自分にはあまり店舗や商業施設へのロイヤリティが無い。
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例えば、ジーユーでよく服を買うが、天王寺には歩いて数分の距離にジーユーが2店舗ある。1つは、あべのキューズモールで、もう1つは天王寺MIOである。店舗の面積はMIO店の方が広い。ジーユーの商品は通販サイトの在庫検索でどちらの店に在庫が残っているのかがすぐに分かる。
もちろん、商品が残っている方で買うが、どちらにも残っている場合、天王寺MIO店で買う。理由はMIOポイントがたまるからだ。そして1ポイント=1円として使用できる。
100ポイントを貯めれば100円引きで使うことができる。だから天王寺MIO店でなるべく買うようにしている。
MIO店で買うのはポイントがたまるからである。ポイントがたまらなければMIO店で優先的に買うことはない。在庫が残っている店舗で買う。MIOに残ってればMIOで買うし、無ければ他店で買う。それだけのことである。
そのような人間なので、特定のファッションビルや百貨店、GMSに対しては微塵の思い入れも無い。だから、特定の商業施設に強い思い入れを抱く人間の心理が全く理解できない。
メディア関係者や衣料品業界関係者には百貨店に並々ならぬ思い入れを持っている人が少なくないように感じる。彼らは百貨店の回復策を語るのが好きなようだが、見ていてもイマイチそのプランにピンと来ない。
そして百貨店側が出してくるプランもピンと来ない。
百貨店側は、ともすると人気ブランドを一早く導入することが差別化につながり客から選ばれやすくなると考えている節があると感じられるのだが、当方にはその考えが正しいとは全く思えない。
西暦2000年頃までなら日本ではまだ知られていない欧米の著名ブランドが存在したが、今ではそんなブランドは欧米には残っていない。〇〇ブランドを導入しましたと言ったところで、そんなに目新しさは無いし、その〇〇ブランドだってすぐに直営店を出店したり自社ネット通販サイトを構築したりする。挙句の果てには他の百貨店にも出店する。
となると、〇〇ブランドを百貨店内に誘致したところで、その優位性は5年程度しか持たない。百貨店に国内初出店を誘致したとして、そこの店舗が好調なら間違いなく何年か後に都心に直営旗艦店を開設する。さらにその後、他の百貨店にも出店する。
都心直営旗艦店が出店した時点で最初の百貨店の優位性は消える。
〇〇ブランドのファンは品ぞろえが豊富な直営旗艦店で買うようになる。
以前にも取り上げた生地雅之さんは「百貨店ファンは暖簾またぎはしない(他社百貨店に乗り換えない)傾向が強い」と仰っているが、その理屈で行くとその百貨店固有のファンが残るだけだろうということになる。そして、当方のような人間からすれば、〇〇ブランドのファンという存在は理解できても、〇〇百貨店のファンという存在は理解できない。
百貨店が差別化を図るためには、今でも当方は独自商品の開発が不可欠だと考えている。大手ブランドやナショナルブランドを誘致しましたでは全く差別化にならないからである。他店でも買えるし、ブランド直営店でも買える。ブランドファンが特定の百貨店に固執する必要性が全く無い。
まあ、しかし、ここまで百貨店が自社オリジナル商品化にことごとく失敗しているのなら、現在の百貨店にオリジナル商品を企画生産販売できる人材はトップから現場まで存在しないと見て間違いはないだろう。
そうなると、次善の策としては、著名ブランドに専用ブランドを作ってもらうか別注品を用意してもらうか、ということになる。そんな中、こんな発表があった。
ジュンが高島屋限定の新業態「モア サロン エ ロペ」を発表 大阪と横浜に出店へ (fashionsnap.com)
ジュンが、「ロペ(ROPÉ)」と「サロン アダム エ ロぺ(SALON adam et ropé)」の複合業態として、新ライフスタイルショップ「モア サロン エ ロぺ(moi salon et ropé)」の出店を開始すると発表した。高島屋限定の業態となり、5月12日に1号店が高島屋大阪店に、6月上旬に高島屋横浜店にオープンする。
とのことである。
内容を読むと、ロペとサロン アダム エ ロペの複合業態店ということになるので、完全なる髙島屋専用ブランドというわけでもないが、この屋号は髙島屋専用ということになるのだろう。
ロペとサロン アダム エ ロペの複合店なので、商品的には他のロペ店、他のサロン アダム エ ロペ店と共通だと考えられるので、商品供給の面からも商品消化の面からも効率化できているといえる。
本来の差別化を目指すのであれば、ジュンに髙島屋専用の商品を企画生産してもらうということになるのだろうが、それはジュンの視点から考えると、供給面・販売面ともにリスクが高いので、こういう専用複合業態の出店ということになったのだろうと当方には見える。
屋号が変わるだけで一体誰が喜ぶのだろうという疑問も浮かぶが、髙島屋ファンにとってはある程度の効果はあるのだろうとも考えられる。(実際に物が売れるのかどうかはわからないが)
ただ、百貨店、GMSともに著名ブランドやナショナルブランドを「いち早く誘致しました」というだけでは何の差別化にもならないから、先日のアダストリアのイズミ専用ブランド「シュカ」の立ち上げや、今回のジュンの髙島屋専用屋号の立ち上げというのは、これまでの施策に比べるとかなりマシな方ではないかと思う。
今後はこの手の「〇〇百貨店専用屋号」とか、〇〇百貨店向け別注オリジナル商品なんていうのが百貨店の差別化のメイン施策になるのではないかと思う。百貨店復活の起爆剤には到底ならないだろうが、緩衝材程度の効果はあるのではないだろうか。
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