資生堂150周年CMが素晴らしかった。過去から現在、そして未来までの時間軸をそれぞれの時代を反映する映像と共に表現する内容。
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個人的には、安藤サクラがオープンカーに乗っているシーンは、そのカラフルさとメイクの印象の強さで、ワクワクするビジュアルだった。
でも、ふと気づいた。このシーンは現代ではない。いわゆる日本がバブル期に差し掛かる1982年春の頃に放送されたCMのオマージュだ。その瞬間、漠然とした寂しさを感じた。
過去を振り返る映像が増えてきた
同じく、レトロな時代にタイムスリップしたもう一つがマクドナルドのCM。マックが日本に上陸し、第一号店が銀座にオープンしたのが、高度経済成長期の1970年代前半。その頃の雰囲気を現在の技術で蘇らせている。
これらのCMや、NETFLIXで配信されている「浅草キッド」や「全裸監督」など、ここ数年で昭和の頃の日本を舞台にした映像を目にすることが増えてきている。音楽も往年のシティーポップの人気が再燃している。
バブル期のキラキラが凄い
では、実際にその頃のCMはどんな感じだったのか?YouTubeにアップされている中で、コカ・コーラの映像を見てみよう。
爽やかすぎる。未来への希望に満ち溢れており、映像からは、どんどん良くなる希望しか感じない時代の輝きがほとばしってくる様だ。
本当にバブル期の日本は凄まじかった
それもそのはずで、当時 (80年代後半) の日本の経済は現在と比べても想像できないぐらい右肩上がりで、世界的に見ても、アメリカを抜き去る勢いがあった。その一つの象徴が、企業の時価総額ランキングだろう。
これを見ても分かる通り、バブル経済絶頂期の1989年 (平成元年) の頃は、企業の時価総額における世界ランキング Top 20 の過半数が日本企業、そしてTop 5 も全て日本企業という凄まじさ。日本が世界の株式時価総額の4割を占めたこともあった。(現在は5%以下)
現代で考えると、GAFAとかGAFAMとか、FANGとかMAAMAとかで表現される世界が憧れる企業の全てが日本企業でるような感じだろうか。
だったとすれば、世界のビジネスニュースは、連日「シリコンバレー速報」ではなく「東京速報」みたいな感じのコンテンツ満載だったのかもしれない。
日本が凄かった時代を象徴する6つのエピソード
その頃の状況を調べていくうちに、世界全体な視点でも日本がかなり凄い国だったことが分かるエピソードがいくつかみつかった。その中でも象徴的な5つを紹介する。
多くのテレビCMにハリウッドスターが起用されまくっていた
まずはこれ。当時のテレビCMでは、数多くの日本企業が海外ロケを行い、ハリウッドスターを積極的に出演させていた。
マイケル・ジャクソン、マドンナ、ブラット・ピット、マイケル J フォックス、ジェームス・ブラウン、ボンジョビ、スティービー・ワンダー、シュワルツネッガーなど、本国では絶対にCMに出演しないような面子がこぞって日本企業のCMに出演。
おそらくギャラはとんでもない額だったに違いない。この時代の広告代理店での仕事はかなりエキサイティングだったんだろうなー。
F1スポンサーの多くが日本企業だった
スポーツの世界を見ても、多くの日本企業がスポンサーをしていた。お金がかかるスポーツの代表的がF1。その予算は年間数百億円で、複数のスポンサーによってまかなわれる。
現在でも何社かの日本企業がF1スポンサーをしているが、その当時は桁違いにその数が多かった。その中には週刊少年ジャンプも含まれる。
そして、1990年頃のシーズンにはなんと、日本企業が所有するF1チームが3つも参戦していた。(ラルース、フットワーク、レイトンハウス)。そして、HONDA以外にもYAMAHAやSubaruなどの企業もエンジンを提供していた。
ニューヨークのビル複数が日本企業に買収されていた
その当時の日本経済の勢いを世界に知らしめたのが、三菱地所によるニューヨークのロックフェラー・センターの買収。当時のレートで約2200億円というから凄まじい。
また、同じくニューヨークの超高層ビル、エンパイア・ステート・ビルも一時期日本人オーナー所有だった。その後にドナルド・トランプ経営の企業が買い取ったらしい。
この2つのビルはアメリカの富と栄光の象徴であり、例えるなら東京タワーと六本木ヒルズを海外企業が所有するような感覚。それを日本企業が手に入れたという事実を現在は想像するのも難しい。
