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逆転の発想、メンズブランド「サージュデクレ」がサイズダウンで好調

クリエイティブディレクター
HAKATA NEWYORK PARIS

 1980年代初め、「ポップインターナショナル」というメーカーがあった。その後、傘下ブランドの事業部が分社独立し、89年に「ギャラリードポップ」となる。当時から筆者が注目していたメーカーで、98年にはレディスの「pas de calais/パドカレ」、2001年にはメンズの「SAGE DE CRET/サージュデクレ」が旗艦ブランドとしてスタート。ともに上質な素材、生成りやカーキ、グレーを基調色にしたアイテムは、独特の世界観を持ちインターナショナル・クリエイティブというカテゴリーで、海外からも注目された。

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 両ブランドともマスファッションにはない素材や色、加工法がすっかり定着し、日本でも顧客を捉えて離さないのか。毎シーズンの展示会には多くがつめかけている。今年9月中旬には2024 SPRING & SUMMER EXHIBITION TOKYO SHOEROOMの名のもと、パドカレの25周年を記念した春夏コレクションが2回に分けて開催された。筆者もぜひ覗いてみたかったが、出張のスケジュールが調整できず断念せざるを得なかった。

 筆者の場合、自分が実際に着て確かめるとなると、メンズのサージュデクレになる。2000年代初めには事務所近くにショップがありパンツを購入した。だが、次第にワークテイスト一辺倒になり、店舗の撤退が重なったことで興味を失っていった。一方、レディスのパドカレは仕事柄、必ずチェックするようにしている。毎シーズン、展示会に出向くのは難しいが、オンラインサイトの写真を見て気になるアイテムは、実店舗に出向いて素材や加工法を確認するのがルーティンになっている。

 パドカレのモノづくりの基本路線は、「心理的、精神的にずっと若々しい感覚でいたい」というマインドを軸にしているように感じる。そんなブランドも誕生から25年が経ち、初期の頃にファンになった顧客はアラフィフを超えている。だから、顧客の声に基づいたショップサイドからの要望、ネット通販でダイレクトに購入したお客から寄せられる意見などを企画に反映すれば、顧客の肉体的年齢も考慮することになり、どうしてもサイズアップは否めない。その方が往々にして売れるケースがあるからだ。

 商品企画を行う上ではこれが一番難しい選択だ。顧客の年齢に合わせていくと、サイズアップして野暮ったいデザインになっていく。それが原因で陳腐化し売れなくなったブランドは少なくない。だから、企画担当者はコンセプトを守るために、サイズを含めフォルムは維持していきたい。反面、営業サイドは歳は取っていくものの、安定して購入してくれる顧客も繋ぎ止めたい。商品企画では、どうしても二律背反するテーマに挑まなければならず、ジレンマに陥ってしまうこともある。

 他社の戦略はどうか。例えば、ヨウジヤマモトは、ワイズでブランドをスタートしたが、ワイズは若年層(35歳以下)を対象とするため、加齢した顧客をスライドさせるような企画、サイズアップで取り込むような手法は取らない。ワイズにはあくまでターゲット・エージがあるのだ。だから、歳を取った顧客はヨウジヤマモトに移行してもらったり、GroundY、S’YTE、LIMI feuといったスピンオフのブランドを抱えることで、幅広いターゲットを捕捉しようという戦略が見て取れる。

 各ブランドはコンセプトとサイズ規格を守る。多ブランド化はお客の嗜好の変化に対応する狙いもあると思うが、ブランドを増やすことは微妙なサイズ対応で機能する面もあるのではないか。だが、それができるのは多くのブランドを抱えられる企業基盤があればこそだ。

 そう考えると、ギャラリードポップにはパドカレ、サージュデクレと、レディス、メンズとも1ブランドしかない。特に売れ筋のパドカレはコンセプトを守る上では、顧客の新陳代謝を図っていくことが求められる。そんなパドカレが先日、画期的な企画を打ち出した。11月1日付けの繊研PLUSによると、「ギャラリー・ド・ポップのレディス「パドカレ」 メンズ「サージュデクレ」をサイズダウンして販売」ということだ。

作りや始末がいいメンズを活用

 報道をもう少し詳しく見てみると、「「パドカレ」は23年秋冬物で、初めて自社のメンズブランド「サージュデクレ」をサイズダウンした協業商品を発売し、順調に売れている」。

