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「伝統の〇〇生地」も開発された当時は機能性素材だったという話

MITSUHIRO MINAMI

「伝統の〇〇生地」も開発された当時は機能性素材だったという話

MITSUHIRO MINAMI
繊維業界記者・ライター兼広報アドバイザー
南 充浩

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これだけ機能性素材を使った服を着用していると、もう単なる綿100%とかウール100%とかの服には戻れない。それが分厚くて硬くて重い素材なら尚更着用する気にもならなくなる。

特にそういう重苦しい生地を使った細身の服は絶対にアウトである。体中が鬱血しそうなほど苦しい。

やっぱりストレッチ混のジーンズは穿いていて楽だし、ダウンベストは軽くて暖かい。

ウール100%の重くて分厚いメルトンコートよりも中綿入りのウール生地コートの方が軽くて楽である。

これは恐らく、消費者のマス層に共通した嗜好になっているだろうから、ある程度の数量を売りたければそういう機能性素材の使用は不可欠だと見ている。

ワークマンが好評なのは低価格が理由だけではない。低価格なのに機能性が高いからである。あとはデザインとかシルエットとかサイズ感だとかそういうことになるが、その辺りは改良の余地をまだまだ残しているだろう。

こういうことを書くと、「本物を愛好する人」とか「本物の生地を製造し続けている人」から反論が来ることがある。それはそれで仕方がない。お互い言論の自由がある。

そして、反論する人の気持ちもわからないではない。当方もそういう不便な本物の生地が好きだからだ。着用したいとは思わないだけで、生地を眺めるのは好きだし、その生地で作られた衣料品を眺めるのも好きである。着用したいとは思わないだけである。

あと、たまに分厚くて硬い綿100%デニム生地の良さを説く人とか、バブアーのオイルドコットンの良さを説く人とかに巡り合うことがある。

その気持ちもわかる。そういう製品を見るのは本当に当方も好きである。ただし着用したいとは思わないというだけのことである。

で、つらつら考えたのだが、デニム生地にせよオイルドコットンにせよ、その当時は機能性素材だったのではないかということである。

現代だと「本物の云々」とか「伝統の云々」とか言われているが、作り始められた時代にそんなことが意識されていたとは到底思えない。

その当時に存在する材質だけで機能性を追求した結果として生産されるようになったということではないか。

そもそもジーンズは炭鉱夫向けの作業ズボンから発展している。

要はワーキングユニフォームであり、現在、自重堂やジーベックなどが作っている服と同じである。その当時は機能性ポリエステルなんていう合成繊維はなかったから、頑丈さを追求した結果、分厚い綿織物に行き着いただけであり、インディゴ染料による染色もオシャレ云々というよりは虫よけ機能を期待してのことだったとされている。

現在なら耐久性のある機能性合繊に虫よけ加工を施したワーキングユニフォームといえるだろう。当方ならそこにストレッチ性と吸水速乾性を付け加えてほしいところである。

オイルドコットンも同様にいわゆるレインコート的な機能を期待されていた。防水素材なんて存在しないから綿布に水をはじくようにオイルを塗布したわけである。

日本でも水をはじくように柿渋を塗ったりしていた。

現在なら防水性のあるコートとか防水透湿性のあるゴアテックス使いのコートで事足りてしまう。防水性だけでよければユニクロのブロックテックやワークマンのイージスシリーズでも十分である。以前も書いたが、2018年に台風の大雨の中、出歩いてもブロックテックコートは内側に浸水しなかったほどである。いっそのことバブアーもゴアテックス使いに切り替えてはどうかとすら思っている。

全ての素材がそうであるは思わない。特にフォーマルウェアに使われるような素材はそうでもないだろうが、特にワーキング、ミリタリー、スポーツに起源を持つ衣料品に使われている素材はすべてその当時の機能性素材だったといえる。

ワーキング、ミリタリー、スポーツは激しく体を動かし汗を大量にかく活動であるため、衣料品に機能性は必要不可欠となる。逆に機能性の全くない衣料品を着てこの分野で活動するのは自殺行為にも等しい。

以前、マッキントッシュ(三陽商会のライセンス生産ではない方)のゴム引きコートを愛用している人のブログを拝読したことがある。そのブログでは「不便で着用回数も少ないが愛着があって毎年何回か着用し続けている」と正直に書かれてあった。

読むと「透湿性が無いから梅雨時以降は暑くて蒸れるし、すぐに袖口は皮脂で変色するし、ゴムは剝がれやすく定期的な修理が必要となり修理費用も高い」と書かれてあった。

当方なら耐えられないが、愛好家というのはそんなもんだろう。それが服であるだけで、刀剣だってなんだってわけのわからない補修や修理は必要になり、その費用は恐ろしく高い。

当方が高いガンプラを買うのと、不便極まりないマッキントッシュのコートを維持し続けるというのは、道楽という点においては同じである。

この服を着用し維持し続けるのは完全なる道楽だといえる。

しかし、このゴム引き生地も開発された当時は機能性を目的とされていた。だが、現在だと防水透湿性を重視したいならゴアテックスを使えばいいし、防水機能だけならユニクロのブロックテックあたりで事足りてしまう。

何が言いたいのかというと「本物の〇〇素材」を完全否定する気はないし、生産自体をやめてしまえとも思わない。ただ、これは少数の愛好家とかマニア向けと割り切って生産した方がよいのではないかと思っている。縫製にせよ生地にせよ、ある程度の生産ロット数は必要で、1枚から縫います・1メートルから織りますというのは現在の機械設備ではあり得ない。ある程度の生産ロット数が欲しいのであればマス向けの需要を取り込まねばならない。

「本物の〇〇素材」ではマスを取り込むことは相当に難しい。マスに売りたいのならある程度の機能性を持った生地が適切だろう。

現在では「本物の〇〇」になっている生地の多くでさえ、開発された当時は機能性素材だったということを考えると、とかく「本物の〇〇」にコダワリがちな国内生地製造業者は、機能性を付加した生地にアップデートした方がよいのではないかと思っている。特にある程度の生産ロット数が欲しければそちらに移行すべきではないか。「本物の〇〇」はマニア向けに細々と生産し続ければそれでいいのではないかと思う。

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