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オフプライスストアが我が国で急速に拡大しないのは当然

繊維業界記者・ライター兼広報アドバイザー
南 充浩

一応、繊維・衣料品業界の記事を書くことで何とか暮らしているが、業界の自称有識者や業界メディアが騒ぐことに対して全くピンと来ないことが多い。

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その中の一つに「オフプライスストア」がある。

2019年ごろから急速に騒がれだしたが、当方はピンと来なかった。なぜなら、存在意義が皆目わからないからだ。今も分からない。

2021年も終わって2022年が始まったわけだが、オフプライスストアの広がりは遅々としている。

やたらと推していたエラいコンサルの先生も最近はオフプライスストアについては全く触れない。プロ野球解説者でも事前の順位予想と実際の順位との違いを年末ごろには顧みて、何の要素を見誤ったのか、何を見落としていたのかを総括するのに。

今のところ、目ぼしいオフプライスストアはワールドのアンドブリッジと、ゲオのラックラック(ラックラッククリアランスマーケットから改称)の2つである。

しかし、どちらも店舗数はあまり増えていない。

アンドブリッジは全国で6店舗、ラックラックは13店舗である。

ちょうど去年の2月にオフプライスについてのブログを書いている。

この時のラックラックの店舗数は9店舗なので4店舗しか増えていないということになる。

アンドブリッジ、ラックラックともに今後も爆発的に店舗数を増やすという未来は当方には考えられない。

さて、正月のバーゲンも一段落した。

今冬のバーゲンで個人的に気になったのは、ユニクロ、ジーユーが昨年秋から値下げ幅を抑制し始めた点である。相当貪欲に利益を確保しに来ている。

若かりし頃、百貨店のメンズを教えていただいた某コンサルタントの方は「規制されているレジ袋とは違って、何の規制もされていない紙袋でさえ10円で売ろうとするその貪欲さ」と褒めておられるのだが、まさにその通りである。

とはいっても、それでもジーユーには990円に値下がりする商品があるし、ユニクロも1290円くらいまでには値下がりする。

他のブランドの1月バーゲンの残りを見ると、さらなる割引品も数多く残っている。

またネット通販では昨年夏物、一昨年秋冬物なんかを投げ売りしており、例えばアダストリアのドットエスティではシーズン持越品を1650円くらいにまで値下げして売っている。

また、夏冬のバーゲンに限らず、ファッションビル、ショッピングセンター内のブランドテナントは春、秋にも売れ残り品を値下げ販売しているし、アウトレットモールが全国にできて早20年以上が経過しており、すっかりおなじみとなっている。

ネット通販モールでもZOZO、Yahoo!ショッピング、楽天市場、Amazonなどがアウトレット代わりの投げ売り品売り場になっている。

こんな具合に、我々は年がら年中、値下げされた服が手に入りやすい環境にある。

さらに買い物慣れしている人なら、百貨店の催事場で定期的に開催されるブランド品の安売りも活用しておられることだろう。

ここまで値下げされた服がいつでも手に入る状況にあって、アウトレットストアとあまり区別ができないオフプライスストアなるモノを渇望する消費者がどれほど存在するのだろうか?

これが当方がずっとピンと来ない理由である。

エラい人たちは「アメリカでは一大市場を形成しているから」と答えるのだろうが、アメリカと我が国市場は相違点があるから必ずしも同じになるとはどうしても思えない。

クリック&コレクト、ディープラーニング、ノームコア、オムニチャネルなどの過去の業界内流行り言葉と同様に、オフプライスストアという言葉は業界の一部だけが盛り上がっていて、消費者にはほとんど浸透していない可能性があるのではないかとすら感じる。恐らくはアウトレットストアとの区別ができる人はほとんどいないだろう。

米国で流行っている・売れている物は必ず我が国でも売れるという信仰が業界内には今も根強く残っているが果たしてそうだろうか?

このオフプライスストアにせよ、ネット通販にせよ、我が国と米国では実店舗立地や社会階層による購買行動などは異なるのではないかと思う。

コロナ禍の実店舗営業停止によって我が国でも強制的にネット通販比率が高まったとはいえ、家具や雑貨、玩具・ゲーム機などに比べると衣料品のネット通販比率は低い。

業界内では米国ではもっと売れているから我が国でも売れるはずだという思い込みから、アパレル企業でもネット通販比率が高ければ高いほど優良企業であるという意味不明根拠不明の評価基準を当てはめる人がいまだにいる。

だが、米国はニューヨークの都心を除くと、広い国土に住宅地が点在しており、ちょっと買い物をするには自動車で30分くらい走るということが多い。

そうなると、ネット通販の方が便利ということになる。

一方、我が国では郊外はそういう地域も多いが、人口は圧倒的に都心の方が多く、通勤・通学の途中に商業施設がある。試着も無しに似合うか似合わないかもわからない服をネット通販で買うより、試着ができる通勤途中の実店舗で買った方が効率的だから、当然、実店舗購入の方が多くなる。

オフプライスストアにしても、これだけ低価格でしかもマシな洋服が溢れている我が国で、さらに新しい販路を求める消費者がそれほど多いはずがない。

さらに言うなら、過去からファッション好きから一定の支持を受けてきた古着という低価格商品もあるから、アウトレットと区別ができにくくわかりにくいオフプライスストアよりも、まだ古着屋の方が支持を集めやすいだろうと思う。

オフプライスが業界内の一部の期待に反してあまり急速に拡大しないのは、当然の結果だとしか思えない。

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