かして解決していこうという商品、サービスであるフェムテックが市場として拡大している。生理、出産や産後、更年期などはこれまで表に出さない問題で、解消する商品も人目につきにくい販路、売り場が中心だったが、心地良さ、機能性、おしゃれさを備えたデザイン商品としてオープンな物作りや売り場が目立ってきた。
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売り場
◇期間限定店で好反応
フェムテック市場がここ1、2年で急速に認知され始めているが、その主役になっているのが生理用品だ。女性の性や健康に対応する商品分野についてもよりオープンで楽しいカテゴリーとして注目されているのがポイント。商品はより自由で心地良く、使い勝手を向上させながら、サステイナビリティー(持続可能性)の意識の強まりにも対応して開発され、売り場もネットだけでなく、実店舗でもオープンで明るい売り場が設けられ始めた。
アジュマは96年に設立し、セクシュアルヘルスグッズや生理用品を輸入販売してきたフェムテック分野の先行企業だ。現在ではフェムテック専門商社として、生理、産後、更年期のケア商品を幅広く扱っている。
以前はアダルトグッズ店以外の販路が少なかったが、17年にデリケートゾーンの英国コスメ「イエス」を扱うようになって百貨店販路が広がり、19年には台湾の吸水ショーツ(生理用パンツ)「ムーンパンツ」を導入し、これも一気に広がった。昨年秋に最初に出した西武池袋本店での期間限定店では2週間でムーンパンツが280枚売れた。発売を知らせるSNSには1万8000の「いいね」が返ってきたほど。その後もムーンパンツを中心に、月経カップやイエスなどの関連用品も加えて期間限定店を出店するようになった。
昨年11月には大丸梅田店が百貨店で初めてフェムテック常設売り場「ミチカケ」を開設したが、フェムテックのセレクトショップ「ムーンドバイエルピーシー」もその一角に出した。10月1日には大丸札幌店に比較的長期の期間限定店(21年2月まで)を出す。現在は阪急うめだ本店で期間限定店を開設中だ。
すでにムーンパンツは伊勢丹、高島屋などの百貨店やロフト、東急ハンズなどに卸先を広げている。6月下旬~7月初旬に出した西武渋谷店の期間限定店は、最も入店客の目につく1階正面に構えた。女性の性と健康に対応するフェムテック商品は恥ずかしく閉鎖的なイメージが払しょくされ、ヘルシーでオープンなカテゴリーとして徐々に認知が広がってきたとみている。同社ではデリケートゾーンのコスメは競合が激しくなり、質の競争になりつつあるとみるが、吸水ショーツや月経カップは潜在需要がまだまだあるとみている。出産や更年期をはじめ、今後のフェムテック需要の拡大に力が入る。
◇買い回りにも誘導
大丸梅田店の編集ゾーン、ミチカケは、生理や性など女性特有の悩みの解消を目的に掲げて19年11月にオープンした。セルフプレジャーブランド「イロハ」を百貨店で初めて導入するなど、フェムテック商品を一般層に販売した先駆け的存在だ。
コロナ下で家で過ごす時間が増えたことから、「ムーンドバイエルピーシー」の吸水ショーツや月経カップが売れている。「興味はあったが外出時に着用するのは不安」という人が、家でじっくり試したいと購入している。洗い替えを想定して2枚まとめて購入する人が多く、セットで1万円以上でも抵抗なく買っている。館の客層上、リピーターは40、50代が中心。60、70代は尿もれなどの身体の変化から、〝膣トレ〟グッズを購入する人もいる。
館の買い回り促進のため、肌着売り場で購入した客にイロハのデリケートケア用品の割引クーポンを配布したところ、予想以上に購買があり、セルフプレジャーアイテムを買う客もいた。「以前から知ってはいたが売り場に行くきっかけが欲しかった」という声が多かったという。「生理関連商品は広がっているが、性関連の商品にはまだ後ろめたさがある。もっと気軽に買い物できるよう、買い回りを促していきたい」という。
