サッカー襟付きユニフォームが復権の兆し ストリートシーンではヴィンテージユニが人気急上昇
2022-23シーズンのレアル・マドリードとアーセナルのユニフォーム
Image by: adidas
2022-23シーズンのレアル・マドリードとアーセナルのユニフォーム
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サッカー襟付きユニフォームが復権の兆し ストリートシーンではヴィンテージユニが人気急上昇
2022-23シーズンのレアル・マドリードとアーセナルのユニフォーム
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2000年代以降、サッカーユニフォームの主要スタイルと言えば"襟なし"だが、昨今のスポーツトレンドと古着リバイバルの流れからヴィンテージユニフォームの人気が急騰。"襟付き"にも目が向けられるようになり、現行モデルでも"襟付き"が再燃しつつある。特に、「アディダス(adidas)」がサプライヤー契約を結ぶ「レアル・マドリード」「アーセナル」「マンチェスター・ユナイテッド」「ユヴェントス」「バイエルン・ミュンヘン」の5大クラブのうち、レアル・マドリードとアーセナル、噂段階ではあるがマンチェスター・ユナイテッドの3クラブは、2022-23シーズンのユニフォームが"襟付き"となっている。
ヴィンテージユニフォームの人気と現行モデルの襟付き増加の関係性は、まさに"卵が先か鶏が先か"だが、相乗効果を発揮していることは確かだ。そこで、本稿では"襟付き"の歴史を振り返りながら、ファッションシーンで起き始めている地殻変動を紹介したい。なお、ユニフォームはホーム、アウェイ、3rd、4thで様相が異なることが多いため、基本的にホームユニフォームを前提に話を進める。(文:Riku Ogawa)
100年以上の歴史がある襟付きユニフォーム
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そもそも、サッカーは1840年代にイングランドで誕生したスポーツだが、FIFA(国際サッカー連盟)から"世界最古のフットボールクラブ"に認定されている1857年創設のイングランドのシェフィールドFCの初期ユニフォームや、1880年代の同国代表のユニフォームには襟付きが採用されていた。なぜ襟付きとなったかは諸説あるが、19世紀はダブルカラーやウイングカラーをはじめ、グラッドストンカラー(立ち襟の1種)、オールラウンドカラー(極端に高い立ち襟)、シェイクスピアカラー(朝顔形に広がった立ち襟)など、ファッションの一種として襟が最も多様化した時代といわれており、"紳士のスポーツ"であるフットボールのユニフォームがこの流れを汲んだのは何ら不思議ではない。また、1950~1960年代に"王様"ことペレ(Pele)がブラジル代表や所属先のサントスFCで着用していたユニフォームも大抵が襟付きであったりと、フットボールシーンにおける襟付きユニフォームは100年以上もの歴史を持つのだが、世界的な流行となったのは1990年代から2000年代初期にかけてである。
1992年にイングランドでプレミアリーグが発足すると、10シーズンぶりに襟付きを採用したマンチェスター・ユナイテッドをはじめ、各クラブがレプリカユニフォームの販促に力を入れるようになったことからデザイン性が飛躍的に向上。これと並行して、欧州No.1クラブを決めるカップ戦「UEFAチャンピオンズリーグ(現CL、旧UEFAチャンピオンズカップ)」と「FIFAワールドカップ(W杯)」で活躍した強豪クラブ・代表が軒並み襟付きを着用していたのが大きく影響している。「CL」の1988-89シーズンと1989-90シーズンの2連覇および1993-94シーズンの覇者ACミラン、1991-92シーズンの王者バルセロナ、1997-98シーズンから5シーズンの間に3度チャンピオンとなったレアル・マドリード、1998-99シーズンの覇者マンチェスター・ユナイテッドは、いずれも襟付きでビッグイヤー(トロフィーの意)を掲げていた。一方「W杯」でも、ロベルト・バッジョ(Roberto Baggio)がPKを外して優勝を逃したシーンが印象的な「1994年アメリカ大会」のイタリア代表や、自国開催で初優勝を果たした「1998年フランス大会」のフランス代表が襟付きを着用。特に「1998年フランス大会」では流行が如実に現れており、我らが日本代表をはじめ、出場32ヶ国中24ヶ国が襟付きユニフォームを採用していたのだ。
機能性・計量性重視で主要スタイルが"襟なし"に
しかし、2000年代に入るとこのトレンドは急速に鳴りを潜める。最も大きい要因が、ユニフォームに機能性を重視したこと、そして新素材の開発が挙げられる。1990年代まではユニフォームに今ほどの機能性が求められず、デザイン的に襟があしらわれたオーバーサイズが主流だったが、2000年代以降は「動きやすさ」「掴まれにくさ」といった機能性や軽量化の観点からジャストフィットなシルエットに変化。技術革新によりデザイン性やファッション性は二の次となったことで襟は存在意義を失い、"襟無し"の丸首やVネックが覇権を握るようになったのだ。また、この頃からユニフォームのサプライヤーを務める「アディダス(adidas)」や「ナイキ(NIKE)」、「プーマ(PUMA)」などのブランドが、相次いでベースユニフォームの統一を図るようになったのも作用している。
