PHOTO:SEVENTIE TWO
未上場企業であるシャネル社(Chanel Limited)の2021年12月通期決算が5月24日に発表された。このところ上場を意識しているのか、詳細な決算数字の発表を行っているシャネル社だが、今回の数字は、コロナ禍に苦しんだ2020年12月期との比較とは言え、驚異的な数字をマークしている。以下1ドル=127円で換算。
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・売上高 :156億3900万ドル(前年比+54.7%、約1兆9861億円)
・営業利益 :54億6100万ドル(同+170.6%=約2.7倍、約6935億円)
・当期純利益 :40億2600万ドル(同+194.7%=約2.9倍、約5113億円)
コロナ禍以前の2019年12月決算との比較でも、売上高は+27.4%、営業利益は+57.5%、純利益+68.5%という高水準の伸び率である。
今回の決算を地域別に見ると、欧州が前年比40.1%増の40億4200万ドル(約5133億円)、南北アメリカは同79.5%増の35億2900万ドル(約4481億円)、アジア太平洋地域は同53.3%の80億6800万ドル(約1兆246億円)になっている。従来のように中国市場の大伸長でアジア太平洋地区が全体の業績に貢献するというものでもなく、3大地域が大きく売り上げを伸ばしているのだ。販売個数の発表がないから、確かなことは言えないが、今回の爆発的とも言える売り上げ、利益の伸びは「値上げ」によるものだろう。仮に販売個数が同じで50%の値上げを行ったとすれば、売り上げは50%増しだが、粗利益は2倍になる。経費が前年並みだとすると営業利益は2倍以上になるということだ。こういう理由以外には、この爆発的な利益上昇は説明できない。
値上げには原材料価格や人件費の高騰などそれなりの理由があるはずだが、消費者から「ちょっと儲け過ぎではないか。むしろ値下げするべきだ」という声は上がってこない。消費者は値上げされても買ってくれる。まさにラグジュアリーブランドのブランド力というものであろう。シャネル社の代弁をすれば、「我々の商品は、単なる商品ではなく『文化』なのだ。文化は受け継がれ生き続けなければならない。しかし、フランス政府が我々を免税や助成金で助けてくれるわけではない。我々の商品を買ってくれる顧客によってこそ我々は守られ、我々は自らの手で生き続けるために様々な危機に備えて、蓄えなければならない」。
これが「文化」であるラグジュアリーブランドの存在原理である。そして値上げが消費者によって「NO!」と言われた時、その命は尽きるのである。
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