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アパレル業界から他業界へ転職するベテランが増えたと感じる話

繊維業界記者・ライター兼広報アドバイザー
南 充浩

アパレル業界は参入障壁が低い。参入障壁は年々低くなっており、今では無いに等しい。

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毎日、異業種の人、ド素人がどんどん新規参入してくる。しかし、長年続けることは難しい。

今年52歳を迎える当方が就職する直前にバブルは崩壊したが、90年代後半までその余韻はあった。終身雇用・年功序列はまだまだ健在だった。

ただ、その時分でも他業種に比べるとアパレル業界では終身雇用のムードは少し弱かったと記憶している。当時から怪しげな何をしているのかわからないフリーランスの人もたくさんいたし、定年を待たずに退職して業界内で転職する人も多かった。また独立起業する人もいた。

2000年以降はその風潮がかなり強まり、2008年のリーマンショック以降はさらに強まった。

今でも終身雇用は残ってはいるが、一体何割の人が定年まで残れるのか皆目見当もつかない。また会社そのものが無くなってしまうケースも増えた。会社が倒産してしまえば、いくら終身雇用をしてほしいと言ったところで、不可能である。

2000年代の転職、独立はだいたいが業界内で行われていた。アパレル業界の中で人が移動していたような感じである。

2020年コロナ禍が始まり、アパレル業界の終身雇用はさらに崩れ、転職者が相次いでいるが、コロナ禍以降の転職の傾向としては、とりわけ当方の身の周りではアパレルから他業界へ転職する人が目立つ。

20代とか30代前半の若いうちに他業界へ転職する人は昔からいた。何年間かやってみてアパレルでは割に合わないと思った人は他業界へ転職していったが、若い時分にあれこれと模索することは当然だろう。

40代以上の人はだいたいが業界内での転職、独立が多かった。それも当然で40代ならまだ10数年~20年くらいの時間が残されており、何年間かを修行にあてたとしてもまだ活躍できる期間が長い。

だが、当方もそうだが50代になると、定年までの残り時間は10年を切っており、慣れるまで・軌道に乗るまでに5年かかったとすると残りはもう5年間しかない。

これを考えると、勝手の違う他業界へ移る方がリスクが高いと考えてしまう。少なくとも当方はそう考える。

だが、コロナ禍が始まってからは40代、50歳手前のベテラン業界人から「他業界へ転職が決まりました」というお知らせが相次いで届くようになった。

残り時間はあまりないが、それでもアパレル業界に残るよりはマシという風にお考えになったのだろう。

工業資材系の会社に転職が決まった人、バイク用品チェーン店への転職が決まった人などがいる。共通するのが「今後の国内アパレル業界での見通しが立たない」というところである。

まあ、他業界では今後の展望があるのかというと、疑問に感じる部分もあるのだが、とはいえ、現場に立ち続けているベテランにとっては、今のアパレル業界では全く活路が見いだせないということらしく、その視点には当方も同意である。

「アパレル業界では上位20社が業界売上高の50%を占める」という意見がある。

この数字が正しいのかどうかはわからないが、体感的にはそれに近いと感じる。ユニクロ、しまむら、ジーユーなどを始めとする巨大企業群は確かに20社~30社くらいしかない。しかし、業界にはオッサンが一人でやっているOEM会社なんていうのもゴロゴロある。それこそ2000~2005年ごろのアパレル業界での起業独立で最も多かったのはOEM・ODM会社の設立である。

そういう有象無象の小規模な会社が2万社くらいあると、指摘する人がいる。この2万社が事実なのかどうなのかはわからないが、相当数存在することは間違いないということは体感的にわかる。

20社かどうかは別として上位の大手企業群に属していない会社が大きく成長する可能性は極端に低いと感じる。そういう中小企業では将来の展望が見えなくても当然だといえる。

そして、その上位グループでさえ、今の業績は決して盤石ではなくすぐさま崩れる「水物」であることは言うまでもないし、崩れればリストラで人員削減が行われるので安閑としてはいられない。

つい昨日、このブログの10年来の読者だという方にお会いした。

この方の経歴は、メンズアパレルで会社員として勤務した後、独立してアパレルOEM会社を設立、5年くらい前からアクセサリー類のOEMや仕入れをメインの仕事にしている。

この方のお話を伺うと

「アパレルOEMで独立しましたが、御多分に漏れずあまり儲かりませんでした。5年くらい前にひょんなことからアクセサリー類を提案してみたらそれが好評であっという間にそちらがメインになったという感じです」

とのことで、今の業界環境に対して

「たまたまアクセサリーの調達に転身しましたが、幸運にも逃げることができたと思っています」

という。

今でも一部はアパレルOEMも手掛けているが

「完全に昔のお付き合いという感じで、会社のメイン業務にするつもりはありません。アパレルOEMは利益率も低く、製造する枚数もそんなに増えないので薄利多売ならぬ薄利少売です」

とのことだった。

この方は偶然にアクセサリーに転身されたが、「何年か前に一早くアパレル業界から逃げることができたのは幸いだった」と述べておられるところに、2020年以降に他業界へ転職された40代の方々と共通する部分が垣間見える。

当方などは、たまたま大学の就職活動で洋服販売店にしか引っかからなかったので、仕方なく業界に入ったくちだが、もともと自分の意思でアパレルに新卒で入ってきた人たちは当方とは比べ物にならないほどファッションや衣料品がお好きである。そういう人たちが業界から去っていく中、たまたま業界に入った当方が50歳を越えた今でも業界の底辺の片隅にとどまっているというのは何とも皮肉に感じる。

今、どんどんと新規参入している人たちや企業群も果たして何年このアパレル業界で続けられるだろうか。かなりの高確率で5年以内には業界から去って行くことになるのではないかと思っている。

それを思うと「継続は力なり」「無事これ名馬」という言葉を、50歳を越えてしみじみと噛みしめてしまう今日この頃である。

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