実際、2000年代の「CL」と「W杯」に出場したクラブ・代表のユニフォームを調べると、「CL」では2000-01シーズンから10シーズンの間に優勝したクラブのうち、襟付きを着用していたのは2001-02シーズンのレアル・マドリードと2003-04シーズンのFCポルトのみ。「W杯」でも、「1998年フランス大会」は75%の着用率を誇っていたが、「2002年日韓大会」では出場32カ国中4カ国と数が激減し、「2006年ドイツ大会」はイングランド代表とオランダ代表の2カ国にまで落ち込んでいる。
だが、"流行は20年周期で繰り返す"と言うように、襟付きユニフォームがここ数シーズンで復権の兆しを見せている。2019年の南米王者を決める大会「コパ・アメリカ」でブラジル代表が襟付きユニフォームを復活させたことを皮切りに(現在は襟無しに)、イングランド・プレミアリーグの強豪リヴァプールも2021-22シーズンのアウェイユニフォームで襟付きのデザインを披露し、欧州フットボール最大の祭典「ユーロ2020(UEFA EURO 2020)」では出場24ヶ国中6ヶ国が襟付きユニフォームを採用。さらに、2022-23シーズンでは「アディダス」がその勢いをより強めるかのように、サプライヤーを結ぶクラブのユニフォームを相次いで襟付きにしている。また、国内に目を向けても横浜F・マリノスが2021シーズンと2022シーズンのユニフォームを襟付きとしたほか、浦和レッドダイヤモンズも2022シーズンは10年ぶりに襟付きを着用。間違いなく国内外でトレンド化しつつあるのだ。
ファッションシーンで人気急騰のヴィンテージユニフォーム
そして、この襟付きのトレンドがスポーツ&古着リバイバルのストリートシーンにも波及し、ファッションアイテムの一つとして取り入れられるようになっているのが散見される。といっても、人気が急騰しているのは現行モデルではなく1990年代を中心としたヴィンテージユニフォームだ。サッカーに馴染みがない人にも興味を持ってもらえるように「普段着として取り入れる余地があること」を意識したアイテムを揃えているというフットボール系のセレクトショップ「ベーネ(BENE)」では、数万円のヴィンテージユニフォームがたちまちソールドアウトとなり、この半年だけでも伊勢丹新宿メンズ館や日本橋高島屋、名古屋パルコなどにポップアップショップを出店。また、東京・押上のフットボールショップ「fcFA」では古着屋店員らファッション業界人が連日のように訪れ、フリマアプリ「メルカリ」をはじめとするリセール市場でも取引は活発だ。加えて、各クラブ・各国のヴィンテージユニフォームの復刻を専門とする公式ブランド「スコアドロー(Score Draw)」が人気を見せ、ニューヨークを拠点にUSストリートシーンを牽引する存在の「エメ レオン ドレ(Aimé Leon Dore)」は、「ニューバランス(New Balance)」との最新コラボコレクションでUKフットボールシーンにオマージュを捧げ、襟付きのロングスリーブシャツを発表した。MLBシャツやNBAジャージーのように、フットボールシャツがファッションアイテムとしての立場を築くのはそう遠くない未来だろう。
カタールW杯のユニフォームにも注目集まる
なんといっても、今年は11月に世界最大級のスポーツの祭典「2022 FIFAワールドカップ カタール大会」が控えている。現段階ではフランス代表やオランダ代表が襟付きを着用しているが、どの国も開催にあわせて新ユニフォームを仕込んでいるに違いない。出場32ヶ国のうち何ヶ国が襟付きを採用するのか見ものだ。もちろん、我らが日本代表も例年通りであれば今後数ヶ月以内に新ユニフォームを発表するはずだが、現段階では噂やリーク情報すら出回っていない。オブラートに包まずに言うと、2019年から採用している現行モデルは「アディダス」と日本サッカー協会(JFA)がサプライヤー契約を締結した1999年以降に発表された全12モデルの中で最も着用期間が長いが(通常は2年周期)、スタジアムでの着用率やSNSでの反応を見る限り支持率は高くないだろう。ユニフォームは勝率をも左右すると言われているだけに、筆者個人としては、2001年以来約20年ぶりの襟付きに期待したいがはたして。
2022-23シーズンのレアル・マドリードとアーセナルのユニフォーム
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ダヴィド・アラバ
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ダヴィド・アラバ
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カリム・ベンゼマ
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エミール・スミス=ロウ
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ガブリエル・マルティネッリ
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ガブリエル・マルティネッリ
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