CLOSETtoCLOSET
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服を循環させて“クローゼットをアップデートさせる”ポップアップショップ「CLOSETtoCLOSET」とは?
近年、ファッションと切り離せなくなっているキーワードが「サステナブル」だ。様々なファッションブランドがそれを謳ったアイテムを出しており、企業として環境にどのようにコミットし、社会的な課題に向き合っているのかが評価される世の中になってきている。
また,消費者にも同様の視点をもってファッションを楽しむ人が増えていることから、「サステナブル」な取り組みをしているショップやイベントも多く見られるようになった。そうした動きの中でも異彩を放っているのが「CLOSETtoCLOSET」だ。
「CLOSETtoCLOSET」は、今持っている不要な洋服を3着持参すれば、代わりに会場から3着を持って帰れるという古着のポップアップショップ(事前予約で3,000円支払うことが参加条件)。2019年にenegy closet代表・三和沙友里さんが立ち上げたプロジェクトで、これまでに中目黒や渋谷、千駄ヶ谷など、都内各所のレンタルスペースで開催してきた。月1回の開催で、累計の開催回数は30回以上にのぼるという。
今回、三和さんにプロジェクト開催の経緯や、活動内容、これからの展望について、話を聞いた。
大好きな“クタクタの古着”にスポットライトを当てる場所を作りたかった
三和さんが「CLOSETtoCLOSET」をスタートさせたきっかけは大学時代にさかのぼる。 「小さい頃から服が好きで、学生時代にバイトをしてお金を貯めて洋服や古着をよく買っていたんです。大学時代に、服のことについて自分で勉強していたら、”服の大量廃棄”が起きていることを知って衝撃を受けました。私自身が、古着の中でも“着古されてクタクタになった服”が大好き。ただそういう服は、どんどん捨てられている。そういう服にこそ出会いたいのに、なかなか出会う場所がない。そこで、そういった服にスポットライトを当てるようなプロジェクトを立ち上げようと思ったんです」(三和さん)。
大学に入った時から構想は漠然とあったが、事業を立ち上げようと決めたのは大学3年生の時。ただ、既存の古着屋を立ち上げるのには違和感があったという。
「どうしたら服が捨てられずに大切にされて、洋服の循環を作れるんだろうって考えていたんです。そこで洋服単体を売り買いするのではなく、洋服を交換して“クローゼット作り”をするサービスを思いつきました。『CLOSETtoCLOSET』では、洋服を手放すタイミングと、洋服を受け入れるタイミングを同時に行えるので、クローゼットがアップグレードされます」
「そして、持ち帰り点数を3着にすることによって、1~2着は自分が安心して着られるものを選んでも、3着目には遊びが生まれると思ったんです。新しいファッションに挑戦するいい機会にしていただきたいと思っています」
預かった服は布1枚も捨てずに再利用する
筆者も取材当日、参加費3,000円を支払って「CLOSETtoCLOSET」に参加。着古してお尻の部分に穴が空いたデニムを含む、3アイテムを持ち込んでみた。正直、破れているデニムを持ち込むのは気がひけたが、三和さんいわく、全然OKとのこと。
「破れている物でも大丈夫です。その破れや汚れをファッションとして楽しまれる方がいるので、ぜひ気軽に持ち込んでください。お客様が『着ないかもな』って思った服に、どうしたらもう一度スポットライトが当たるのかを考えるのが私たちの仕事です 」と三和さん。
当日は、受付で参加費を支払ったことを証明するQRコードを見せて、カゴに3着入れるだけ。あとは、会場から気に入ったアイテムを探していく。想像していたよりもアイテムの量が豊富で驚いた。合計で400〜500点ほどのアイテムが並んでいるという。店内でアイテムを見ている間にも、新しいお客さんが来て、新しい古着が持ち込まれていく。
持ち込まれた服は、その場で検品をされ、問題のなかったアイテムは、その場で店頭に並べられる。運が良いと自分が持ち込んだ服を、隣にいたお客さんが気に入って持ち帰るのを見ることができるという。
また、検品をした結果、メンテナンスをすれば着られる状態と判断された洋服は、メンテナンスをしてから店頭に並べられる。最後に、そのままの状態では次に着る人が見つからないと思われるもの、または一部汚れや劣化が目立つアイテムは、リメイクをするという。
「お預りした服は最後まで布一切れも捨てていません。リメイクアーティストに服をアレンジしてもらったり、細部のハギレを使ってアクセサリーなどに生まれ変わらせています」(三和さん)。
店内のアイテムはジャンル分けせずに並べているという。「あえてカテゴリーを作らずに並べています。そうすることで、自分の普段行かないような店にあるアイテムに手を触れてみたりすることができます。また、探さないと見つからないものもあるので、宝探しのような感覚で洋服を楽しめると思います。1〜2時間くらい、ゆっくりアイテムを選ばれる方もいますよ。コーディネーターがいるので、アイテム選びに悩んだら気軽に相談してください! 着こなしが想像つきにくいアイテムは、コーデをご提案します」と三和さん。
筆者もコーディネーターと話しながら洋服選びを行った。普段着ないような色やアイテムを提案するようにしてもらい、新しい発見があった。会話をしながらアイテムを選ぶことで、挑戦するハードルが下がって、いろいろなアイテムを試着したことは新鮮な体験だった。
オフライン開催にこだわった理由とは?
