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コロナ禍で続く国内の縫製メーカーらの苦境、いま試される日本の物作りの底力

コロナ禍で続く国内の縫製メーカーらの苦境、いま試される日本の物作りの底力

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 コロナ禍で国内の縫製メーカー、ニッターの苦境が続く。主力としていたOEM(相手先ブランドによる生産)事業の不透明感が強まるなか、改めて自立事業の重要性がクローズアップされ、自社ブランドの確立や新規販路の開拓などが急速に進む。社会環境、消費者の価値観が大きく変わるのを捉え、ピンチをチャンスに変えることができるか、日本の物作りの底力が試されている。

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(山田太志=西日本編集部インナー・レッグ・生産担当)

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覚悟が決まる

 緊急事態宣言の直後、ある国内ニッターの社長にOEMの主力取引先から、「当面は発注のめどが立たない」という連絡が入った。経営に与えるダメージはもちろん大きいが、「それ以上に、メーカーにとっては、生産する商品がない、仕事がないという精神的なダメージがいかにつらいかを痛感した」。

 しばらくの間、自分たちができることと言えば、以前から進めてきた自社商品の開発や生産の仕事だけ。「長年の取引先であり、小売りの状況を見れば先方の言うことも十分理解できる。ただ、自立しなければ誰も守ってくれないという覚悟は固まった」。幸い、中断しかけたOEMはその後予想以上に数字が伸びた。キャッシュフローや一定の工場稼働を維持するという点から、OEMも引き続き重要視するが、「覚悟」だけはしっかり心に刻まれた。

 過去、行政からのバックアップを含め、国内工場、産地企業の自立化を目指す動きは何度もあった。ただ、現実は自社ブランドの立ち上げなどを急ぐあまり、軌道に乗らなかったケースが多い。コンサルティング会社などへの支払い、時に直営店出店まで踏み込みコストだけがかさむケースも。中小企業ならではの人材難も立ちはだかった。

 昨今の市況の厳しさはこれまでの比ではない。少子高齢化や人材難、日本全体の経済の陰りが重くのし掛かってきたところに、今回のコロナ禍である。淘汰(とうた)の時代を生き残ってきたメーカー、きちんとした後継者がいるメーカーでさえ、懸命に生き残りを探らねばならない時代となった。

新しい動き生まれる

 しかし、見方を変えれば、コロナ禍は必ずしもマイナス要因だけではない。社会環境、消費者の価値観が大きく変わっていく時代だからこそ、新しい動きが生まれてくることが多々ある。

 追い風の一つは、EC販売の普及。OEMメーカーが自社ブランドを展開する時、最初にぶつかる大きな壁の一つが「出口戦略」だ。今や中小企業でもDtoC(メーカー直販)が可能になった。商業施設の空きスペースの増加などを背景に、期間限定店などの出店もしやすく、小型のオムニチャネル戦略が具体化できるようになった。何を作れば良いかのヒントもウェブ上で消費者が教えてくれる。さらにウェブ商談の普及で手の届かなった海外市場との距離も縮まっている。

 サステイナブル(持続可能)の流れも国内メーカーにとってはプラスだ。労務コストの安い国で商品を生産、何週間もかけて商品を運び、結果的に売れ残り在庫を多く作るような仕組みは限界に来つつある。大手素材メーカーのなかにも国内生産を見直す動きが出てきた。糸から製品まで、どこでどう作られているのかを知ろうとする感度の高い消費者は少しずつ増えてきた。近い将来には、有機栽培野菜のように、タグに生産者の顔まで明記するような商品が並び始めるだろう。

 また、コロナを機に地方や地域を改めて見直す傾向もある。国内工場は地方中心に立地しているにもかかわらず、これまでは地域との関係が薄かったところが多い。春にはマスクを求めて、地元の人が工場を突然訪問するようなケースも少なくなかった。物作りの現場を見たいというニーズも生産現場の人が考えている以上に多い。工場見学やワークショップなどを通じて地元のファンを作る努力も重要。コロナを機に地元で働きたいという若い人も散見され、人材確保の面からも地域に密着したオープンファクトリーを目指したいものだ。

社風さえ変わる

 士農工商に分かれていた長い歴史を反映してか、日本は生産と販売の間に距離感がある。大手企業の自社工場でさえ、その傾向がある。作り手がマニアックなまでの物作りを追求してきたことは、決して否定されることではないが、DtoCの流れが加速するなか、企画、生産、販売、管理部門が全社一丸となって、消費者ニーズに向きあわなくてはいけない時代だ。

 国内生産は今や数%となった。希少価値があるのは確かだが、メイド・イン・ジャパンというだけで売れる時代ではない。国産だから何が優れているのか、なぜ価格は高いのかを明確に語ることができれば、道は開けるはず。自分たちの作ったものが自社ブランドで売れれば、社風そのものが変わってくる。試練の時期が続くだろうが、次世代につながる企業像を作る可能性は決して低くない。

山田太志=西日本編集部インナー・レッグ・生産担当

(繊研新聞本紙20年11月30日付)

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