最近、スキニーパンツをあまり穿いていない。
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ただし、細身のパンツを穿かないわけではない。スキニーよりもスリムストレートを愛用している。2009年以降のスキニーブームによって当方も買ってそれなりに穿いてはいたのだが、ブームが終わってスキニーが定番化してしまうと、ブームのころの熱気が冷め、改めて自身の姿を鏡で見てみると、ピチピチスキニーと無駄にデカイ上半身が何ともアンバランスに見えてきて、なるべく穿かなくなってしまった。
しかし、バランスを取るための細身のパンツは必要だから、スキニーよりは太くてレギュラーストレートよりは細身のスリムストレートを愛用するようになって今に至る。
ビッグサイズトレンドの定着化によってビッグサイズトップスの手持ちが増えた。ついでにワイドパンツの手持ちも増えた。だが、上下ともにビッグサイズにしてしまうと、顔がデカくて首が短い当方は単なるゴツイオッサンになってしまうため、トップス服がデカい場合は細身のボトムスを穿くようにしているが、ブームのころはスキニー一択だったが、熱気が冷めた今の目で見ると、スキニーではなくスリムストレートの方がマシに見えるという話である。
もう一つ、当方がスキニーが似合わない理由は、脚が太いためである。大したスポーツもしていないのにスポーツ脚である。
スキニーを穿くと、ふくらはぎがガンダムやザクのようにモッコリと盛り上がるわけである。それともダグラムと言った方がわかりやすいだろうか。
ふくらはぎが盛り上がっていない方がスキニーは綺麗に見えるので、当方にとっては、ふくらはぎの盛り上がりを拾いにくいスリムストレートの方がマシに見えるという話である。
ビッグサイズがマス化する以前、スキニーブームがピークアウトする頃、某ファッション系インフルエンサーが「ユニクロのスキニーは少し太いところに不満がある。もっと細くてピチピチの方がカッコいい」というようなことを連日発信しておられたのだが、当方は少し疑問だった。
もちろん、その後には「マスを狙うユニクロはピチピチ過ぎては客層を選ぶため仕方が無い」という補足はあったのだが。
当方の体格・体型ではやや太いと評されるユニクロのスキニーでさえ、ふくらはぎがダグラム状態だったわけである。それ以上細身の「カッコイイブランド」のスキニーなんて最早レオタードである。そんな物を穿いて市街を練り歩く勇気を当方は持ち合わせていない。だから細い方がカッコいいという評論は疑問を感じたのである。
スキニーブームの熱気が冷めた現在、改めて穿き比べてみると、ふくらはぎがダグラム状態のスキニーよりもスリムストレートの方が当方にはマシに見える。
で、ここからが本題なのだが、ファッション業界人の好む物とマス層が好む物は大きくかけ離れているのではないかと改めて感じられてならない。
元々かけ離れてはいたのだろうが、2000年代半ばごろまでは、ファッションリーダーの嗜好に合わせるマス層が多かったと考えられる。だからこそ、2000年代半ばまでは、高価格ブランドのブームが毎年のように起きていた。
ビンテージジーンズブーム、アムラーブーム、マルキューブーム、裏原宿ブーム、神戸エレガンスブーム、とどれも価格はそれなりに高い。2000~3000円でそろうブランドは無い。少なくとも1アイテム2万~3万円はする。
多分、彼らの嗜好に合わせることが「カッコイイ」とマス層は認識していたのだろうと思う。
しかし、2010年代に入りSNSが普及し始めると、徐々にその傾向が薄れてきた。ファッションインフルエンサーと呼ばれる人たちがユニクロ、しまむら辺りのお買い得品をフィーチャーするようになったことも大きな理由だろう。
ファッション業界人は、なまじ服が好きなためについつい「尖っている物」を好んでしまう傾向が強い。これは衣料品に限らずどの分野でもそうだろう。
ガンプラを含むアニメロボットプラモデルだってそうだ。愛好家は常に「尖った物」を求めているがマス層はそこまでを望んでいない。
現在のバンダイの1200円のガンダムのプラモデルはかなり良く出来ているが、愛好家から言わせると「〇〇のディテールが甘い」とか「全身のバランスが少し違う」とか、そういう評価になる。
それ故、愛好家向けには何万円もする別ライン商品が発売されたり、バンダイ以外のマニアックなメーカーからアレンジを変えた高額モデルが発売されたりしている。
話をスキニーに戻すと、愛好家は「よりピチピチに、よりピタピタに」と尖った物を追求したくなるのだろうが、それを穿くには体型的・体格的制約がある。他人の目なんて気にしないゼーと言って穿く自由はあるが、当方はそんな自己満足の世界を求めていない。恐らくマス層も同様だろう。似合っていないと思われる物をわざわざ買って着用する気が無い。
となると、当方も含めたマス層、特に体格・体型的にピチピチ過ぎるものは嫌だと思っている層は、むしろ「ユニクロのスキニー程度で十分」であって「イケてるブランドのピチピチスキニー」は要らない、むしろ買いたくないという購買判断を下す。
ユニクロ、ジーユーがマス層に支持されている現状を嘆く衣料品業界人は数えきれないほどいるが、逆にいえば愛好家たる業過人の好みが特殊すぎてマス層には支持されにくいというのが実態ではないか。「尖った物」「尖りすぎた物」はマス層には必要とされていないということを直視すべきではないかと思う。
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