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「見限られる前に見切る覚悟」コロナ禍に考えるアパレル業界人の今後

「見限られる前に見切る覚悟」コロナ禍に考えるアパレル業界人の今後

クリエイティブディレクター
HAKATA NEWYORK PARIS

 2021年が明けた。アパレル業界は今年も厳しい状況が続くだろうが、側面からずっとサポートしてきた「出版業界」も、雑誌の廃刊や身売りが続いている。年末ギリギリになって懇意にしていた元編集者から、「ぜひ、会って話がしたい」との連絡をもらった。どうやら、転職をして別の仕事をしているようだ。

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 コロナ禍で県境を超えた移動は憚れたが、半年以上出張らしい出張には行けず、自宅と事務所を往復だったから出かけたくなった。もちろん、万全な感染対策を取った上で、屋外で小一時間くらいの会話なら大丈夫だろうと、決断した。県外に出るのは一昨年の10月以来。彼の現状、元同僚編集者らの動向、今後の業界のあり方など聞きたいことはいろいろあった。

 テラス席なら換気の心配がなく、会話も自由にできるだろうと、街中のカフェを利用した。寒さが気になったが、街はその日たまたま寒波が和らぎ、昼ごろになると陽が差して暖かになった。彼がスーツ&コートなのに対し、こちらは薄手のニットにレザージャケット。防寒はそれで十分だった。

 面と向かって彼と話すのは5年ぶり。以前は毎年のように一緒に仕事をしていたが、互いに他が忙しくなって会う機会もなくなった。その後、出版不況が一気に来て、担当していた雑誌が別会社に身売りし、違う部署を異動していた。会って話したいとの電話をもらった時は、「知り合いの伝手で、11月から別の会社にお世話になっている」とのことだった。どんな仕事をしているのかも気になった。

歳を取るほど、異業種転職を躊躇う

 現在の仕事は、出版とは全く異なる店舗開発や施工管理。某専門店グループの子会社に籍を置いているとのことだ。出版社時代にはフード業界をメーンで取材していたので、店舗にも少なからず触れていたと思うが、外から見るのと中で仕事をするのはずいぶん異なる。コロナ禍でアパレルや外食は客足が遠のき、青息吐息の店舗も少なくない。感染者の爆発的な拡大で再び緊急事態宣言が発令されると、廃業や閉店に追い込まれるところも出てくるだろう。

 だが、彼によると、「再開発が続いているエリアでは、新規出店や改装のペースは落ちていない」という。勤務する会社でも「4月開業のビルで新規出店の物件が5つ、他にも数店が改装中」とか。店が潰れても、その跡は新しいビジネスが芽を出すチャンスなのか。彼にとってはいろんな発見もあり、毎日は充実しているようだ。もちろん、将来は経営者として独立し、「これまでお世話になった方々とのコミュニティを復活させたい」と、意気込む。

 一方、元同僚の編集者らはどうしているのか。年末になると、必ずプロ球団を解雇された選手を取り上げる番組がある。ベテランになればなるほど、なかなか異業種への転職に踏ん切りがつかず、スポーツ関連の仕事に携わりたいとの思いが強い。彼に聞くと、「元同僚も編集を続けているのが大半」とか。「あと2〜3年で定年を迎えるのに、マイナー雑誌まで格を落としても編集者を続ける人もいる」そうだ。よく転職できたものである。

 インターネットの発達で、編集の仕事もクラウドでこなせるようになった。必ずしも東京の一等地にオフィスを構える必要はなく、自宅でも可能だ。リモートでライターやカメラマン、イラストレーターなどと打ち合わせをして仕事を割り振れる。そして、ネットで送られてきた記事とGoogleドライブに保存された写真やイラストを整理して、エディトリアルデザイナーに回せば、版下データの制作まで遠隔でできる。あとは号ごとの編集企画に注力し、自ら取材をこなして行けばいいだけ。「同僚の中にはそうしているものもいる」という。

 ただ、メディアとして存続させるには、発行部数やレスポンスをいかにあげるか。そして、安定した広告スポンサーを開拓、維持できるかだが、それが一番難しくなっている。編集コストは下げられても、広告出稿を増やすのは容易ではない。彼によると、「出版社に勤務していた当時からWebメディアにも注力しようとしたが、紙媒体ほど有料購読者を増やすことはできなかった」という。

