・「ファッションブランドのグローバル進出」の考え方、方法、チームは変わってきている(パリコレ、卸売 → デジタルを中心とした展開)
・ファッションブランドが海外進出した際には、いくつか共通の課題が出てくる
1. 日本のデザインがグローバルで受け入れられない:日本で通用したプロダクト・サービスが、世界にとって良いものかどうかは、ユーザーにある。そのため、できるだけはやくグローバルユーザーを取り込んでプロダクト・サービスの改善をしていくことが重要。
2. 海外展開すると価格が上がる:グローバル展開であっても、D2Cモデルや最新のツールを駆使すれば、コストを抑えてブランド展開が可能。
3. 海外でブランドメッセージを伝えるハードルが高い:自分と現地の両方を理解できる人、パートナーを巻き込めると、グローバルブランド展開はより効果的に進む。
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従来のやり方から変わるファッションブランドのグローバル進出
日本国内のファッション市場縮小を背景に、日本のアパレル企業にとってグローバル進出は避けて通れない。ただし、この「グローバル進出」というのは、今までのファッション業界におけるグローバル展開とは変わってきていると筆者は考える。
従来のファッションブランドのグローバル化といえば、パリコレを代表とするファッションウィークを中心とした卸売と直営店やフランチャイズによる小売の2つのチャネルが主流であった。
しかし、スマートフォンの普及によるSNSやECなどへのデジタルシフトや、環境問題/生産者の人権問題などの関心増加による意味のない消費の見直しにより、既存の2つのチャネルが変わりつつあるのだ。さらに、コロナショックによりファッションブランドのデジタルシフトが今まで以上に必要になっている。
一方で、デジタルシフトしてグローバル展開と言ってしまえば簡単に聞こえるが、ファッションブランドにおけるグローバル展開には様々な課題が出てくる。実際に、ラグジュアリーブランドとしてグローバルに挑戦した筆者の経験や、グローバル規模の直営店、フランチャイズ展開経験がある大手ファッション企業CEOの話からもわかっていることだ。
そこで今回は、ファッションブランドのグローバル展開時に直面する、よくある課題を紹介する。もちろんその課題に対する解決策も言及しているので参考にしていただきたい。
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ファッションブランドのグローバル進出の課題とは?
1. 日本向けのデザインに固執するとグローバルで受入れられない
そもそも日本とグローバルで生活習慣や天候や嗜好性に違いがあるので、今まで日本向けに作っていた服がグローバル市場では刺さりづらくなってしまう。当たり前に聞こえるかもしれないが、日本の「良い」とグローバルの「良い」は違うので、日本で作り込んだ「自信のある商品」に固執しすぎるとつまずいてしまう。
例えばラグジュアリーブランドの場合、日本のユーザーはデザインより機能を重視して、グローバルのユーザーはユニークなデザインを重視する傾向にある。筆者の経験でも、日本で売れていたのは、1枚でお洒落に見える防寒のロング丈のミリタリージャケットで、グローバル市場では複雑なレイヤーがあるトレンチコートだった。
すでに日本である程度の業績のあるブランドだと、商品そのものへの固執がなおさら強くなる。自社製品に自信を持つことは悪いことではないが、それがユーザーにとって良いのかどうかは、ユーザーが決めることだ。
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解決策: 現地ユーザーとの声を集めてプロダクト/サービス開発をする
このような課題に対する解決策として提案したいのが、ブランド・商品をそもそも最初からグローバルユーザー向けにデザインしていくということだ。これが1番理想。
また、すでに日本向けに立ち上げているブランドであっても、ブランドの根底の部分や大事なストーリーは確立しつつ、進出先のユーザーの声を集め、プロダクト開発やサービス開発を進めていくことが効果的だ。
つまりグローバルユーザーを巻き込んだプロダクト/サービス開発には、進出先の土地勘やローカルコミュニティ、ローカルユーザーの理解と繋がりが重要になってくるのだ。まずはそういった繋がりを獲得するための、有益情報取得、現地視察、パートナー探しなどをしておくといいだろう。
ちなみに、日本市場を飛ばして最初からグローバルブランドとしての確立を目指すことには、重要な利点がある。それは、「海外で成功したブランド」として、そのあとの日本市場で戦っていけるということだ。
いわば、逆輸入ブランドとなる。日本人の特性であるが、海外でポジションを築くことができているブランドに対する嗜好性が比較的高いため、日本市場での展開でも有利に働くだろう。
2. グローバルの販売価格が日本国内より大幅に高騰する
