Mitsuhiro Minami

洋服への年間支出はわずか37149円、2000年の調査結果から約半分の金額に

南 充浩

繊維業界記者・ライター兼広報アドバイザー

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2020年の洋服の全世帯の年間支出はわずか37149円だった。

グラフで見る! 洋服の家計消費支出 全世帯の洋服の消費支出額の中期予測【出所】総務省 家計調査 (gdfreak.com)

2019年の46709円から一気に20%減となったが、理由は昨年からのコロナ不況によるものと考えられるだろう。

この統計は2000年からまとめられているが、2000年の洋服の支出は71886円だったので、コロナ禍が手伝ったとはいえ、20年間で洋服への支出は約半分になったということになる。

年間支出が37000円ということは、1か月あたりの洋服への平均支出は3000円ということになる。

3000円というとユニクロでズボンを1枚定価で買うか、ジーユーの値下がり品を3枚買うか、という程度だということになる。

2010年以降、下がり続けている原因の1つは、ユニクロ、ジーユー、しまむら、ハニーズ、アダストリア、ストライプインターナショナルなどの低価格ブランドの躍進によるものだろう。

アパレル業界や製造加工業者のみなさんが「洋服は高くても当たり前」というようなことを言ったところで、マスの消費とは全く乖離しているということがわかる。

全く乖離しているから、広く支持を集めることはできない。

ニッチ市場で高く売るということについては、当方とて異論はない。高くても欲しいという愛好家は洋服に限らずすべてのジャンルに限られた人数が存在するから、そういう愛好家に向けたニッチビジネスとして組み立てればいい。

当方がずっと違和感を持ち続けているのが、「高い洋服をマスに売りたい」という業界人の志向である。

2020年の37000円がイレギュラーなコロナ禍によるものだとしても、2019年も47000円弱なわけで、月の平均支出だと4000円弱ということになる。

もちろん、日本人の収入が伸び悩んでいるということも大きな原因だろうが、他方で、5%程度存在するという富裕層の収入は減っていないという統計もある。

ということは、高い服が売りたければ富裕層か愛好家層を目指すのが最も理にかなっているとしか言いようがない。

80年代のDCブームや90年代のビンテージジーンズブーム、アムラー、裏原宿ブームみたいな高額な洋服がマスに売れるブームなんて成熟社会では訪れないと考えた方が的確ではないかと思っている。

しかし、あの当時の隆盛を忘れられない業界人は多く、それが余計にマスの消費行動と乖離してしまう原因だろう。

とはいえ、逆にこの数年間で店頭販売価格が上がったと感じる商品も数多くある。

例えば、コロナ禍で一躍価格上昇したのは、ガンダムのプラモデルだろう。Amazonは転売ヤーの跋扈で定価より高い価格が付いている品番が増えた。

ジョーシンは実店舗に行けば、今も変わらず20%オフ販売しているが、棚は品薄で、再入荷した途端にどんどんと売れてゆき、2018年頃までなら「いつ行っても買う物があった」状態からは程遠く、新商品は開店前から並ばないと1時間後には売り切れている。

スーパーペーパードライバーの当方だが、自動車の新車価格はたまにチェックするが下がるどころか上がり続けている。たしか2010年頃だったと思うがインドのタタが25万円だかの格安自動車を発表し、自動車の価格破壊が起きるなんて報道されていたと記憶しているが、いまだに価格破壊は起きていない。

またパソコンだってASUSやレノボといった海外メーカーからは割安感のある機種が発売されているが、国内の東芝や富士通のパソコンは2013年当時よりも上がっている機種が多い。

2013年に富士通のノートパソコンを新品で8万円くらいで買ったが、今だと新品では10万円を越えている。

ASUSやレノボでもまともな機能のパソコンは割安と言っても最低でも8万円くらいはするが。

となると、収入が伸び悩んでいるというのは洋服に支出しない理由の1つではあるが、すべてではないだろう。

値上がりしても売れているジャンルもあるということは、伸びていない収入がそれらのジャンルに奪われており、洋服には支出されていないということだと考えた方が理にかなっている。

ではどうして、洋服には支出されないのかというと、現在の低価格ブランドの多くが、昔ほど、見た目が酷くなく、代替品として活用できるレベルにあるからだ。

一方、ガンダムのプラモデル、自動車、パソコンは趣味性も強い上に、ステイタス性もあるから、高くても買うという側面も強い。(ガンプラにステイタス性はないがw)

また、価格差がそのまま使い勝手の良さや機能性の差となって理解しやすいという点もあるだろう。

洋服の場合は価格差が一般大衆にとっては理解しづらい。価格が高いことが機能性の高さや耐久性の高さ、使い勝手の良さとは直結していないから、業界人は別として、それ以外の人には非常にわかりにくい。

だから、見てくれがおかしくないなら、低価格代替品で十分だと考えても不思議ではない。この思考が理解できないのは業界人だけだろう。

また高価格ブランドのデザインも着こなしが難しい物が珍しくなく、大衆にとっては低価格ブランドやベーシックブランドの方が着こなし易いという点も洋服の支出が高まらない理由ではないかと思う。

まあ、いずれにせよ、外食でも毎日低価格で構わないという人でも年に1回くらい(誕生日や記念日など)は、高級店に行きたいと思うので、洋服も同様ではないか。

低価格ブランドで身を固めていてもたまには違うブランドも着てみたいと思うだろう。その時に選ばれるブランドとしてのビジネスモデルを模索した方が確率が高いだろう。

くどい様だが、80年代・90年代のような高額服ブームは今後二度とないだろうから、腹をくくってはどうか。

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