テレビショッピングをはじめとする通販番組は、人々が洋服を買う一つの契機となっている。しかし、実際に洋服の購入を検討する際には、番組に登場するモデルが着こなすイメージを自分に重ねて判断する必要がある。また、「別のサイズ感が知りたい」「他の色展開も合わせてほしい」と思っても、そうした要望のすべてを番組側が答えることも難しい。
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そのなかで、株式会社QVCジャパンはこうした視聴者や番組の悩みを3DCGの技術で解決を試みている。2022年10月には「FASHION×3DCG」を掲げ、新たな取り組みを開始した。そこで今回、テレビショッピングを専門にする同社ならではの問題意識や狙いについて深堀りした。
試着イメージを喚起する3DCG
同社は10月のイベントとして、「FASHION×3DCG」のサービスを展開した。注目すべきは、「アバター」を用いた試着イメージが提供されたことだ。
これまではモデルが商品を試着して着用イメージを提供していたが、今回は販売データから割り出した平均的な身体サイズのアバターが用意され、3DCGによる着用イメージが制作された。
それにより顧客はウェブサイト上で、コーディネートやカラーを自由に選択でき、「360度3Dビューア」によって、全身の試着イメージを全方位から確認できるようになった。その結果、顧客は商品購入前に十分に時間をかけて試着イメージを築くことができ、納得して商品を購入することができる。
このプロセスの実現こそ、テレビショッピングを主軸とする同社が3DCGに参入するきっかけだった。同社がこれまでの売上データや顧客からの質問を集計したところ、商品サイズのミスマッチによって購入時の不安があることが判明していた。そこで3DCGに解決の糸口を見出したのだ。
「番組の生放送中にコールセンターにいただいた商品サイズや生地感などのご質問は極力リアルタイムで回答できるように努めておりますが、ウェブ上に投稿いただいた質問には限界があります。そこで、リアル店舗で試着しているかのような体験をウェブ上で提供することで、そのような不安を解消できないかと考え、この度3Dビューアに挑戦しました」実際の3DCGの制作は株式会社FMBと共同で行われ、より高精細なアバターや商品を掲載することができた。実物と変わらぬ商品をアバターが試着する動画を見ることで、具体的な着用イメージを得ることができるようになった。その結果、通販特有の試着ができないデメリットの解消に貢献できたのだ。
また、テレビだけでは伝えきれない情報もウェブサイトに掲載することで、インタラクティブで楽しいショッピング体験を提供することも目指している。
リアリティの追求
今回、同社は大きく2つの点で「リアリティ」を追求した。
第一に、顧客の目線を重視してアバターを平均的な体型にした。商品をより良く見せようとする場合、アバターをモデルのようなプロポーションにすることもできたが、社内での議論の結果、平均的な体型のアバターを選択した。それにより、顧客がより親近感を持って、アバターの試着動画を見ることができるようにした。
第二に、商品の質感やアバターに合わせて動く服の重量感なども、ブランド側が納得するものに仕上げた。そのため、ほとんどリアルでの購入に近い感覚となっている。
また、各商品ページには、デザイナーの写真入りで商品のアピールポイントも掲載されており、「人間らしい、温かみのあるショッピング体験を表現するようにした」とのこと。オンラインでの購入とはいえ、顧客とのコミュニケーションを重視していることが伺える。
今回の3DCGは「実証実験」という側面が強く、今後は顧客からの反応を見ながら、最適なサービスを展開していくようだ。3DCGは、通販ならではの悩みであるサイズや質感の行き違いを防ぐことが期待されているだけでなく、昨今のSDGsという観点からは、廃棄ロスや配送費用の削減に繋がっていく。「最高のショッピング体験を目指していく」という同社の今後に注目したい。
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