海外に商品輸出して販売する場合、日本のユーザー向けに商品を提供してる時には必要なかった関税・輸送量が上乗せされる。卸の場合は卸値(ホールセールプライス)での取引なので、卸先小売業者の利益を乗せられ、結果、グローバル市場では日本の販売価格の1.4倍〜2倍で売られているのが普通である。
特に中国では、日本の価格の2倍以上で販売している事例も珍しくはない。同じ商品で1.4倍〜2倍の価格になる場合、商品自体の価値をあげないと価格の妥当性がなくなってしまう。
解決策:D2Cブランドとしてのグローバル展開
海外展開においても、こういった中間業者のマージンをなるべくなくすことは、コストカットに繋がる。つまりD2C(Direct-to-Consumer)モデルをグローバル規模で行うということだ。
従来の小売・卸を中心とした販売スタイルでなく、ECを中心といたD2Cとして展開できれば、中間コストを抑えて、グローバルでの価格差を最小限に抑えられる。
一方で最終的には、コストを最小限に抑えたグローバル価格でも、ユーザーに価値を見出してもらえるだけの商品・ブランド体験作りはいずれにしろ必要にはなる。
さらに、日本ブランドにとって、「グローバル x D2C」というモデルが今、追い風になっている。その理由は、ShopifyやSquareなど越境ECのプラットフォームサービスが増え、気軽に日本に在庫を置きながらグローバルの消費者に向けて商品を届けやすくなっているからだ。
また、アメリカではECでモノを買う習慣が日本よりも定着しており、価格の妥当性がある魅力的な商品であれば越境ECで買うニーズは十分にある。
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3. 海外でブランドメッセージを伝える難しさ
欧州に直営店3店舗、中国にフランチャイズで展開しているアパレルブランドのCEOから印象的な経験を聞いた。海外に直営店を出して難しかったのは、日本人として世界に届けたいメッセージを、ブランドの言葉で現地のユーザーに伝えることだったという。
直営店で働くスタッフは、日本人ではなく、日本のことをあまり知らない現地の人になる。日本に馴染みのない現地スタッフを通して、自分たちの伝えたいメッセージや世界観を広げていくのは至難の技なのである。卸の場合においても、ブランドのコンセプトすら知らずに小売業者がユーザーに販売しているのが現状である。
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解決策:ブランド作り手(日本)と現地のコト/人を理解している人材と共にブランド開発。
現地での(ブランド)コミュニケーションを円滑化させるためには、その土地の文化・言語を理解する人材をブランドに巻き込んでサービス/プロダクト開発、クリエイティブ制作などを行う必要がある。
特に、ブランドの作り手・創業者と進出先国、両方の文化的背景やコミュニケーションを理解している人が入っていることが望ましい。両者を理解する人が媒介となって、日本馴染みがない現地スタッフともメッセージングに関して統制が取れていくようになるのだ。
そもそもスタッフが理解できてないと的外れなメッセージやサービスになってしまうことは想像に易いだろう。
もちろん創業メンバーがその土地のコトや人を理解するのも大事だが、現地の感覚をすでに持った理解者を巻き込んだ方が、スピード勝負が可能になり、無駄な労力がいらなくなる。今後もコロナの影響で人の移動が制限される可能性があるので、現地にこのようなパートナーは必要になってくるだろう。
ファッションブランドの「グローバル進出」は考え方、方法、チームをアップデートする必要がある!
以上をまとめると、日本のファッションブランドは、自分たちにとって「グローバル進出とは何か」、「どうグローバル進出すべきか」という点を改めて考える必要があるということになる。
また、今までのファッションブランドの海外進出において、共通する課題をあげたが、それらに対する解決策として以下を例として挙げた。
1. 日本で通用したプロダクト・サービスが、世界にとって良いものかどうかは、ユーザーにある。そのため、できるだけ早くグローバルユーザーを取り込んでプロダクト・サービスの改善をしていくことが重要。
2. グローバル展開であっても、D2Cモデルや最新のツールを駆使すれば、コストを抑えてブランド展開が可能。
3. 自分と現地の両方を理解できる人、パートナーを巻き込めると、グローバルブランド展開はより効果的に進む。
コロナショックで、消費者の価値観の変化やブランドとしてのスタンスを見直さなければならない上に、ファッション業界では、J. Crewなどの老舗ブランドやバーニーズニューヨークなどの小売店が破産してきている状況である。
日本でも今後さらに厳しい状況になる可能性があり、そうなった時に今までの現状維持では確実に淘汰される。
一方で、紹介した通り、ファッションブランドのグローバル進出には多くの機会もある。ECやD2Cを中心に、これほど顧客を近い距離で、ブランドの展開ができるようになっているのだから。
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