世界一のゴルフコースが日本企業の所有だった
日本企業が買収していたのはニューヨークのビルだけではない。カリフォルニア州のモントレーにある名門ゴルフ場、ペブルビーチも住友銀行系の企業が経営会社を約1200億円で買収し、所有していた。
このゴルフコースは、太平洋に面しており、高級リゾート地としても有名。これまで全米オープンが5回開催されており、世界一のゴルフコースと呼ぶ人も多い。
30分のクイズ番組で総額100万円の賞品が「毎日」提供されていた
現在でもクイズ番組で優勝すると豪華な賞品や賞金が与えられる。しかし、1981年から1993年まで放送されていた「100万円クイズハンター」では、午前中の30分の放送にも関わらず、優勝賞品のハワイ旅行6日間をはじめ、多くの豪華賞品がスポンサーから提供されていた。それも月曜日から金曜日の毎日。ということは、単純に計算しても番組予算は最低でも2,000万円は掛かる。
他に賞品は、価格がはっきりと表示された貴金属類の高額賞品や温泉宿泊券・食事券などがあり、一般参加者が横取りできるシステムを通じて、かなりエグい骨肉の争いが繰り広げられていた。好景気と物質主義の象徴のような番組だった。
SONY がスティーブ・ジョブズの憧れの存在だった
スティーブ・ジョブズがAppleを創業した頃、彼にとっての一番の憧れ的存在が SONY だっというのは有名な話。その洗練されたプロダクトのデザインから、イノベーティブなアプローチまで、彼にとって日本企業の SONY に近づくことが最初の目標でもあった。
iPod は明らかにソニーウォークマンにインスパイアされているし、初期の頃の Mac のデザインを依頼した際にも「もしSONYがパソコンを作ったとしたら?」がデザインテーマだったと言われる。
世界を舞台に戦っていたジャパニーズビジネスマン
こんな感じで日本を世界一の経済大国に成長させたのは、世界中を飛び回り、各国で24時間戦っていた日本のビジネスマンたちの存在だろう。
もちろん現代でも頑張っている人はたくさんいると思うが、このエナジードリンクのCM動画を見ると、当時は「ブラック企業」という言葉すら思いつかないほどにハードワークだったんだろうと想像できる。
なぜ日本企業は勢いを失ってきているのか
こんな凄まじい勢いで世界の注目を集めていた日本企業も、バブル崩壊後からどんどん守りの姿勢に入り始め、その後失われた20年、30年と呼ばれる時代に突入した。
その理由はいくつか考えられるが、もしかしたら社内にイノベーターが居なくなってきている。もしくは、イノベーターを育てるメソッドが枯渇してきているからではないか。そもそも、イノベーションを経験した世代がリタイアしてしまったとも考えられる。
下記の図はドリーム・インキュベータ執行役員・未明孝之氏作成によるものをベースにしている。これを見ると、時代の変化と共に、日本企業組織における意識の変化と、その課題が理解できる。
「良いものを作って営業をガンガン」が通用しない
日本企業の組織的な推移に加え、もう一つの時代的に要因。ものづくりを中心に、良いものを作って愚直に売りまくる20世紀型のビジネスモデルの終焉がきている。21世紀になり、よりユーザーニーズを理解し、デザインにこだわり、ブランドとしてのポジションも考える、総合的な戦略が求められている。
そんな中で、多くの日本企業は過去の成功体験から抜けきれず、いまだに作ることと、売ることにどうしても注力しがちなのかもしれない。
日本企業からまたイノベーションを生み出すために
時代が大きく変化したため、もちろん高度成長期やバブル期のような状況を期待するのは難しいかもしれないが、やはりこのまま日本経済が衰退していくのは勿体無い。まだまだ素晴らしい技術はあるし、人材のクオリティーも世界トップレベルだろう。
ただ、ユーザー視点が欠けていたり、マーケティング戦略に乏しかったり、デジタルを通じたグローバルブランド構築への正しい手法が提供されていない事が原因で、もったいない状態が多く見られる。
我々 btrax としても、どうにかこの状況を打破するために尽力できればと、日々取り組んでいる。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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