 「パドカレは着心地や肌触りの良さ、程良いリラックス感がテーマで、サージュデクレはトラディショナル、ワーク、ミリタリーをベースにしたメンズカジュアルウェアのブランド。今回「異なるテイストのブランドが協業することで、新たなスタイリングや世界観が発信できた。パドカレにないアイテムで好評」と、10月18日から販売をスタートし、1週目は予算比2ケタ増となった」。

 「協業商品はシャツ、ベスト、パンツ、ブルゾン、コートの9型で、ミリタリージャケット(税込み5万600円)やフーデッドコート(5万7200円)、リバーシブルコートなどを企画。特別に「サージュデクレ・パドカレ」のダブルネームが付いている。10月中旬過ぎでも気温が高く、「ベストや軽めのアウターの協業商品がヒットした

 今回の企画意図は何だったのか。報道では詳細の説明はない。ただ、メンズのサージュデクレをサイズダウンしたことがレディスのパドカレにうまく合致したこと。トラディショナル、ワーク、ミリタリーという異なるテイストがパドカレにはないアイテムを生み、ブランドを活性化したのは確かなようだ。

 意図は何なのか。パドカレは顧客のエージが上がっていって、いつの間にかサイズアップしていたから、サージュデクレをサイズダウンしてすり合わせたのか。それともインターナショナルブランドとしては、折からのトランスジェンダーへの対応を意識したのか。ただ、レディスはメンズとは基本パターンが違う。単純にサイズダウンしたから売れるというわけでもないだろう。1980年代からギャラリードポップのモノづくりを見てきたが、そんな短絡的な発想をするメーカーとは思えない。

 こんな風にも考えられる。大手アパレルのJUNはレディスをROPEというブランドで企画し、販売していた。かつて関係者からこんな話を聞いた。「ROPEのジャケットはメンズのJUNの仕様なので、作りがしっかりして型ぐずれしにくいんですよ」と。同じジャケットでも男性と女性では体格や動きが違うから服にかかる負荷が異なり、細部の摩耗や劣化が変わってくる。当然、求められる耐性も異なるわけで、芯地の使い方や細部の縫製、始末が違う。レディスではメンズほど丈夫にする必要がないから、ソフトな作りになるのだ。

 今回、メンズのサージュデクレをサイズダウンしたわけだが、素材使いや縫製仕様がそのままなら、従来のパドカレにはないメンズライクな質感やしっかりした着心地が生まれたのではないか。それが逆にファン客にとって新鮮(新たなスタイリングや世界観が)と受け止められたと思う。今年は例年になく気温が高いことから、ライトメイドなベストやアウターが売れるのもうなづける。顧客が加齢によりサイズアップしたから、実験的にメンズにすり寄せたのが奏功したいうのは、どうやら考えすぎかもしれない。

 DCブランド全盛期にはこんなやりとりがあった。商品企画においてデザイナー側と営業側の意見を調整する。そのバランスはどうあるべきかで、侃々諤々、喧々轟轟の議論がなされていた。あのビギグループですら、落とし所はデザイナー側が求める「見せる服」が3、営業サイドが考える「売れる服」が7の比率だった。「俺がマーチャンダイジングをしっかりやって、デザインを修正したからビギは売れたんだ」と、トップの大楠祐二氏は豪語していた。だが、そうしたビジネス重視のやり方に反旗を翻し、同グループを去ったデザイナーは少なくない。今ではそうしたMD重視の考え方も変わってきている。

 営業重視で売れ筋ばかりを追いかけると、巷には似たような商品ばかりが溢れてしまう。バカの一つ覚えのように展開されるダウンジャケットなんかがそうだ。マスファッションばかりを狙うと価格勝負になって値崩れがひどくなる。売れるか、売れないかはあくまで結果論。重要なのはいかに売れるもの、お客が欲しかったものを手当てできるか。レディスだから、可愛くて、甘くて、エレガントなものが売れると信じて疑わない。それも企画力が硬直している最たるものではないか。パドカレはそうした考えを見事に覆したかたちだ。

 商品を企画するには、物事を正面から捉えるだけでなく、右から左から斜めから見て考えることも重要なのだ。そうすることで、これまでとは違ったアイデアが生まれてくる。企画会議の場で、「トラッド、ワーク、ミリタリーをベースにするサージュデクレのテイストでパドカレを作ったらどうだろう」。誰かが発した何気ないアイデアが硬直化した企画を打ち破り、柔軟な発想へと変えていく。

 「その手もありだな」「やってみる価値はある」。上層部がそう決断し、現場を後押しする。そんなスタンスだから、服好きの顧客を捉えて離さない。モノづくりには時に逆転の発想も必要なのである。

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