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経産省がガイドラインを設定 日本の事業者が取り組むべき環境配慮設計とは?

経産省がガイドラインを設定 日本の事業者が取り組むべき環境配慮設計とは?

クリエイティブディレクター
HAKATA NEWYORK PARIS

2023年12月、EU(欧州連合)はアパレル事業者が売れ残った衣服の廃棄を禁止することに合意。併せて、再生可能な素材を使わない製品を市場から締め出すことについても検討を始めた。先進7カ国首脳会議(G7)のメンバーである日本が同様の行動を示すのも時間も問題だろうな。と思っていたら、経済産業省はこのほど繊維製品の「環境配慮設計」のガイドライン案を示した。日本としても欧州の環境規制に対応しなければ、世界市場から締め出される恐れがあると判断したようだ。

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 素案では、衣料品を製造するあたりリサイクルしやすい設計や、EU同様に再生繊維を活用するなど11項目を設定し、アパレル事業者に対応を促している。対象となるのは、膨大な製品を扱う繊維メーカーやアパレルの製造卸、大手SPAだ。これらの事業者は国のガイドラインに沿った事業計画を策定し、生産から販売までを行わなければならないことになる。

 また、経産省はガイドライン案に合致した製品に専用マークを付けることも検討中だ。2024年度~26年度までにJIS化、27年度~28年度までにISO規格化を目指すという。

事業者が取り組むべき環境配慮設計とはいかなるものか。項目は以下になる。

 ①環境負荷の少ない原材料を使用する

 ②GHG(温室効果ガス)排出抑制、省エネルギーに取り組む

 ③安全性に配慮する

 ④水資源に配慮する

 ⑤廃棄物を抑制する

 ⑥包装材を抑制する

 ⑦繊維くずの発生を抑制する

 ⑧長期使用できる製品を作る

 ⑨リペア・リユースサービスを活用する

 ⑩リサイクルしやすい易リサイクル設計にする

 ⑪再生資源を使用しているか

 以上について、経産省はアパレル事業者に対し環境に配慮したPDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルのもとで事業展開することを求めており、事業者にとってリサイクルへの取り組みは避けて通れないということになる。

全ては自然環境を守ることから

 では、項目をかいつまんで見てみよう。まず、①の「環境負荷の少ない原材料」とは何かである。最近では「Ecological Materials(エコマテリアル)」という用語が使われることが多い。元々は日本の素材研究者が議論を重ねる中で誕生した言葉で、世界的に認知されるようになった。ただ、一口にエコマテリアルと言っても、考え方は色々ある。

 例えば、「環境に負担をかけずに作った材料」だ。自然界から調達できる綿や麻、生糸で作った天然繊維、とうもろこしや芋のでんぷんを原料にしたポリ乳酸繊維、そして羊などの動物からとれる天然の毛、皮革がそうだ。また、これらは「有害物質を含まない」し、製造プロセスが単純で時短化されるほど「省資源、省エネ」につながる。

 多少ニュアンスは異なるが、「環境に負担をかけずに処分できる材料」もある。いわゆるリサイクルが可能で化学物質が含まれていないものだ。土に埋めると生分解され、処分の際に環境に負荷をかけないものもある。オーガニックのコットンやリネンといった天然繊維、レーヨン、リヨセルなどの再生繊維、紙から作った糸、竹を使った繊維、リサイクルで生まれたエコペット・リサイクルナイロン、人工的なフェイクファー、フェイクレザーが該当する。

 ④の「水資源に配慮する」とは、水は決して無尽蔵ではないとして、できるだけ水質を汚さないように健全な水の循環をを心がけること。衣料品の製造・加工でも、染めた布に残る余分な染料や糊を洗い落としたり、ジーンズなどを中古風に仕上げるために洗いをかけたりと、大量の水を使用する。これらが水質汚濁を引き起こす要因とするなら、製造・加工の段階から改善していくことも重要になる。

