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現金主義だったドイツのデジタル化におけるメリットとデメリット

現金主義だったドイツのデジタル化におけるメリットとデメリット

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ドイツ在住の日本人の半数以上が持っていると言っても過言ではないのがネットバンク「N26」だ。2013年にベルリンで設立されたスタートアップだが、ドイツだけに限らず、オーストリア、イタリア、スペインなどをはじめとするヨーロッパ諸国でも口座開設が可能。

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筆者がベルリンへ移住したばかりの頃は「N26」のようなネットバンクは存在しなかった。そのため、実店舗を構えるいわゆる“普通”の銀行で口座を開いたが、ビザ(滞在許可証)取得には保険用の口座が必要不可欠だったため、住民登録とパスポートのみで開設できる銀行を探したことを覚えている。その銀行も今では解約してしまい、ネットバンクのみを利用している。

「N26」とは実店舗を持たないオンライン上に存在する銀行だ。一番のメリットはわざわざ窓口に出向かなくてもアプリをダウンロードしたスマホから口座が開けるといった点だろう。必要なのは、現地の住所、パスポートのみ。しかも、英語で対応可能で無償でMaster Cardデビットが付いてくる。他のネットバンクでは必要となる口座維持手数料が無料という点も嬉しい。2021年には「Forbes」の「World's Best Bank」に選出されるほど注目度も高い。ちなみに、バンク名「N26」の26はルービックキューブのパーツ数に由来するらしい。

しかし、その利便性と手軽さの裏にはデメリットが生じることを伝えておきたい。実店舗がないということは窓口がない。窓口がないということは緊急時に駆け込んでその場で即対応してもらうことができない。手続きだけでなく、問合せ、トラブル対応など全てオンラインのみで行っているため、日数が掛かる。今回は筆者が陥った痛恨のミスとネットバンクのデメリットを以下にまとめたいと思う。

カード紛失

カードと口座をブロック(アプリから操作可能)

カード発見、再発行不要と緊急連絡したが本人確認が必要と言われ、ザカード(電子滞在許可証)の写真をメールで送付

2、3日後に登録されている住所が違うと連絡がくる

ビザの有効期限が切れているため、これでは住所変更できないと言われる

直近で届いた住所入りの保険会社からのドキュメントとパスポートとビザカードの裏面に記載されているビザの有効期限が分かるように写真に撮って送る

混雑による対応遅れで待った上に、間違った身分証提出に再度ダメ出し

大家さんにお願いしてサイン入りの賃貸契約書を用意してもらい、ようやく正しい書類を提出する

2、3日後ようやく新しい住所にアップデートされる

以上、カードを紛失したと思い、口座を一時的に止めてから再び使えるようになるまで1週間以上掛かったできごとである。冷静かつ、まともな判断ができる人であれば私のようなミスは犯さないだろう。そもそも、ビザの有効期限はあるが、パスポートの有効期限と電子滞在証(カード)の有効期限が紐付けられており、カードを新しくしなければならないことを知らなかった。なぜならパスポートと番号が違っても説明すれば空港のイミグレでさえスタンプを押してくれるからだ。

ドイツで発行されるカード式の滞在許可証。ビザ更新後に移民局から届くまで1カ月以上掛かる

古いパスポートも持参し、必要に応じて出国、入国、イミグレで提出している

ちなみに、電子滞在証の更新料は、3カ月以内の滞在延長で65ユーロ、3カ月以上で80ユーロ、永住者は135ユーロと決して安くない上に、移民局で手続きしなくてはいけない場合は事前予約が必要となり、「N26」の比ではない時間が掛かることだろう。ベルリンへ移住をする予定のある人は、役所関係は電話は繋がらず、あり得ないほど機能していないことを覚悟しておいた方がいい。

「N26」に話を戻そう。カードの紛失、盗難用の緊急連絡先の電話番号があるが基本繋がらない。質問がある場合は口座にログインし、セキュリティーの掛かったチャットにてやり取り。“human”と打ち込まないとオペレーターに繋がらず、全く話の通じない機械相手に無駄な時間を費やすことになるので要注意。

Shipping addressはアプリからすぐに変更可能だが、Legal addressを変更するには、サポートセンターへ連絡する必要があり、認められる証明書類は、公共料金の請求書、サイン入りの賃貸契約書、住民票などだが、3カ月、6カ月以内などの条件がある。さらに、3日から5日以内に対応するとあるが、平日で5日間掛かると思った方がいい。公共料金の明細は全て大家さん名義であり、スマホは格安SIMでパケット契約し、オンライン決済のため提出できる書類などないのが現実だ。

その他のデメリットとしては、実店舗がないため預金するには提携しているスーパーやドラッグストアへ行き、レジで対応してもらう必要があり、手数料も1.5%掛かる。

キャッシュレスが進む中でもテイクアウトメインのケバブ屋や安価なインビス(軽食スタンド)、個人経営の小さなカフェなどはカードが使えないことが多いベルリン

現金対応していない店舗や施設が未だに存在するドイツだが、コロナ禍でようやくキャッシュレスが浸透し、自分も含め、周りの友人たちも現金を持ち歩くことが少なくなった昨今。現金が底をついた時に救世主となったのが「Wise」と友人だ。これから海外移住を考えている人にすすめたい海外送金サービスだが、様々な通貨を動かせるマルチカレンシー口座と無料で作れるMaster Cardデビットカードとセットで利用することを強くおすすめする。

インパクトある蛍光グリーンにシンプルなデザインが良い

カードが届くまでに掛かる日数は2週間とあるが実際にはもっと早く届くし、カスタマーセンターへは日本語で問い合わせることができ、遅くとも翌日には必ず返事が届いている。送金や口座間両替も即対応で便利、現在、日本円とユーロの2通貨で利用しているが、今のところ何の問題もない。マイノリティーな通貨の国へ行くことも多いため、今後も活躍の場が増えていくのは確実だろう。あとは、Apple PayとPayPalで使えるようになったら完璧だ。

前回の帰国時にトランジットで利用したドーハ空港。近未来なデザインでキレイだが、Wi-Fiは非常に使いにくい。ユーロはカードのみで利用可能だが、通貨はQAR(カタール・リヤル)でとにかく高い

長野県生まれ。文化服装学院ファッションビジネス科卒業。

セレクトショップのプレス、ブランドディレクターなどを経たのち、フリーランスとしてPR事業をスタートさせる。ファッションと音楽の二本を柱に独自のスタイルで実績を積みながら、ライターとしても執筆活動を開始する。ヨーロッパのフェスやローカルカルチャーの取材を行うなど海外へと活動の幅を広げ、2014年には東京からベルリンへと拠点を移す。現在、多くの媒体にて連載を持ち、ベルリンをはじめとするヨーロッパ各地の現地情報を伝えている。主な媒体に、Qetic、VOGUE、men’sFUDGE、繊研新聞、WWD Beautyなどがある。

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