電車に乗ると嫌でも目に入ってくる雑誌の中吊り広告。目に付く色で大袈裟に書かれたセンセーショナルな見出しに目を奪われて、うんざりしつつも読んでしまうというのはついこの間まで通勤時の当たり前の光景であった。しかしどうやらこれからはそんな光景は見られないようだ。朝日新聞デジタルは8月17日付で、「週刊文春」と「週刊新潮」の中吊り広告の終了を報じている。
業界トップの売り上げを誇る「週刊文春」が中吊り広告を終了を発表すると、それを追う形で「週刊新潮」も中吊り広告の終了を発表。背景には書籍の電子化や購買モデルの変化があるようだ。近年活字離れが声高に叫ばれており、ゴシップやトレンドなど、時間と共に流れゆく情報を扱う雑誌は特に厳しい状況にある。ネットニュースというスピードが早くて手軽なメディアが台頭している現在、ゴシップ誌が生存していくのは容易くない。ネットニュースやSNSの普及により情報が伝播するスピードは日に日に早まっている。雑誌一冊分の情報を集めて紙に起こしている間に、ニュースの鮮度は落ちていく。そんな現状に立ち向かうべく、「週刊文春」「週刊新潮」2誌ともに、中吊り広告を終了することで浮いたコストで電子化に力を入れていくようだ。今年3月に電子版を開始した「週刊文春」は、中吊り広告終了後の9月から電子版を宣伝するためのキャンペーンを展開する方針だ。電子版では毎週発売日の前日にスクープ記事を公開することで、情報を読者に届けるまでの時間を削減しようと努めている。一方の「週刊新潮」も同社が展開するニュースサイト「デイリー新潮」の内容の充実や宣伝の強化を進めていく。
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電車の中でまだ誰もスマートフォンに釘付けになっていなかった頃、中吊り広告は電車の中で見て気になったらすぐに駅の売店で購入できるという画期的なビジネスモデルだった。しかし通勤通学時の乗客の9割型がスマホに夢中で顔も上げない今では、中吊り広告はあまり意味を成さない。地下鉄・東京メトロの広告会社のメトロアドエージェンシーの営業担当者も「雑誌の中吊り広告は近年減っている」とコメントしている。「週刊文集」や「週刊新潮」以外にも「週刊現代」や「週刊ポスト」もここ5年で中吊りをやめている。
乗客が暇潰しに眺めるものが網棚の上に放り出されていた雑誌や新聞からスマートフォンに変化したのはつい最近のことだ。さらに電車内の広告までもが時代によって変化している。次は何が消え、何が出現するのか。通勤通学時の電車内の風景は我々の気付かぬ間に刻々と変化している。
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