以前当メディアでも紹介したバーチャルインフルエンサーは、今や一般に浸透しつつある。先日話題となった、刃物メーカー貝印株式会社の「#剃るに自由を」の広告に起用されているのもバーチャルモデルのMEME、つまり実在しないバーチャルヒューマンだ。
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あるいは、実在の人物を象ったバーチャルヒューマンも存在している。今年ローンチされたホリエ・ロイド・タカフミ(以下、ホリエ・ロイド)もその一つの例で、彼はホリエモン、つまり堀江貴文のバーチャルヒューマンである。
上述のホリエ・ロイドや、当メディアでも紹介した男性のバーチャルインフルエンサー、リアム・ニクロを開発、運用しているのが株式会社1SEC(ワンセック)だ。彼らはいかにしてバーチャルヒューマン(注:バーチャルモデル、バーチャルインフルエンサーを含めた総称として本記事ではこの語を中心的に使用する)の開発を実現してきたのか?また、その戦略とビジョンはどのようなものなのか?そして、バーチャルヒューマンとは一体何なのか?今回は1SECのCEO宮地氏とCOO中村氏にお話を伺った。
1SECの事業設立背景とバーチャルヒューマンへの着目
――まずは、1SECの設立背景を教えてください。
中村:設立としては2019年の1月29日で、現在2期目にさしかかり、Founder/CEOとしては宮地が、僕がCOOとして参画しております。事業としては、エンタメなどのDXと、バーチャルモデルとAIの研究開発など、大きく分けてDXとバーチャルモデル、この2軸になってます。
D2Cのブランドや動画メディアを扱う企業を大手ゲーム会社に売却したのち、米国のメディア情報を色々とキャッチアップする中でバーチャルヒューマンとAIに着目して会社を創立しました。ファンコミュニティだったりYouTubeをはじめとするコンテンツをプロデュース等している中で、その延長線上としてバーチャルモデルやAIというものを、エンタメを中心に提案しています。
技術面に関しては、ファイナルファンタジーXIIIのムービーディレクターやVRCG事業を管轄していた藤井(CTO)が担当しています。社外取締役としては、EMIミュージックジャパンの元社長の方に参画いただいていて、セレブリティやエンタメの橋渡しをグローバルでしています。これが主なメンバーです。
――続いて、バーチャルモデル等のサービスを立ち上げられた背景も教えてください。
宮地:僕が前職3ミニッツという会社を創業し、ファッションに特化したことをやっていたんですが、その延長線上で幅広くファッションに限らずエンタメを含めた人脈があり、その中で色々ご相談をいただいていています。
例えば、独立して活躍しているパワーインフルエンサーの人たちのサポートをしています。自分が動かなくても活動できる1つのツール、マネタイゼーションの1つとして、バーチャルというテクノロジーが対応する可能性がすごく大きいんです。なので、その手前でエンタメDXなども幅広くやったりしています。
バーチャルテクノロジーとAIを1つの柱としているんですが、そのバーチャルモデルとAIを1つのツールとして使うエンタメの流れでいくと、「分身」を作ることもマネタイゼーションの1つになります。
中村:セレブリティのDXより先に、バーチャルモデルやAIを提供していくのが先でしたね。バーチャルモデルやAIは、研究開発に結構時間がかかったりするので、当初より進めていたリアム・ニクロをリリースした時期くらいから研究開発を進めています。
もう少しブレイクダウンしてお話しさせていただくと、AIを搭載したバーチャルモデルは、次世代のインフルエンサー、インターフェースになれる存在かなと思っています。その背景としては、5Gだったり、リアルな人だと発信情報が意図せず誤解されることで生まれるリスクなどがあります。デジタルプラットフォームを介してアクセスできる、アクセスしに行ける存在として、バーチャルモデル、AIというものを捉えています。
インターフェースとしてのバーチャルヒューマン
――バーチャルヒューマンの強みとはなんでしょうか?
中村:バーチャルヒューマンですが、北米の方から2、3年前に火がついて、実際にバーチャルヒューマンを3DCGテクノロジーで提供している企業にとってもバリューにもなっています。日本に波がくるのは時間の問題かなというところで、盛り上がりを見せているかなと捉えています。
バーチャルヒューマンの強みですが、最近だとキュレーションメディアや情報メディアというよりかはわりと「個」にフォーカスして、個が発信して個がメディアになっている時代かなと思っています。その先に3DCG、テクノロジーで作られたインフルエンサーモデルがいて、バーチャルヒューマンは個のメディアのさらに先のインターフェースとして活用ができるんじゃないかなと思っています。
リアルだとコントロールができなかったりすることが、バーチャルヒューマンであれば3DCGなので見た目から性格までの表現がこちらで自由に設定することが叶うので、それが1つ強みかなと思います。
昨今のコロナ禍の状況でも、バーチャルモデルであればもちろん病気にならなかったり、例えば撮影など、今でこそZoomをはじめとする遠隔のものも浸透してますが、そもそも現地で実施するいうことが必要ありません。こういったストレスから解放されるような手段の1つとして、これも大きな1つの強みとして捉えております。
――実際のバーチャルヒューマンの事例を紹介いただけますか?
