地球規模で行われているファッションアイテムの大量生産。着られることがなくなって廃棄される衣服が環境汚染を引き起こす中、ファッション業界には地球環境の改善に取り組む動きが求められている。
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そのなかで、海洋汚染の原因となる合成繊維を使用せず、和紙/コットン/シルクなど全て天然繊維の素材を採用し、サステナブルを意識したホームウェアを展開しているブランドが「aloof home」だ。
さらに、同ブランドの商品は、すべて土に還ることが可能だという。それは一体どのような仕組みになっているのだろうか。そこで今回、同ブランドを展開するクレサヴァ株式会社 代表取締役社長の園部皓志さんに、その詳細や今後の展開について伺った。
着なくなった服が土に還るaloof home
同ブランドは、天然素材を用いたホームウェアを展開しているが、特に和紙を素材にした衣類が多い。そこにはどんな理由があるのだろうか。
「日本として世界に代表する素材といえば和紙だと考えました。和紙は最初に登録されている技法なんですよね。日本の文化を継承することで衣類をつくることに意味があると思いました。土壌に還すのに和紙の成分は自然由来のものが多いので非常に向いているんです。
和紙はもちろん、天然素材を使用したaloof homeの商品はすべて土に還ります。私たちが回収し、破砕、粉砕したものを発酵させ、ペレット(土壌改良材)にします。そのペレットは土壌活性剤として機能するので、土の微生物を増やす役割を担い、そこで育つ野菜を美味しくするんです」
つまり、「服から服へ」ではなく、「服から食へ」の循環を行うことが大きな特徴だが、いったいどんな経緯があってそこへ行き着いたのか、理由が気になるところだ。続けて園部さんに伺った。
「服から糸やエコバッグを作り出すことは、ゴミを増やしているのと変わらないと私たちは考えています。ゴミを減らすことが重要で、ファッション業界の中だけで循環させるよりも、違う産業に意識を向けなければいけないのです。そのとき、天然素材であれば土に還すこともできますよね」
日本のオリジナル素材である和紙の可能性
ファッション業界の中だけでは、必ずしも本質的な意味でのサステナブルな取り組みに繋がっているとはいえないという問題意識から、より大きな視点で「循環型」を意識しているようだ。さらに、土に還すことを念頭に置いているため、和紙にも同社ならではのこだわりがある。
「和紙は土に還す視点で良質な素材ではありますが、和紙なら何でもOKというわけではありませんでした。そこで、生地に使用できる柔らかさや裁断しやすい幅の広さを持った和紙を作るために、非常に長い年月をかけて、和紙繊維産業の方々と連携して開発しました」
さらに、同ブランドの興味深い点として、購入したアイテムに着用期間を定めて返却するシステムがある。サステナブルの観点からどのような狙いがあるのだろうか。
「洋服はその人が着たい期間があります。ですが時間が経過するほどに、自分が購入した洋服のことを忘れて、いつしか着ないままゴミになってしまうケースが多いと思います。
その中で私たちの循環型の考えとして、春夏・秋冬という、日本の四季折々のシーズンごとのプライスで洋服を着て、土に還すというサービスを考えました。
また、aloof homeでは、対象商品を180日以内にご返却いただいた場合に30%分のキャッシュバックを付与するなどの取り組みもしています」
衣・食から「住」へと繋がる展望
サステナブルの定義を業界の外にまで広げた今、従来のファッション業界が抱える課題を園部さんはどう捉えているのか。
「衣類を回収したら、また新しい服に生まれ変わらせる行為自体、鎖国状態のように感じます。他の業界は垣根を越えて連動しているのに、衣類だけが孤立しているような感じですね」
同社は、自分たちの業界だけに目を向けるのではなく「食」の分野にも貢献するサービスだが、最後に今後の展開について聞いた。
「日本だけでなく東南アジアなどの発展途上国を中心にペレットを持っていこうという案や、学校で子どもたちが着なくなった衣類を回収して土に還す案もあります。なぜ子どもたちと一緒に取り組みを行うかというとそれを将来の日常にしてほしいからです。
aloof homeは『衣から食』までの循環型事業ですが、洋服だけでなくタオルやシーツなど『住』でもアイテムが増えます。事例を2つお話しすると、1つ目は京都の町家で我々のタオルの導入が決まりました。もう1つは、体験型の宿泊施設をつくるプロジェクトが進行中で、私たちの農園がある京都美山で提供したいと考えています」
こうした新たな取り組みによって関係人口が増え、社会全体への意識付けも、よりいっそう進むはずだ。
環境負荷の少ない上質な衣類や生活用品が増えていくほどに、地球にかかる負担は減少する。これから同社のサービスがどのように貢献するのか注目していきたい。
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