「CLOSETtoCLOSET」はSNS告知で集客しているため、1番多い客層は20代だという。ただ、親子や夫婦で訪れる方もいて、下は高校生から上は70代の方まで幅広いのだとか。
来店する方はエシカルな意識が高い人が多いのだろうか? それに対して三和さんは「環境を意識している方というよりも、このポップアップショップ自体が楽しいから来ている方がほとんどだと思います。『値札がない古着屋、楽しいな』とか、お財布の心配をせずに洋服選びができることを面白がってくださる方など。たしかに、世の中的にエシカルな雰囲気は高まっていて、そういったことに興味のある方が自発的にブログやSNSで告知してくれていることもあります。また年齢層が高い方にとっては、『着ない服が多いけど手放せない』という悩みもあって、それを解決するための手段として利用されたりもしていますね」と話してくれた。
それでは、現代ではオンラインでも洋服のやりとりはできる中、三和さんがオフラインでやることにこだわった理由はどこにあるのだろうか?
「自分が一番魅力的だと感じている“着古された服の良さ”って触ってみないとわからないんです。古着をやりとりするECサイトもあると思うんですが、それでは評価されないであろう服にこそ、スポットが当たる場所を作りたかった。触ってみて、実際に見てから持って帰るかどうか決めて欲しいので、コロナ禍でも、来場人数を減らしたり感染対策をするなどできることをして、絶対にオフラインで開催することにこだわってきました」
また、「CLOSETtoCLOSET」は事業としても持続可能なのだそうだ。「洋服の原価が0円なので、在庫のリスクもありません。在庫は自作の移動車を使って搬出入を行い、千葉のアトリエにて保管しております。参加費3,000円でもビジネスとしても成り立つように設計しています。このポップアップショップをやっている時間が一番楽しいので、やり続けたい。だからこそ、“持続可能な経営方針”をとっています。備品もできるだけ再利用できるものを使ったり。店舗も持たないというのもそのためです」(三和さん)。
「CLOSETtoCLOSET」の今後の展開は?
毎月のポップアップショップでは、入場チケットが売り切れする回もあるくらい好評の「CLOSETtoCLOSET」。今まではコロナ禍ということから地方開催は見送ってきたが、今後は地方での開催も予定しているという。「渋谷区以外でも開催を増やしていきたいです。お客様や商業施設から『地方開催してほしい』という声も増えてきたので、秋には関西や広島・岡山あたりで開催したいと考えています」と三和さん。
また、三和さんが代表を務める「energy closet」では、”服を循環させる”をコンセプトにしており、今後は“アップサイクル品”に力を入れていきたいとも意気込みを語る。
「服をリメイクしている時に細かい布が出てくるので、それを使って“アップサイクル品”を作っています。『upHAND』というブランド名をつけて、クッションカバーやマスク掛け、エコバッグ、ランチョンマット等を作って売っています。古着を何着か組み合わせて作っているので、それぞれが1点物です」と三和さん。「upHAND」のアイテムは、専用サイトで販売されているほか、千駄ヶ谷のアパレルメーカー「nappalm」の店舗で、試験的に販売しているとのこと。
実は、2000年代後半から、欧米では「ファッションスワップ」という、いらなくなった衣類を持ち寄って交換する活動が盛んになっている。日本でも2000年代半ば以降、個人やNGO、企業などによって不定期で開催されており、「ACROSS」の書籍でも取り上げたが、まさに、今回取材した「CLOSETtoCLOSET」の前史ともいえる動きといえそうだ。
インタビュー時に三和さんは「このポップアップショップに使う時間が一番楽しい」と終始言っていたのが印象に残った。「サステナブル」な行為は、地球を守らなくてはいけないという“守り”の姿勢になりがちだが、「CLOSETtoCLOSET」のような形なら、「サステナブル」という目的以前に、楽しんで積極的に取り組めると感じた。
「服を循環させる」を軸に、楽しみながら魅力的なサービスを生み出していこうとしている同社の取り組みには、「SDGs」を大きく前進させるためのヒントが詰まっているのではなかろうか。
【取材・文=フリーライター・エディター/佐々木隆宣 +「ACROSS」編集室】
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