凸版印刷株式会社は、1900年創業の老舗総合印刷会社で「印刷テクノロジー」をベースに事業を展開している。2021年には、写真から3Dアバターを生成できるサービス「MetaClone®アバター(メタクローン®アバター)」を開発・リリースした。2023年4月には、店頭やイベント会場などでバーチャルファッション体験ができる「MetaClone®スタジオ(メタクローン®スタジオ)」の提供を開始している。
MetaClone®スタジオとは、どのようなサービスなのだろうか?その概要や反響、今後の展開について、凸版印刷株式会社ミラバース事業開発部・部長の張平さんにお伺いした。
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PROFILE
張 平
凸版印刷株式会社
ミラバース事業開発部・部長
着用時の生地感や揺れ感を、忠実に再現できるMetaClone®スタジオ
まず、御社で展開されているMetaClone®スタジオの概要について教えてください。
MetaClone®スタジオは、企業やブランドを表現したバーチャル空間上に、店頭や会場で撮影した自身の顔を持つアバターをその場で生成します。体験者にとって気軽に「企業やブランド独自の世界観」「バーチャル試着」などを提供できるPRパッケージです。MetaClone®スタジオを活用することで、店頭や会場でのPR活動の強化、バーチャル試着体験を通じたファッションアイテムの販促施策などが可能となります。近年メタバースの活用範囲は拡大しており、メタバースの活用が多くの産業の発展に寄与することが期待されています。バーチャルフィッティングは、これまでユーザーの写真に服の画像を重ねる方法が主流で、リアルな試着シミュレーションが困難という現状がありました。凸版印刷では、2021年に開発したMetaClone®アバターを用いてアバターを生成し、メタバース上で試着するという新しい手法を用いています。これによって、アバターが衣服を着用する際の生地感や揺れ感を忠実に再現できるようになりました。
MetaClone®スタジオは4月期間限定で、伊勢丹新宿店の「クレプリ ツモリチサト」POP UPストアに導入されたそうですが、導入にあたって課題はあったのでしょうか?
MetaClone®スタジオの開発には、店頭での顧客体験の設計や、各ブランドの世界観をどう表現するかといった課題がありました。具体的には、人物の画像の撮影時に店頭ならではの明るさや背景色などの環境の違いがあります。これに対応するため、エラー対応や設定を変更しました。今回ご採用いただいたクレプリのコンテンツにおいては、ブランドの世界観を表現するために、アバターが試着を体験する3D空間の色味・ライティングや、ダンス中のカメラアングルなどにこだわりました。MetaClone®スタジオは、衣服の着用時の生地感や揺れ感・動きなどの3Dならではのリアルな再現に重点をおいて開発しました。最新の3DCG技術の活用により、メタバース上でのアバターによる違和感のない試着を実現しています。実際に試着をしなくても着用感を確認することが可能となっています。
リリースから1ヶ月、早くも問い合わせが多数
具体的に、MetaClone®スタジオではどのようにアバターを生成し活用するのでしょうか?
店頭で自分の顔写真を1枚撮影するだけでアバターが生成されます。企業やブランド独自の世界観の体験や、バーチャル試着体験が可能となります。現在利用できる場面はアパレル店舗やイベント会場、観光地の3つを想定しています。たとえばアパレル店舗では、店頭に設置しリアルとメタバースを連動させた企画が可能です。ファッションブランドに導入すると、バーチャル上でリアルな試着シミュレーションができるため、実際に試着しなくても着用イメージが湧くようになります。スポーツやアニメ・ゲームなどのファンイベントの会場に設置すると、ユーザーはアバターとしてバーチャルスタジアムに登場することができるほか、アニメ・ゲームのキャラクターと同じ衣装やスポーツチームのユニフォームを自身のアバターに着せることができ、ファンのロイヤリティ向上を支援します。観光地に関しては、博物館や資料館などに設置することで、自身のアバターに衣装を着せて歴史上の偉人に扮するといった活用が想定されます。地域活性化の起点となるようサポートします。
アバターを作成する際のプライバシーに関してはどのようにお考えでしょうか?
MetaClone®スタジオでは、アバターを生成する際に、個人情報である本人の顔写真を撮影します。撮影する顔写真はアバター生成以外の用途では使用しないなど、利用規約において明確なルールを定め、体験者の同意を得た上でサービスを提供しています。さらに、顔写真および生成されたアバターについては弊社のプライバシーポリシーに基づき適切なデータ管理をしています。今後デジタル空間における人物再現が進んだ世界では、プライバシーの問題・肖像権・著作権の問題も起こりうることが予測されます。そのため、弊社のアバター管理基盤「AVATECTTM(アバテクト)」との連携を進める予定です。アバターの不正利用やなりすましを抑止し、メタバース上でのプライバシーや著作権の保護を実現したいと考えています。
「クレプリ ツモリチサト」POP UPストアのように、ファッション業界からの問い合わせも多いのでしょうか?
小売業やファッション業界からは、アバター試着やイベントプロモーションとしての問い合わせを多数いただいています。
今後はイベント会場やアパレル店舗への設置を見込む
MetaClone®スタジオの技術が進化することで、企業・ユーザーにとってどのようなメリットが想定されるのでしょうか?
PRイベントなどにおける顧客体験が向上し、企業やブランドのイメージの表現力向上に寄与すると考えています。また、アバター試着体験においては個人に合った服装のレコメンドやアイテム選定の体験を通じて、ファッションアイテムの訴求力向上につながればと思います。さらに、よりリアルな試着体験によるユーザーエクスペリエンスの向上や、店舗での余剰在庫の削減にも効果があると考えています。MetaClone®スタジオでは、リアルの店舗やイベント会場での体験に新しい価値を提供します。
今後の展開についてはいかがでしょうか。
「MetaClone®スタジオは、さらに幅広い世界観の表現を可能とするべく、背景、モーション、対応可能な衣服の幅を広げる取り組みを行います。また、計測機能の追加や計測結果に基づいたレコメンド機能の追加など、ファッションDXを実現するための機能拡張を行っていく予定です。また、PRイベントやアバター試着サービスとして、今後イベント会場やアパレル店舗への設置を進めていきます。多くの方にイベント会場・店頭へ足を運び、MetaClone®スタジオを通じてぜひトッパンの最先端技術を体験して欲しいと思っています。
Text by Asami Tanaka
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