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繊研plus倉敷紡績2代目社長の大原孫三郎氏は、1900年代初頭から30年余りにわたりトップを務めた。社内外の反対を押し切って、事業の多角化のほか、従業員の職場環境改善などに力を注いだ。反対する声には「儂(わし)の眼には十年先が見える」。その言葉は、城山三郎が同氏をモデルに書いた小説のタイトルにもなった。
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岡山県倉敷市の美観地区には、今もゆかりの大原美術館、旧倉敷工場である総合文化施設のアイビースクエアなどが残る。アイビースクエアの代名詞であるツタは、工場空調の改善のために同氏が茂らせたと聞く。今も一画には貴重な資料を集めた倉紡記念館が残り、紡績繁栄の時代がしのばれる。
60年代半ば、東洋紡、日清紡、倉敷紡績などが10大紡績と言われ、日本の企業ランキングでも上位を占めた。かつて干拓地だった倉敷一帯に綿花栽培以外で産業を興した人々の営為の結果だ。今も地域との共生を強く意識した企業である。
コロナが収まり、美観地区にも観光客が戻り始めた。川沿いの白壁屋敷や柳並木も美しいが、もし大原美術館やアイビースクエアなどが無ければ、魅力はかなり目減りしたことだろう。駅から美観地区に向かう商店街も、他の観光地に比べ活気が残る。10年先どころか、100年、200年後も地域の大きな財産となることは間違いない。
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