「NFTによる地方創生」を推進する企業として、最近注目を集めているのが株式会社あるやうむだ。日本で初めてふるさと納税の返礼品としてNFTを提供した「ふるさと納税×NFT」を中心に、新たな観光産業に挑戦する「観光×NFT」にも取り組んでいる。
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そこで今回、同社がNFTと地方創生を組み合わせた経緯や、その仕組み、今後の展開などについてCCO(Chief Communication Officer)の稲荷田和也さんに聞いた。
「ふるさと納税×NFT」の事業を展開するきっかけ
同社が、ふるさと納税とNFTの組み合わせに注目したのは、代表の畠中博晶さんが地方創生に関心があるとともに、仮想通貨のトレーダーもしており、NFTに造詣があったことが一つのきっかけになったという。
「さらに代表は、行政や地方、街づくりも非常に好きな人間で、出身地ではない札幌で起業したのも、この町が非常に好きだったからです。
そこで、NFTと地方創生で何かできないかを模索していた時に、企業支援をしている方などとの出会いを通して『ふるさと納税×NFT』というアイデアにたどり着きました」
そして、同社は資金調達を経て事業を具体化し、2022年5月に日本で初めて、北海道余市町とともに「ふるさと納税返礼品NFT」を実現した。
このNFTは、同町の名産であるワインをモチーフにしたアート作品となっており、イラストは北海道出身のNFTクリエイターであるPokiが担当。1枚12万円で54種類を発行し、予約受付開始から2時間ほどで規定数に到達する結果となり、成功を収めた。
稲荷田さんは、初めての試みが成功したのには、大きく3つのポイントがあったと語る。
「1つは日本初の取り組みという話題性です。これが一番の購入動機でした。2つ目に、PokiさんがNFT界隈で人気のクリエイターですので、その人気のお陰もあります。
最後の3つ目が『ふるさとチョイス』との協力です。この『ふるさと納税返礼品NFT』は、ふるさとチョイス限定で出させていただき、特集ページを作っていただくなど、ポータルサイトによる広報・マーケティング支援もしていただきました」
売れ行きに関しては想定通り順調だったが、意外な結果としては「NFTを初めて入手した人」が半数近くを占めたことだという。
「元々はNFT界隈で、クリエイターのファンの方が、ふるさと納税をすると思っていましたが、幅広い層の方に届いたのが初回の学びです」
この理由としては、「ふるさと納税ですと、日本円のカード決済で寄付することができますので、暗号資産を持つまでの手続きやハードルが下がったことで、NFT初心者の方がたくさん流入したのではと捉えています」と分析している。
また、同町との取り組みがスムーズに進んだ背景としては、齊藤啓輔町長が元々仮想通貨やNFTに理解があり、先進的なスタンスを持っていたことが大きかったという。
単なるNFTではなく、付加価値をつける
そして今年12月9日に発表した、福井県坂井市との「ふるさと納税×NFT」では、現地を訪れると、NFTのレベルが上がる仕掛けを実装する予定だ。アート作品というだけではなく、所有者がよりメリットを得やすい仕組みに取り組んでいる。
「NFTでアートを楽しむだけでなく、NFTを持っているとどう楽しめるのか、その高付加価値化が、ある種キーワードになると思っています。
さらに、自治体側の目線に立った場合、『ふるさと納税して終わり』という課題感は非常に大きい。『ちゃんと地域のことを好きになって、観光に来ていただく仕掛けができないか』というご相談もありますので、NFTを持つことで、その地域に対して愛着が湧くだけでなく、観光に行く動機も作りたいと思っています。
例えば、NFTを持って現地を訪れれば、NFTのレベルが上がったり絵柄が変化したりするギミックを加えることで、実際に観光に来ていただく。
『関係人口』という言葉がありますが、実際に住んではいないけれど、その地域のことが好きで、定期的に関わってくださる方々のパイを増やすのが、自治体のミッションでもあります。そこに大きく貢献できると思っております」
そして、NFTをふるさと納税の返礼品にすることは本来のふるさと納税の理念にも沿うものになっていると語る。
「ふるさと納税は、自分のふるさとに貢献したり、好きな地域を応援したりするという趣旨で始まりましたが、今ではECビジネスのようになってしまっています。NFTによってより地域とウェットで継続的な関係性が築けるきっかけが生まれることで、本来の目的に合う返礼品になっていると考えています」
NFTが持つ可能性とは
2022年度は主力事業である「ふるさと納税×NFT」の展開を中心としながら、北海道の北広島市と「観光×NFT」の実証実験も行った同社。
最近ではNFTの価格下落なども指摘される中で、NFTの可能性について、どのように考えているのだろうか。
「NFTは、地方創生を推進する力強い武器ですが、手段の1つでしかないと思っています。弊社のミッションは『NFTによる地方創生を推進する』としており、NFTを推進するだけの会社ではなく、あくまで自治体や地域に寄り添った会社であることを非常に大事にしております。
最近では海外を中心にNFTが冷え込んできているという話もありますが、投機性が非常に高いことから、波があるのは当然だと思います。
その一方で、『ふるさと納税×NFT』は手堅いビジネスとして展開しておりますので、その悪影響は受けないと思っております。そもそも、ふるさと納税については、投機性について、趣旨に沿わないので重視していません。
ただ、『観光×NFT』に関しては、ふるさと納税に比べれば、投機性が問題視されづらい領域です。詳細な設計はまだしていないものの、NFTの魅力がより発揮しやすい形での提供も検討しています」
今後の「ふるさと納税×NFT」と「観光×NFT」
最後に、自治体やクリエイターらと組んだNFTを次々に展開している同社の、これからの目標と展開について聞いた。
「2023年度中に100自治体を目処に、NFTの取り組みを進めていきたいと思います。特に『ふるさと納税×NFT』は、パッケージもできてきましたので、さらに展開していきます。
『観光×NFT』については、例えばお土産の市場に対してお土産NFTを作るなど、新しい取り組みを、どんどん作っていけたらと思っています。自治体だけではなくて、旅行会社や観光系の会社との協業もあり得るので、そうした方々と一緒に、より大きなムーブメントを、仕掛けていきたいと思っております。
我々は札幌の企業で、『地域間格差を解消する』ことにも取り組んでいます。NFTを武器にして、持たざる地域にも平等にチャンスをもたらす、きっかけになれたら嬉しいです」
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