Image by: クロスプラス
ここ数年で耳にする頻度が急激に増えた単語の一つ「フェムテック」。Female(女性)とTechnology(テクノロジー)を掛け合わせた造語で、女性のライフステージにおける様々な課題を解決できる製品やサービスを指す。矢野経済研究所の調査によるとその市場規模は年々拡大しており、2022年には国内で700億円を突破。グローバルで見ると2025年までに500億ドル規模まで伸長する見通しだという。
一方で、これまであまり光が当たってこなかった男性版フェムテック「メンテック」の分野にも新興ブランドが登場。特に尿漏れグッズをはじめとするミドル世代以上の男性向けケアアイテムの分野では、デザイン性の高いアイテムを展開するブランドが増えているほか、「おじさん」と「テクノロジー」を掛け合わせ、該当ジャンルを「おじテック」と呼称する企業も現れた。その最たる例が、クロスプラスが手掛けるメンテックブランド「キープガード(KEEP GUARD)」や大手繊維商社の生産背景や物流網を活用して商品を企画するケアブランド「メロウ スタイル」、クラウドファンディングサービス「マクアケ(Makuake)」で好評を博した「アムダブル(amw)」だ。
ビームス監修のプレミアムラインも展開、クロスプラスの「キープガード」
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クロスプラスは、女性の健康上の課題を解決するカテゴリー「フェムテック」に比べ、男性版の「メンテック」に対する世間の意識が高まっていないことに着目。特にシニア世代向けのメンテック製品でデザイン性に富んだものがほとんどなかったことから、メンテックならぬ「おじテック」ブランドという位置付けでキープガードを立ち上げた。担当者は「今のシニア男性は外見的にも精神的にも若々しいが、やはり年齢を重ねるにつれて身体的には不調も出てくる。その部分のギャップを埋めていけたらと考えた」とブランド立ち上げの意図を語る。
Image by: クロスプラス
現在キープガードで展開しているのは、40〜60代の男性をターゲットに、男性の尿漏れによる下着のシミや臭いを防ぐ「尿漏れパンツ」。パンツの内面に吸水布を備えており、10ccまでの尿をシミ、臭いに至るまで完全シャットアウトする。ペットボトルの蓋一杯の容量が8ccであるため、重度の尿漏れ以外は問題なく対応できるという。また、「オシャレなパンツ」として着用できるようファッション性にも配慮しており、ブラックやカーキなどの単色のほか、豹柄や迷彩柄などをラインナップしている。「当社調べによると、40代以上男性の4人に3人が日常生活の中で尿漏れの悩みを抱えている。マーケットとして需要は必ずある」と担当者。
Image by: FASHIONSNAP
7月からは、「ビームス(BEAMS)」がデザインからパッケージまで全面監修したプレミアムラインを展開。モード、カジュアル、トラディショナル、ドレスといったスタイルカテゴリーごとにチェックやペイズリー柄などデザイン性に富んだパンツをラインナップするほか、通常ラインの抗菌防臭・ナノファイン加工に加え、消臭・接触冷感・給水速乾加工を施すなど機能性を追求した。通常ラインは現在ドラッグストアやホームセンター、GMSの肌着売り場などで取り扱っているが、プレミアムラインは百貨店などでの打ち出しを予定しているという。
Image by: クロスプラス
2022年9月に販売をスタートしたキープガードの総出荷数は、2023年6月時点で約1万5000着。ブランド開始当初は半年で1万着売れればヒットと考えていたため、想定を大きく上回る売れ行きとなっている。担当者は「おじテック領域は競合も少なく、まだまだ成長の余地がある。キープガードの尿漏れパンツはクロスプラスのライフスタイル部門でダントツの人気商品になるだろう」と自信を覗かせる。展開2年目となる2023年度は、取り扱い店舗数を年初時点の約600から5倍の約3000まで拡大することを目指しており、想定売上は約2億円。2024年度には店舗数を1万、売上を5億円まで伸ばすことを目標に展開を続けていく。
徐々に広がる、スタイリッシュな「おじテック」商品
ファッショナブルな「おじテック」アイテムに注目する企業はクロスプラスだけではない。ケアブランド「キス マイ ライフ(KISS MY LIFE)」を運営するTOKIMEKU JAPANは、アクティブシニア世代のウェルネスの悩みを解決するブランド「メロウ スタイル(MELLOW STYLE)」を展開。ブランド名の「MELLOW」は、「熟している、豊かで美しい、円熟した」などを意味し「人生で様々な経験を積み重ねてきたシニア世代が豊かでイロドリ豊かな人生を楽しむこと」をコンセプトに掲げている。
Image by: MELLOW STYLE
同ブランドは、TOKIMEKU JAPANの資本提携先である大手繊維商社 田村駒が持つ繊維における専門的な知見や生産背景、物流網を活用しながら商品を企画。現在は日本人の5人に3人が経験するという尿漏れにフォーカスし、吸水パッドや吸水ショーツなど「大人のプチ漏れ」をケアする商品を届けるサブスクリプションサービスを提供している。ブランドは売上について非公開としながらも順調に成長を続けているといい、メロウ スタイル担当者は「今の時代のシニア層は気持ちも見た目も若い方が多いので、ケアアイテムを使用する際の心理的障壁を取り除くためデザイン性にはこだわっている。現在はメンズ領域を中心にサービス展開をしているが、今後は女性用ケア用品の分野にも参入を検討しており、将来的にはアジアを中心とした海外展開も視野に入れている」と話す。
持続可能な社会貢献と機能性、デザイン性を重視した商品の開発を手掛けるアムダブルは、今年4月にメンズアンダーウェアブランド「アムダブル」を始動。30代以上を対象に尿漏れ防止、抗菌、防臭などの機能を備えたスタイリッシュなデザインのアンダーウェアをクラウドファンディングサービス「マクアケ」に掲載したところ、開始から40分で目標支援金額として設定していた30万円を達成、最終的に目標の682%となる総額204万7180円を集めた。8月下旬の一般販売に向けて、現在生産を行っているという。「尿漏れに悩む人たちのニーズに応えたいという気持ちで始動したプロジェクトだったが、想像以上の反響で驚いた。8月に発売する第1弾の反応を見て、デザインやシルエットをアップデートし、よりお客様のニーズに応えられる商品を作っていきたい」(アムダブル担当者)。
Image by: amw
総務省統計局によると、2022年10月時点で日本人の15歳未満人口は前年から28万2000人減少して1450万3000人。国民全体の11.6%と過去最低の数値を記録した。対して、65歳以上の人口は前年から2万2000人増加して3623万6000人で、国民全体の29%と過去最高の数値となっている。2036年には全人口の3人に1人が65歳以上の高齢者となり、平均年齢もますます高まると推計されるなか、ミドル世代以上向けケア用品のマーケットにかかる期待は大きい。
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