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コロナ禍で変わる新人教育 店長が意識していることは?

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 春になり、自店に新人スタッフが配属されたという店も多いはず。新型コロナウイルスの影響により、対人コミュニケーションに工夫が求められ、実店舗ではこれまでと異なる働き方が迫られるようになった。そんな環境下で、店頭での新人教育の在り方にも変化が生じている。今回は4人の店長にコロナ下の新人教育で意識していることを聞いた。

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その場のチャンスを生かす

「フーズフーチコ」河原町オーパ店 小杉成美さん

「密に話す時間は減っても、ちょっと話す機会は意識して増やしている」小杉さん
「密に話す時間は減っても、ちょっと話す機会は意識して増やしている」小杉さん

 「(指導すべきと)気付いた瞬間に、なるべくその場ですぐ話すようになった」と小杉さん。コロナ下で、SNS配信の頻度を上げるなど新しい仕事が増え、あらかじめ時間を定めてしっかり話し込む機会は減った。新人教育も教えられる時間、指導すべき瞬間を見逃さず、より効果的に行う場面が増えた。

 池袋ルミネ店で店長を務め、河原町オーパ店に異動したのは19年12月。20年に新卒社員が配属されたが、4月から緊急事態宣言が発令され、「店に慣れてもらってから、いろいろなことを教えるという今までの方法がとれなかった」。営業自粛期間中にオンラインミーティングや週1回の頻度で集まる店頭を活用し、「SNSの撮影作業など先行してできる部分から教育していった」。

 店頭で接客を実践できない中、先に学んでもらってとくに効果的だったのはブログの作成だ。「接客と同じ感覚でいい」とアドバイスした結果、いざ営業が再開した時に「接客でスムーズに言葉も出せるようになっていた」と振り返る。

 コロナ下であっても新人教育で重視することは同じ。まず、本人がやりたいことにとことん取り組んでもらい、責任感を養うと同時に、強みや長所を見つける。「最近の若者は目標がリアルで高くない。自信を持たせてあげることが大切で、長所は早く見いだすべき」と言う。

 仕事の結果だけを見ず、それまでの過程を振り返ることも促す。「具体的に何が難しかったかなどを、意識してもらうことが成長につながる」からだ。そして「自分ができること、相手にできることを半分ずつで考えよう」とも呼び掛ける。周りのことも考えて仕事をしてもらうことで、個々の負担を減らし、チームワークも円滑になる。

やる気になる機会作り、自発性養う

「フラワー」ルミネエスト新宿店 平良優さん

新人教育係は朝礼時に決め、同じ日に何人もの先輩が指導することがないように気を配る平良さん
新人教育係は朝礼時に決め、同じ日に何人もの先輩が指導することがないように気を配る平良さん

 20年3月から店長を務めている平良さん。店長歴は浅いが、前職を含めるとアパレルの販売員は8年目で経験は豊富だ。コロナ下の新人教育で意識しているのは、「仕事のモチベーションを上げるため、スタッフ同士で褒め合うこと」と「仕事に自発的に臨む姿勢を習慣づける」ことだ。

 元々は客数の多い店だった分、コロナ下で忙しさが減り、仕事のやりがいも感じづらくなってしまった。「まずはスタッフのモチベーションを上げることが大事」と考え、同店独自の表彰制度として「ホスピタリティー選手権」を始めることにした。

 良い働きが目立ったスタッフを互いにたたえ合うもので、1カ月を通して優秀だったスタッフに店長とサブが作った表彰状を贈呈する。この選手権で表彰された新人は、得意を伸ばそうとしたり、他も褒められようと仕事に前向きになることが多いという。

 新人の自発性を養うことには特に力を入れている。「最近は内向的な新人が多い」と感じているため、「まずは心を開いてもらえるように積極的にコミュニケーションを取る」。出退勤時にあいさつをする際、「必ず雑談も交わすようにしている」。

 コミュニケーションを取り、信頼関係を築いた上で具体的な指導に当たる。新人にいち早く店の戦力になってもらうためには、「自発的に仕事に取り組んだ時とそうでない時で、数カ月後の成長速度にどれぐらいの差が生じるのかを具体的に示す」ようにしている。成長の差を分かりやすく示すことに加え、日々の仕事において先輩に質問すべき場面をルール化しておくことで、「分からないことを聞くのが当たり前になる」という。

