当方の長男と次男が無事に27歳と25歳になったのだが、二人ともあんまり服を買わない。仕事がスーツなので買う必要が無いということもあるが、就職する前からそんなに買っていない。次男の方はまだ買う方だが、だいたいがアダストリアの商品なので、定価で買ってもしれているし、当方のようにセールで買うなら尚更安い。
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このたび、6年半ほど非常勤講師を務めた専門学校のファッション科が3月末で廃止になり、当方も用済みとなったわけだが、6年半で毎年いろんなタイプの生徒がいた。
昔のファッション専門学校と比べると、ブランド服を着ていない生徒が多かったが、中にはラグジュアリーブランドや高級デザイナーブランドを好む生徒も何人かはいた。
ただ、ブランド好きの生徒の買い物の話を聞いていると、当方が若い頃とは買い方が少し違っていると感じた。
今の生徒たちは、アルバイトなどでお金を貯めて、その貯めたお金で買うことがほとんどだった。カード払いもあるがリボルビング払いをしているのは聞いたことが無かった。
とすると、現金払いはもちろんのこと、カード払いにしても自分の手元にあるお金の総額を越えては買わないということになり、非常に堅実な買い方だといえる。
当方の長男は服を買わなさすぎて何の参考にもならないが、次男もアダストリアの服をパラパラと買う程度なので、手持ち資金の範囲内で買っている状態にある。
ちなみに、次男は東京勤務になり、1人暮らしを始めたが「毎月、生活費をどれくらい節約できるかにチャレンジしている」そうで、この辺りは教えていないのに親に似るもので驚いている。
自身の息子と6年半の生徒という身の周り調査になるが、総じて今の若者は洋服の買い方が堅実だと感じられる。
当方の若い頃、20代~30代の頃なので、今から20~30年前を思い返してみると、同年代の当時の若者はカネの使い方が堅実ではない人が多かった記憶がある。もちろん、当方は昔から堅実経営を堅持していることは言うまでもなく、あくまでも身の周りにいた友人知人のことである。
大学時代だと、自動車のローンを組んでいる男は多かった。そしてまだユニクロは存在自体が知られていないころで、安くてそこそこマシな服というと、梅田のジーンズショップ「ジョイント」くらいしかなかった。で、少しちゃんとした服を買うとなると高額なDCブランド系になるため、何万円単位が必要となるが、そういうブランド物好きな男たちはローンを組んだり月賦支払いをしていた。
ちなみにこの時期、クレジットカードというのは今ほど普及しておらず、当方もいつもニコニコ現金払い一択だった。当方がクレジットカードを持つようになったのは90年代後半のことである。
この月賦というシステムで成長した企業がマルイである。マルイのカードで月賦を組んでデザイナーズブランドを買うことが70年代・80年代の若い男(衣料品業界外も含めて)のライフスタイルだったと言われている。
現在は学生でもクレジットカードを持っていることが増えたから、月賦とかローンではなく、分割払いかリボルビング払いという支払い方法になるのだろうが、それでも身の周りでリボ払いを使っている若者を見たことが無い。
ローンを組むということはあるだろうが、それは住宅とか自動車などを買うときに限定されるのではないかと思う。
70年代~2000年頃まで若者が高額なブランド服を買っていたことで様々なファッションブームが起きたが、2010年以降は大きなファッションブームが無く、あったとしてもファストファッションブームだとかしまらーブームだとかそういう「堅実」なものばかりといえる。
これの原因は様々あるだろう。
可処分所得の減少とか社会保障費の増加とか。たしかに毎月何千円とか1万何千円くらいは可処分所得が減っているのかもしれないが、若者がカネを持っていないことは今も昔もそんなに変わらない。
例えば当方の亡父は若い頃、給料日までにいつもカネが無くなって、時計を質に入れたり、会社から給料を前借りしたりして自転車操業していた。彼の場合は、だいたいが酒とたばことパチンコと麻雀で散財していたのだが。
20年前、30年前の若者もカネを持っていなかったが月賦やローンで高価な洋服を買っていた確率が高いといえる。一方、今の若者もカネを持ってはいないが、手持ちの資金の範囲内で洋服を買うという堅実路線が増えているのではないかと感じる。
現在、自分の収入額や貯金額を越えた高額な洋服を分割払いやリボ払いで買っている人はゼロではないだろうが、衣料品業界外にはそういう傾向の人は随分と少なくなったという印象を受ける。
衣料品業界の人は昔から洋服をたくさん買って借金を背負っていることが多かったが、今でもまだそういう人の比率はそこそこ高い。
つらつらと書いてきたが、何が言いたいのかというと、衣料品業界の人は「高い服が売れなくなった」といまだに嘆いているが、現在の「堅実」な消費傾向からすると、収入額や貯蓄額を大きく越える価格の服がそう簡単に売れるはずも無いということであり、過去に売れていたのは若者がカネをたくさん持っていたからではなく、月賦やローンといういわば「借金をしてまで」買う人が多かったということである。
そして、今後、どれだけインフレになろうが、景気が回復しようが昔のような「借金をしてまで買う」という高額な服の買い方が戻ってくることは決してないだろう。
当方のガンプラ話は置いておいて、衣料品業界のベテランたちでも、洋服よりもバイクや釣り、キャンプなどの趣味の用品を買う方を優先している。
洋服のイベントには行かないが、釣りのイベントには並んででも行くOEM業者とか、洋服をほとんど買わないがキャンプ用品は高額な物を揃えている社長とか、そういう感じである。
衣料品ブランドはそのあたりを考慮して、価格設定をするとか、自社のブランド規模の限界を設定するとかという取り組みが必要になる。
昔みたいに「高い服をジャンジャン売って何百億円に到達できる」なんていうのは最早、幻覚や白昼夢の類だといえる。
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