Mitsuhiro Minami

衣料品業界がクロスオーバーでお互いに新規参入し合う理由

南 充浩

繊維業界記者・ライター兼広報アドバイザー

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現在の国内市場では、各分野の需要の上限はある程度決まっている。

そのため、各分野で需要をある程度まで取り込み切ったら、さらなる規模拡大を求めるなら他ジャンルへ進出せざるを得ない。

そのため、様々な分野でクロスオーバーが起きている。

例えば、ベーシックカジュアルを取り切ったユニクロは、メンズビジネススタイルやスポーツ分野に進出している。一方、スポーツウェアアパレル各社はカジュアルへ進出している。

作業服はカジュアルへと進出し、釣りウェアはセレクトショップや水中用作業服へと進出しようとしている。

とりわけ興味深いのが、作業服とカジュアルのクロスオーバーである。

カジュアル業界はユニクロも含めて頭打ちが続いているし、ユニクロを除いたジーンズカジュアルは衰退の一途をたどっている。

一方、作業服はワークマンが典型的で、カジュアル用途を奪いに来ている。

カジュアル屋の多くはこれ以上の規模拡大は不可能だと思っていて現状維持がやっとだが、ワークマンはそこに商機を見ている。ワークマンの武器は作業服業界で培った低価格だといえる。

このクロスオーバーで象徴的なのが「デニム生地」だと当方は見ている。

スキニージーンズは定番的に残っているものの、かつてのようにジーンズのメーカー名、ブランド名にはこだわらないという人が増えた。スキニージーンズブームの終了以降、ファッション性でいえばジーンズはほとんど注目されておらず、レギュラーストレートジーンズは最早、50代以上のオッサン専用ズボンとなり果てている。

一方で、ストレッチデニム生地を使った作業服上下がワーキング市場では増えており、着用者も目測している限りにおいて確実に増えている。しかもデニム上下の作業服を着ているのは比較的年齢が若めでオシャレ(テイストは別として)が好きそうな作業員が多い。

この辺りの逆転現象は実に興味深い。

デニム生地のセットアップを着ている工事現場の作業員が増えたと感じる話 – 南充浩 オフィシャルブログ (minamimitsuhiro.info)

この回でも多少触れた。

メンズカジュアルでいうと、明らかにデニム生地のパンツ、とりわけ5ポケット型のストレートジーンズは、ファッション好きそうな若い世代からは注目されていない。

その一方で、作業服ではその層がデニム生地上下を着ている。

また、BMCでバイクウェア業界に参戦したブリッツワークスの青野睦社長によると、バイクウェアでもデニム上下は注目されているという。

#45 『2りんかん』本部に【FTR223おじさん】が初潜入!バイクウェアの新機軸、ファッションと安全を兼ね備えたあのライダー用ジーンズがついに全国進出!? – YouTube

こんな感じで大手バイク専門店「2りんかん」とデニム生地上下のバイクウェアをコラボ開発されている。

メンズカジュアル、作業服、バイクウェアと恐らく男性需要の比率が高く、女性需要の比率はかなり低いと考えられる。

同じ男性客でもメンズカジュアル分野でジーンズが下火になっている一方、作業服とバイクウェアではデニム生地上下が注目されていて、着用者数を伸ばしているというのは、どういう理屈なのだろうか。この逆転現象の理由に最近非常に興味がある。

もちろん、用途は異なる。

メンズカジュアル・・・・・デイリーカジュアル、余所行き(死語)

作業服・・・・・現場仕事用

バイクウェア・・・・・バイクに乗るため

だが、デイリーカジュアルと余所行き(死語)では定番型ジーンズはオシャレとは見なされないのに、作業服とバイクウェアではカッコイイと思われているというのはなぜだろうか。

明確な答えはないが、青野社長とも意見交換したが「デニム生地そのものはオシャレだと思われているのではないか。ただ、ブルージーンズというアイテムがそう見られていないのではないか」という結論になった。

まあ、正解かどうかは分からないが、当方からするとそれ以外に理由が説明できない。レギュラージーンズは着用しないが、ジージャンやデニムシャツをカジュアル&余所行き(死語)として着用している人は少なくないから、デニム生地そのものへの抵抗感はないのだろうと思う。

ジーンズ専業メーカー(死語)はこの辺りをもう少し深く考えてみてはどうだろうか。

バイクウェアは値崩れを起こしていない。そのため、高額商品が売れる。しかし、市場規模は小さく販売できる枚数は少ない。

バイクという乗り物は自動車以上に趣味用途の人がほとんどである。そのため、需要はほぼ個人需要に限定され、販売数量は大きくは伸びない。一人で50枚とか100枚とか買う人はよほどの変人である。

これと近いのが釣りウェアである。ほぼ個人需要しかない。こちらも値崩れしていないので、一部のワークマン商品がその安さで利用されているが、当方の釣り好きの知人によると「ワークマンを着て釣りに行くのは抵抗がある」とのことで全面的に受け入れられているわけではなさそうだ。

だから値崩れは両分野ともしていないが、市場規模は小さい。

BMCのような小規模メーカーにとってはバイクウェアというのは比較的取り組みやすい市場だといえる。また大手アパレルは参入メリットが少ない市場だといえる。

一方、釣りウェアは以前の紹介したダイワのように防水性・撥水性のノウハウを生かしてセレクトショップ業界へ参入し始めている。また同じく防水性・撥水性服製作のノウハウを生かして、水中用や水際用の作業服へ進出する計画のある釣りウェアメーカーもあると聞く。

なぜ、低価格の作業服へわざわざ進出したいのかというと、作業服というのは、上手くすると法人需要が見込める。極端な話、大手ゼネコンに採用が決まれば、1回で何百着・何千着の受注がある。釣り具メーカーはこの法人需要を狙っているのだろう。

戦後80年弱が経過して、どの分野も成熟化が進み、規模拡大が難しくなってきた。

そのため、今後もこのような各分野への新規参入は続くだろう。ますます、各分野ともに過当競争が強まることになりそうである。

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