 スマートフォンで無料で情報が得られる時代に、読者が有料のWebコンテンツにどこまで価値を見出すか。よほど金を出しても欲しい情報でない限りは難しいだろう。そこが紙の雑誌媒体がネット切り替えに二の足を踏む理由か。残るも地獄、進むも地獄。尚更、増えない広告や購読収入の中では、ライターやカメラマン、スタイリストなんかのギャラも減っていく。彼は「今の仕事で経営を勉強した後は、再び出版事業に携わることはない」と言い切った。

スマートストアで、店づくりの最適化

 今後の業界のあり方について、彼はどう思っているのか。「アパレルや外食は地域格差がますます広がっていくだろう」。「人口が減少している地域では、商業開発を行って新規出店したところで、ペイしない店舗が多くなっている」。だから、「デベロッパー側は頻繁にテナントを入れ替えていく。この傾向がさらに先鋭化していくと思う」とのこと。なるほどである。 JR九州が駅ビルを次々と開業しているが、テナントの売上げでは宮崎はともかく熊本、鹿児島中央西口は厳しいだろう。

 アパレルは欲しいものか、消耗品か、購入ケースは二分化している。お客がそこにしかない商品を求めるのなら、県外からでも来店する。だが、地方店ではそんな品揃えは難しく、お客がネットで購入すれば来店はしない。実店舗しかないレストランは、予約しても行きたいところは生き残れる。つまり、ありふれたNB、百貨店や商業ビルの2番店、外食含め紋切り型店は、市場縮小の地方では淘汰されていく。「回遊して」「スタッフとの会話」なんて、店舗運営を知らない素人の戯言に過ぎない。

 実店舗については、巣ごもり消費のようにニーズに合わせ臨機応変にMDを修正したところは、売上げの減少を抑えられた。反面、SPAのように一度に作って売り減らす業態は、コロナ禍による集客減で大量の在庫を抱えた。それでなくてもアパレルは売れにくい状況で、セールと売れ残りロスの二重苦にある。これから抜け出すには、ロットを少なくして短いサイクルで商品を作って回していくか。受注生産でなるべく在庫を持たないようにするか。生き残りの選択肢は限られてくる。

 そこで、彼は「リアル店舗はスマートストアの時代に入っていく。今は大型スーパーやディスカウントストアがカメラを使ってお客の動きや購買動向をリアルタイムでデータ化し、検証、分析して仕入れから販売まで効率化させようとしている。これが他の専門店にも導入されていくのではないか」と、今後の業界を想定した。

 確かにこれだけ動画の撮影が簡単にできるようなると、お客の入店から購買までを可視化できる。そのデータを分析して、売り上げを最大限にするための店づくりからレイアウト、MD、陳列やFO、VPまでの答えを出すところが出てきてもおかしくない。まさにデジタルトランスフォーメーション(DX)を活用した小売業だ。

 これまでのように「カッコいい」とか、「買いやすい」とか、アナログで抽象的な店ではない。お客の動きから購買動向までの変化を時系列で切り取った店舗づくりが不可欠になる。彼のように店舗開発の仕事をすれば、出店退店の状況を身近で感じられるから、どんな店が必要かが想像できるのだ。

 年頭所感を発表した経営者の中にはオンラインの強化とか、来店してのコミュニケーション作りとかの次元で止まっている方々が多い。しかし、コロナ禍の終息が全く見えない中では、もっとドラスティックな経営戦略の転換が必要になる。画期的なシステムやデジタル整備にもっと投資すべきだろう。潜在的なニーズやウォンツを掘り下げる商品開発も必須。総花的な戦略から一歩抜け出るところが令和3年を制するということだ。

 感染拡大を抑えながら経済も回していくという二律背反に適する政策などない。知恵を出してチャレンジするしか、この難局は乗り越えられないと思う。年末に彼と会話して、こちらも刺激をもらった。過去の実績や経験にしがみついていても、打開はできない。むしろ、自分の存在を見限られる前に見切る覚悟で進む。どこまでできるかはわからないが、いろいろとアイデアを巡らせてみたい。

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