マスク越しでも最大の笑顔を

「ライトオン」アリオ北砂店 野本未来さん

手に持っているのは野本さんが自店スタッフに送ったスマイルカードの一部
手に持っているのは野本さんが自店スタッフに送ったスマイルカードの一部

 店長歴3年の野本さんがコロナ下の新人指導で特に心掛けるようになったのが、「マスク越しでも笑顔が伝わる接客」だ。今まで以上に「良いところをしっかり褒めることも意識するようになった」という。

 マスクの着用により、客から販売員の表情が読み取りづらくなってしまったため、「マスクのなかでも自分が思っている以上の笑顔を作ること」を指導している。最初に伝えるだけで終わらず、日々の業務のなかで随時チェックしたり、「今の笑顔良かったね」などと褒めることで「笑顔の定着」を促す。

 〝マスク笑顔〟のコツは、口角を上げて表情を良くすることに加え、声の出し方や話し方にもある。「普段よりも意識的に声のトーンを高く、明るく話すようにすることで、お客様にも元気な印象が伝わる」という。「コロナ下で精神的なストレスを抱えているお客様が多いため、今まで以上におもてなしの心を持つ必要がある。そのうえでも笑顔は大切」と考える。

 コロナ下で新人をはじめ、自店のスタッフを意識的に褒める機会を増やすようにもなった。以前は接客を通じて仕事のやりがいを感じることができていたが、客数の波が激しく、接客業務だけではやりがいを感じづらくなったからだ。

 スタッフを褒める上では、社内制度の「スマイルカード」というメッセージカードを活用している。「消毒作業、頑張ってくれたね」など些細(ささい)なことであっても「スタッフの良いところに対して、今まで以上に感謝の思いを伝えるようになった」。積極的に褒めることで、「店で働くことを楽しいと感じて欲しい。そんな気持ちで働くことができれば、自然と笑顔にもなれる」と考えている。

褒めて自発的な行動につなげる

「サマンサモスモスケイッティオ」東京ソラマチ店 磯沙央梨さん

「コロナ下で大変なことも多いが、スタッフ一人ひとりも成長にもつながっている」と磯さん
「コロナ下で大変なことも多いが、スタッフ一人ひとりも成長にもつながっている」と磯さん

 「新人の時、先輩に褒めてもらってうれしかったり向上心につながったりした経験がある」と話す磯さん。だから新人教育では、褒めることを大事にしている。

 コロナ下で変わったのは長時間のミーティングや対面でのコミュニケーションが難しくなったことだ。しっかりと話す時間がとりにくい分、朝礼で大事なことをピンポイントで伝えたり、LINEなどSNSを使ってこまめに連絡を取ることも増えたという。

 店舗を運営する上では接客の基本に立ち直って、あいさつや表情、言葉遣いなどの「CS5原則」をより大事にするようになった。いつでもマスクが必須だからこそ、マスク越しでも伝わる笑顔や声色なども意識して伝えるようにしている。

 教育面では「仕事を楽しいと思ってもらう」ことを一番大事にしているが、あえて「指示を出し過ぎない」ことも心掛けている。一日の仕事の中でルーティン化している清掃などは、最初は言葉で教え、ある程度経ってからは指示を出さない。周りのスタッフや自分が業務をしている姿を見せて、自ら気づいて動けるようになってほしいからだ。自発的に動いてくれた時には「必ず褒める」。感謝の言葉を伝えることで「やってよかったと思ってもらえて、次からも自ら動いてくれるようになる」。

 20年から使っている接客やサービスについての細かいチェック項目がある「コンピテンシーシート」はそれぞれが自己評価したものをチェックし、一緒に目標を立てることに活用している。本人の苦手意識や強化するべきポイントが把握出来て「短時間での指導もしやすくなった」。

 「こういう状況で働くのは不安を感じるときもあるかもしれない。大変なこともあるが、色々な出会いがあって楽しい仕事だから頑張ってほしい」と話す。

《バックルーム》

 新人に仕事のやりがいを感じさせ、やる気を引き出そうと尽力する店長たちの姿が印象的だった。以前は店の主な業務だった接客を通じて新人の成長を促すことができたが、コロナ下で客数が減ってしまった今、それがかないづらくなっている。社内制度などを活用しながら、接客業務以外でも新人を褒める機会を細かく作り、長所を伸ばし、自信が持てるように気を配っていた。

 コロナ下でOMO(オンラインとオフラインの融合)の重要性が一層高まった。実店舗の在り方や販売員の働き方は今後ますます変わってくるはず。新人がどんな人材に育って欲しいのかは、店長だけでなく、会社全体で考えていく必要がある。求める人物像が不明確では人材の定着は望めない。

(繊研新聞本紙21年4月26日付)

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