このほか、「ニュー・スタンド・トーキョー」のようにデザイン日用品店にフェムテック製品の売り場を設け、入店客は男女の際なく自由に商品を見て選べる店も現れた。フェムテック商品はギフト需要を取り込んでいく可能性も注目されている。
商品開発
◇高感度なサニタリー
ベイクルーズの「エミリーウィーク」は、女性のバイオリズムに着目し、サニタリーショーツを中心としたランジェリーや布製ライナー、ルームウェアなどで構成するブランドだ。機能性だけでなく、高感度なデザイン、クオリティーの高いビジュアル作りなどのブランディングの巧みさも目を引く。ECが売り上げの7割を占めるが、実店舗を大丸梅田店とニュウマン横浜に出している。今年は全体の売り上げが前年比20%増以上の伸びだ。
ブランド設立は17年。コンセプターである柿沼あき子さんの企画が社内での新規事業案件を公募する「スタートアップキャンプ」で選ばれて立ち上げた。「以前から女性特有の体の悩みがあり、同じ悩みを持つ人に寄り添いながら、ファッションの明るさで気分を上げることができれば」との思いを込めた。
長年、様々な商品を試し、機能面を含め、「こうだったら」とのこだわりを詰め込んだ。品質、製造面では下着作りの専門家もチームに参画、また「当社が出す以上、ファッション性は外せない」とし、サニタリーショーツは旬のカラーを取り入れ、形もトレンドのハイライズに。ブラジャーのひもは肩からのぞいても素敵に見えるデザインに仕上げ、布製ライナーも裏面に洋服に使うような生地を使用、持ち歩いてもおしゃれなパッケージにしている。
主要顧客は30代の働く女性。ブランドのコンセプトに共感する声が社内外から聞かれるとする。売れ筋はサニタリーショーツで、オーガニックコットンを使用したリセットシリーズが特に人気だ。客単価は1万円前後で、ショーツとセットでブラジャーも購入するなど複数買いが中心、リピーターも多い。
力を入れているのがブログ。EC売り上げの40%がブログ経由で、週4回更新する。「コーディネート提案などより、スペックや着用感、製造の背景といった内容への反応が高い」。インスタグラムでの公開Q&Aも好評だった。「これまでサニタリーショーツはコンビニなどで適当に買っていた方が多かったはず。でも、使い心地やデザイン、素材などこだわる方も増えてきている」と市場の変化を感じている。
◇いつでも違和感なく
ピリオドが販売する吸水ショーツ「ピリオド」は薄さと吸水性を兼ね備えた日本のブランドだ。創業は18年夏で、寺尾彩加代表が米国の吸水ショーツ「シンクス」に関する記事を読んだのがきっかけだ。シンクスの代理店として日本での販売を始めた。予想以上の売れ行きだったが、ネット販売が許されなかったので、自ら企画したのがピリオドだ。
「生理中でなくても違和感なくはける」というはき心地を目指して企画。ポリエステル・綿・ポリウレタン混地で、タイト感のないストレッチ性によりワンサイズだが幅広い人がはける設計にした。クロッチ部分は5層構造で吸水力を高め、色は黒。シンプルな〝スポーツ〟(4000円)、レース使いの〝ヒップハガー〟(4500円)を用意した。昨年秋にオンラインで発売し、「非常に好調に売れている」。SNSも活用し、消費者の声を集めており、年内には新商品を出せるよう開発を進めている。基本的にオンライン販売だけだが、最近、フェルマータへの卸を開始、ニュー・スタンド・トーキョーで販売している。
サニタリーショーツ、生理パンツなどが注目されているが、健康課題でも生理はつらく煩わしい現象だけに女性の課題の中で注目度が高い。より快適に、違和感なく、機能的でファッショナブルに使える製品の開発が進んでいる。商品のバリエーションの広い欧米や一部のアジアからの輸入品が先行しているが、1、2年前から国内ブランドも増えつつある。月経や出産に関する手軽な機器やツール、尿漏れ対策など更年期向け商品などフェムテックの裾野も広がっている。
(繊研新聞本紙20年9月30日付)
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