中村:まず、男性バーチャルヒューマン、リアム・ニクロがいます。最近だと彼とNBAとのタイアップ施策を行って、通常だと入れないNBAの施設の方に入らせていただいて、ニューインターフェースとしてその様子を発信しました。これは日本に限らず世界で話題になりましたね。
また、サントリーさんと共同で開発を行ったバーチャルヒューマン、山鳥水生(やまとりみずき)ですが、まさにと広告と人型のオウンドメディアとして、次世代のインターフェースとしての試みを行っています。彼はサントリーさんの宣伝部のバーチャル社員という設定で、新しい広報として3ヶ月くらい前からローンチしています。ここからまた来年にかけてさらに色々仕掛けていこうかなというところです。
もう1つがホリエモン、堀江さんのデジタルヒューマンであるホリエ・ロイドです。堀江さんご自身が、自分の仕事の一部をAIや3DCGを含めたテクノロジーに任せたいという希望があったので、共同で未来の一つの形としてローンチしました。
また、バーチャルモデル、AIの事業で研究開発を進めてきたのですが、ようやく1つのプロダクトONE AI(ワンエーアイ)を12月10日にローンチしました。
>>1SEC、バーチャルヒューマンにAIを搭載し、インタラクティブなコミュニケーションが可能になるONE AIのβ版をローンチ
宮地:ONE AIは、物理ベースのリアルタイムグラフィックと音声認識AI、映像認識AI、特化型対話AI等、最先端のAIを駆使したハイエンドなデジタルヒューマンテクノロジーなります。
弊社の事業としては、このAIを搭載した3DCGバーチャルモデルのようなものが1番やりたかったことになりますね。
コンセプトにより異なるバーチャルヒューマンの「リアルさ」
――御社でバーチャルモデル、バーチャルヒューマンを作るときにこだわっている部分をお聞きしたいです。
宮地:男性のバーチャルヒューマンは世界的に見てもいなくて、リアムが初めてに近い男性のバーチャルヒューマンだったんです。バーチャルモデルっていう存在は、女性のキャラクターが先行して日本でも海外でも結構出ていました。
顔のCGについてですが、ファンデーションの質感、テクスチャーは再現しやすいんですけど、男性だとメイクをしないので、メイクじゃないリアルな顔の素肌の質感ってCGのテクスチャーを出すっていうのがなかなか難しかったんです。そういった意味でリアムに関しては肌のテクスチャーにはこだわりました。
逆にいうと、ホリエ・ロイドや山鳥は、そこまで肌の質感のリアルさみたいなものを求めず、中身のパーソナルな部分やキャラクター性に重きを置いて、キャラクター像などに力を入れてますね。
――男性のバーチャルヒューマンの場合は肌の質感によって、見る人が無意識にリアルさを感じるのかもしれませんね。
宮地:リアムに関しては肌のシミとかそういうのまで結構再現しましたね。作り込みが結構完成度高いと思います。
究開発の一環として、見る人が(バーチャルヒューマンを)本物の人間じゃなくバーチャルだと認識したとしても、バーチャルヒューマンのキャラクター性に重きが置かれている時に、人はどんな風に動いていくのか、認知して反応してくれるのか、ということを考えています。
――ホリエ・ロイドの開発の経緯について、教えていただけますか?
宮地:もともとリアムなどをやっている流れで、堀江さん自身からのそういうバーチャルな「分身」みたいなものを作りたいというお話があったのがきっかけです。そこで、僕らのAIエンジンの技術を搭載してもらえれば、ホリエ・ロイドが講演をするというのも可能になってていくのかなと思いまして、そこがまずはプロジェクトの起点というかターニングポイントですね。
――ホリエ・ロイドが堀江さんに代わって講演することも可能になるとのことでしたが、それはどのような仕組みなのでしょうか?彼が言いそうなことをホリエ・ロイドが言ってくれるのでしょうか。
宮地:ホリエ・ロイドは堀江貴文さんからインスパイアされた、堀江貴文とは全然違った存在なんです。例えば堀江さんが今まで言ってきた発言や名言みたいなものをディープラーニングさせて、堀江貴文ではない堀江貴文のバーチャルヒューマンが、Zoomでセミナーのようなことをやる、AIのエンジンを使って講演会のようなWebセミナーで話すということができる可能性がありますね。
――双方向的なコミュニケーションも可能なのでしょうか?
宮地:まずは一方的に喋る、講演をするっていうところに着目しています。いずれ、聞いていただいたユーザーさんとコミュニケーションもできればいいかなと思いますね。
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後半では、メンズのバーチャルインフルエンサー、リアム・ニクロのアイデンティティや、バーチャルヒューマンとユーザーの関係、そしてファッションやサステナビリティとの関係についてお話を伺っていきます。
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