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消えゆくメンズDCブランド群

消えゆくメンズDCブランド群

繊維業界記者・ライター兼広報アドバイザー
南 充浩

猛暑日が続いている。

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猛暑日が続くということは自分の着用でいうと、吸水速乾Tシャツが続くということになる。

一昨年にジーユーで買った合繊100%の吸水速乾Tシャツが5枚あり、これを毎日1枚ずつ着回し、残り2日をユニクロのエアリズムコットンオーバーサイズTシャツを着回すという1週間コーディネイトである。

特に猛暑日を想定して洋服を買うとなると、汗っかきの当方は、トップスは吸水速乾商品一択である。そして値段と品質と見映えのバランスを考えるとユニクロかジーユーしかない。あと差し込むとするとワークマンの商品くらいである。

このクソ暑いのに、汗っかきの当方としては綿100%のTシャツなどボトボトになりすぎて、小一時間のランニングには使えても仕事として終日外回りに着用することは気が進まない。

今回は、メンズカジュアル衣料の一人の消費者として考えたい。

メンズ衣料はカジュアルにしろビジネスにしろ、レディースと比べるとアイテムの選択肢が少ない。その上に半袖のTシャツなんてどのブランドで買っても大きく見映えは変わらない。(よほど特徴的なデザインの商品以外は)

おまけに、当方の老化の進行なのか、それとも世間一般の気風に同調しているのか今一つ判然としないが、吸水速乾に代表される機能性を重視してしまう。若い頃のように「風合いの良さや面白味はあるが取扱いのめんどくさい素材でできた服」には「買う価値」を見出せなくなった。

そして、買うための資金力を加味すると、どうしてもメンズカジュアル、一部のビジネスウェアも含んでユニクロとジーユーをベースに据えざるを得ない。実際に、各商業施設を見ると、ユニクロかジーユー、もしくは両方を導入することが基本となってしまっている。

今回は物凄くローカルな話になる。

当方は、大阪市内の天王寺によく行く。ほぼ毎日いると言っても過言ではない。

もっぱら、あべのキューズモールでユニクロの値下げ品とジーユーの値下げ品、たまに3階のビックカメラでガンプラを買う。

しかし、キューズモールができる以前は、ファッションビルの天王寺MIOでよく買い物をしていた。JR東日本がルミネとアトレを運営しているのに対して、JR西日本はルクアとこのMIOを運営している。

MIOはルクアの開業からはるか前の95年に開業した。この当時、天王寺は近鉄百貨店阿倍野本店くらいしかまともな大型商業施設はなかった。

1962年に開業した天王寺ステーションデパート(現MIOプラザ館)はあったが、腐ったような古い店ばかりで、80年代後半から90年代前半にかけての買い物ルートからは外れていた。

そんな中、95年に当時としてはほぼ最新の人気ブランドがそろう駅直結のファッションビルとしてMIOがオープンした。

25歳当時の自分は、すでに衣料品販売の仕事に就いていたので、興味も手伝ってMIOで買い物をするようになった。

5階はメンズフロアである。メンズビギやテットオム、アトリエサブ、コムサデモードなどDCブランドの流れを汲むブランドがラインナップされていた。レディースフロアにもDCブランドの流れを汲むブランドが多数テナント入店していた。

この95年時点では、まだDCブランドブームの余波があった。

安いスーパーの不格好な服か、DCブランドの流れを汲む高いファッション衣料か、選択肢はその二つしかなかった時代である。

しかし、時代が進むとDCブランドを中心としたテナントラインナップも魅力が無くなるとともに、いくつかのDCブランドは経営破綻して消えて行った。

2010年代になるとキューズモールが完成し、広大なユニクロ、アダストリア、ウィゴーなどの低価格SPA型ブランドが集積され、当方の買い物の場もそちらに移って行った。途中からジーユーもオープンした。

先日、久しぶりにMIOの5階メンズフロアに立ち寄った。

すると、ほとんどが改装のため閉鎖されており、営業しているのはオンリー、センスオブプレイス、雑貨店の3店舗だけで、オンリーはいわずとしれたスーパースーツストアからの屋号変更をした値ごろスーツ店、センスオブプレスはアーバンリサーチの低価格業態で、プラザ館2階からこちらに移ってきた。

どちらも低価格衣料に属するがこの2店舗以外のこれまであったメソッドやレイジブルーまで閉店してしまったというわけである。

そして、エスカレーター登り口には「ジーユー 今秋オープン」という看板が立っていた。

サイトのフロアマップでは表示されていないが、現地のフロアマップではセンスオブプレイスの隣に5階フロア3分の1程度の広さでジーユーが入店することが表示されている。

今秋オープンなので9月か10月のどこかでオープンするのだろう。

残り3分の1のテナントラインナップはまだ表示されていないが、5階メンズフロアはスーツはオンリー、カジュアルはセンスオブプレイスとジーユー。この3店舗でフロアの3分の2を占めるという低価格衣料をメインとした売り場に変わるということになる。

歩いて3分の距離にあるキューズモールにもジーユーがあるのに、ここにまたジーユーを誘致するとはどれほど「売れそうなテナント」が他に存在しないのかということを証明している。

そして、DCブランドの栄華はすっかり過去の物となってしまったということがわかる。

大手セレクトショップの誘致という手も考えられたのだろうが、恐らくは近隣のHOOPやANDへの出店がすでに終わっているのでそれも不可能だったのだろう。

とすると、残された手はジーユーの誘致しかなかったということではないかと推測する。

なんばシティの地下二階メンズフロアがユニクロとABCマートとドラッグストアになってしまい、MIOメンズフロアはセンスオブプレイスとジーユーになってしまう。

かつてのDCブランドや大手総合アパレル企業のメンズブランドがどれほど今の男性消費者に興味を持たれなくなったかが如実に表れている。

なんばパークスにそれが集積されているというコメントをいただいたことがあるが、そのなんばパークスは奥まった場所ということもあり、駅ターミナルほど大勢の人数が集まるという性格の施設ではない。

平日の昼間も夕方も覗いてみると、それほどの客入りではない。

土日、祝日にどれくらい人を集められるかがカギになるという施設である。

そこにある程度は集積されているとはいえ、やはり「目玉の人気ブランド」という扱いではないし、世間の消費者はそうは見なしていないといえるのではないだろうか。

90年代後半から2000年半ばにかけて、自分がよく買った天王寺MIO5階のメンズフロアの変貌に時代の趨勢を感じさせられた一日となった。

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