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中間業者によって支えられるインフルエンサーブランドの乱立

繊維業界記者・ライター兼広報アドバイザー
南 充浩

新規参入者が絶えないのは、昔からのアパレル業界の特色だが、当方が若かった時分の90年代から2000年代半ばまでと、2015年以降では、デビューする有象無象のブランドの立ち上がりの様子は大きく変わっているように感じる。

2000年代中頃までにも読モやタレントなどいわゆる「素人ブランド」のデビューは多々あったが、必ず、業界や製品に通暁する会社や個人がサポートしていた。そのため、企画会議段階ではド素人の珍発言も多々あったと考えられるが、製品をリリースする段階や、メディアに発表する段階での珍発言や珍製品はほぼ皆無だった。

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ところが、2010年以降、特に2015年以降にデビューした素人ブランドには、そういうプロフェッショナルなサポートが無いと思われるものが増えた。

先日、合繊100%のニット(いわゆる横編み)を「モヘヤカーディガン」と表記してSNS上で問題視されたインフルエンサーブランドがあった。

昔のようにプロ(企業、個人を問わず)がサポートしていたなら、このような初歩的な誤りはなかった。

モヘヤとは、アンゴラ山羊の毛のことである。

アンゴラ山羊の毛以外の素材はモヘヤとは呼ばない。だから「合繊100%のモヘヤニット」なんて珍妙な物はこの世に存在しない。

アクリル100%のセーターやマフラーをカシミヤニットと呼ばないのと同様である。

またアクリル100%のセーターをウールニットと呼ばないのと同様である。

かつてユナイテッドアローズがカシミヤ0%の商品をカシミヤ混と表記して大問題となったことがあったが、今回の「合繊100%のモヘヤニット」はそれと同罪である。

ではどうしてこのようなことが起きてしまったのかというと、様々な状況が考えられる。基本的にこのインフルエンサーが無知だったというのは、どの状況においても変わることはないだろう。また中間業者が介在していたというのも確実だろう。

これほど無知な人間が商品を企画することはできないし、製造の手配・生産管理を行うことができたはずがない。

中間業者なしには製品作りをすることは不可能だっただろう。

考えられる状況としては

1、中間業者からのアナウンスをインフルエンサーが無視して勝手にモヘヤニットと発表した

2、中間業者が多数介在しており、それぞれの段階で伝言ゲームが行われ、モヘヤ風がいつの間にかモヘアに変わってしまった

という2つではないかと思う。

「値打ちを出すためにわざとモヘヤと書いてやろう」

という悪意はなかったと信じたい。

自身も中間業者でありながら、ブランドや工場とも密接に業務を行う山本晴邦氏は、伝言ゲームの結果だったのではないかと考えておられる。

伝言ゲーム。 | ulcloworks

タイトルは短いが、文章は長い。

個人的にお話をお聞きしたが、商品企画そのものもインフルエンサーではなく、企画会社からの持ち込みだったのではないかと類推しておられ、多少はOEM・ODMの現場に立ち会ったことがある経験から照らし合わせると、その可能性も十分にあると感じられる。

昔は、アパレルメーカーや商社など、ある程度はしっかりとした企業が読モやタレントブランドのバックについていたが、2010年以降、とりわけ2015年以降はそうではないケースが増えた。

これはSNSの普及によるインフルエンサーという人種の増殖によって、アパレル業界への参入がますますお手軽になったということだろう。

近い例でいえば、メゾン・ド・リーファーという梨花さんのブランドは、ジュンというアパレル?アパレル主体のライフスタイル企業がバックだった。

ところが、現在のインフルエンサーの独自ブランドは、背景が全く分からない。インフルエンサーと企業のコラボはあるが、インフルエンサー独自の製品は製造背景が明かされていない。

わかっているのは「ハイブランドと同じ素材を使いました~」とか「希少なナンタラ素材を使いました~」とかいうフワっとした煽り文句だけである。

今回の「モヘア」は「希少なナンタラ素材を使いました~」という煽り文句の一種だろう。

この手の煽り文句がいかに薄っぺらいかが証明されたということになる。

さて、毎日続々とお手軽参入を果たすインフルエンサーブランドも、D2Cブランドも、そろって「中間業者を排除して割安な高品質商品を」と謳っているが、専門知識がある程度備わっている少数のブランドを除くと、大半以上はド素人で中間業者がいたからこそオリジナルの商品が企画製造できたのである。

ド素人のお手軽参入は、中間業者によって支えられているといえる。

山本晴邦氏も先ほどのブログの中で

中間業者に関しては、知識の蓄積と適宜数量バランスをとって工場様と繋がっているところも含めて必要な場面がある。まして昨今のブランド乱立ムーブメントは、ある種中間業者にとっては完全なる好機である。これはブランド乱立に対する否定でも批判でも皮肉でもなく、客観的事実だ。

と述べておられる。

カネさえ支払えばどんなド素人でもオリジナル商品が作れる(売れるかどうかは別として)という現在の衣料品業界は数多くの中間業者が存在すればこそである。

こまごまとした訳の分からないインフルエンサーブランドが増えれば増えるほど、中間業者は必要不可欠になるし、上手くすれば企業規模を拡大できる中間業者も複数出てくるだろう。

現在の国内のインフルエンサーブランドやD2Cが「中間業者の排除」を謳うというのは、自己の存在を根本から否定する矛盾した行為だといえ、当方は外野からニヤニヤしながら眺めるだけである。

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