東京や大阪で無人古着店が増え始めている。「古着をもっと幅広い人に楽しんでもらいたい」「無人販売は低価格な古着との相性も良さそう」といった考えで、古着の小売業が出店を進めている。固定費が低いのが魅力だが、実店舗同様に品揃えに鮮度や工夫は欠かせない。実際に手応えを見せ、これから多店化を目指す無人古着店に注目してみた。
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フセスリフト!!バイ・チャッピー 商店街に出店、古着をより多くの人に
大阪・アメリカ村にある古着店「チャッピー」などを運営するチャッピー(大阪市、松田龍海代表)は22年5月、東大阪市の布施商店街で、同社初の無人古着店となる「フセスリフト‼バイ・チャッピー」をオープンした。狙い通り、幅広い客層が楽しむ姿が見られ、売れ行きは計画以上のペースで推移。2店目も予定しており、将来的には20店以上を目指す考えだ。
松田代表は、「古着が少しマニアックな存在である原因にはおしゃれな店員がいることと、古着=若い人のモノというイメージがあるのでは」と考え、無人古着店に挑戦することにした。商店街へ出したのは、天候にあまり左右されずに集客が期待できることと、「これから若いオーナーが面白い店を出していく可能性がある。シャッターが閉まった物件も増えたが、これから変わるのでは」と捉えたからだ。
同社の主力業態チャッピーは、欧米を中心とした良質な古着を直接ピックアップして仕入れ、店頭で接客販売している。フセスリフトで、質の良い古着を無人で提案したところ、「案の定、若者に限らず、幅広い客層が店を楽しんでくれている」と振り返る。
店舗面積は66平方メートルで、営業時間は24時間。古着は1点が1000円、2000円、3000円、5000円の均一価格で品揃えしている。メンズ、レディス、雑貨があり、それぞれをラックで並べるほか、デニムアイテムやロングTシャツなどおすすめアイテムを集積した売り場、フィッティングルームも設けている。支払いは精算機で行う。店内に監視カメラは8台設置している。
月商は「120万円ぐらいをイメージしていたが、200万円ぐらい売れている」状況だ。1000円、3000円の商品がとくに良く売れている。客層は学生だけでなく、「かつて古着を楽しんだ中年層もいる。意外と午前中に買う人も多い」と言う。
実店舗と同じく店の鮮度を保つための作業を重要視。店頭の品揃えは毎週2回変更し月に1200~1500点の入れ替えを行う。接客はないが、「お客様の声」と書いたシートをファイルに置き、利用者からの要望などを記入してもらい、店の完成度を上げていく努力もしている。
2号店「シンミチスリフト‼バイ・チャッピー」は、11月ごろに大阪市内の今里新道商店街に開設する予定だ。今後は無人古着ショップを20店以上にする目標を立てている。これにより、会社として古着を仕入れる際のバイイングパワーを上げることも目指す。
セルフルギ 管理コストの安さ生かして事業拡大
合同会社AVEND(アベンド、東京、南雲宏樹代表)が運営する無人古着販売店「セルフルギ」は、21年のスタート以来、着実に店舗数を増やしている。無人での運営による管理コストの安さを生かして事業の拡大を進める。同社の設立は21年。セルフルギ事業に加えて、アマゾンに出店している事業者に向けたコンサルティングなどを行っている。
以前はECでの古着販売を行っていたが、無人販売という業態に興味を持った南雲代表が「古着販売にも応用できるのでは」と考え、21年12月に1号店の池袋店をオープンし、22年にザ・ビッグ昭島(東京都昭島市)と吉祥寺(東京都武蔵野市)にも出店した。
販売システムは池袋店と吉祥寺店は無人レジでの支払いで、ザ・ビッグ昭島店は店内に設置された〝さい銭箱〟に代金を入れる方式だ。防犯対策では、監視カメラの映像が映るモニターを置いたり、外から店内が見やすい作りにするなど工夫をしたところ、万引きなどの目立った犯罪は起きていないという。
「管理コストの低さが最大の強み。その分、価格を安くできる。無人販売は接客なしで売れる低価格な商品との相性もいい」と南雲代表。商品はほとんどが5000円以下。有人店舗では人件費が高いため、売り上げを大きくとるための高単価商品が必要になるが、無人販売は運営コストが低いため、低単価の商品だけでも成り立つという。店が狭くても売り場を作れるので、家賃を抑えられるメリットもある。
接客販売をしない分、フリーで売れる品揃えを構築するためにアンケートを活用している。「グーグルフォーム」からアンケートに回答すると、店内の500円以下の商品が無料になるサービスを実施。「どんな商品が欲しいか」などの質問に対する回答を集めて、品揃えに反映している。
「売り上げは店によって異なるが月平均50万~80万円で利益は45~50%。1店舗ごとの売り上げが小さいので、多店舗化が必須。スモールビジネスで運営すれば淘汰(とうた)されてしまうだろう」という。今後はフランチャイズによる出店を強化。23年中に10店まで増やす計画で、将来的には100店以上の規模への成長を目指す。
(繊研新聞本紙22年10月13日付)
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