 TSMC(台湾積体電路製造)の工場が稼働する熊本県では、半導体製造において水を大量に使用するため、「地下水の涵養」に取り組んでいる。これは降水や湧き水、河川や湖沼などの水を地下に浸透させることで、工業用水の需要に対しできるだけ地下水を蓄えておく対策だ。また、森の木々は水資源を蓄え、育み、守ることから、単に水を溜めるだけでなく、中長期的には植林や森林の保全にも目を向けなければならない。

 これを繊維製造に置き換えると、どうだろう。1キロの綿を作るには、約1万リットルの水が必要だと言われている。綿の栽培はエジプトやインドなどで盛んに行われているが、これらの国はもともと水資源に乏しく、綿畑では河川や地下水から大量の水を引く灌漑用水に頼っている。ところが、熱波や干ばつで水不足になると、農作物への干害は避けられず綿製造に影響が出る。植林など長い視野で水源涵養に取り組みながら、再生コットンなどの使用も進めていくことが必要なのだ。

リサイクルしやすい衣料品とはの基準づくり

 ⑦の「繊維くずの発生を抑制する」とは、どうすればいいのか。そもそも繊維くずとは木綿くずや天然繊維くず、羊毛くずなど繊維でできたゴミの総称を指す。縫製工場など製造現場より排出される端切れや裁ち落としなどは「くず繊維」と呼ばれ、一般廃棄物に分類される。産業廃棄物に分類された繊維くずは、産業廃棄物法に基づき適切に処分しなければならない。ただ、紡績・織布工場から排出されるアクリル繊維やナイロンなどの合成繊維に関しては、「廃プラスチック類」に分類されるため、処分方法が異なってくる。

 以前にも書いたが、リサイクル方法には廃棄物を回収して、新製品の原料や材料として再利用する「マテリアルリサイクル」、廃棄物を焼却した際に発生する熱エネルギーを回収して利用することが「サーマルリサイクル」、廃棄物に薬品による科学的な処理や熱処理を行い、一旦原料に戻してから再利用する「ケミカルリサイクル」がある。

 また、不要になった衣料や布地などをワタ状に戻す「反毛リサイクル」があるが、断裁された繊維が細かくなればなるほど布に戻すのは難しい。結局、再利用が難しいものは、破砕や焼却をした後で埋め立て処分するしかない。となると、CO2が発生するし、土壌汚染も懸念も出てくる。つまり、なるべくならリサイクルや処分を必要としないように繊維くずそのものの発生を抑えていくということだ。

⑩の「リサイクルしやすい易リサイクル設計」とは、デザインや製造の過程からリサイクルしやすいものを考えていくこと。ただ、衣料には表地の他に裏や芯、ボタンやホック、ファスナーの副資材があり、染料やプレスなどの溶剤も使われている。また、職人の技によって高度な装飾や加工も施された衣服もある。リサイクルしやすくするにはそうしたものにも手をつけ、解体を容易にすることから考えなくてはならない。

 パタゴニアは製品に使用する素材の90%以上をリサイクル原料で賄っていると宣言する。だが、それは自社による基準、手法で行なっているに過ぎない。同社がペットボトルをフリースの原料に再利用していると言っても、他社が売れ残ったり着古したりしたフリースを新しいフリースの原料に再利用するのと、どこがどう違うのかはよくわからない。

 一方、日本では古来から紙から作った糸で布を折り上げる技術がある。和紙を材料とした着物の「紙衣(かみころも)」だ。製紙最大手の王子HDの子会社王子ファイバーは、エクアドル産のマニラ麻を原料にした「かみのいと OJO+(オージョ)」を開発。ファイブフォックスはギャバジンK.Tにこの素材を使用したブルゾンを開発した。マニラ麻は肥料や薬品を使わずに栽培が可能で環境にやさしい。天然繊維なので燃えても有害物質を出さない。紙だからリサイクルも容易だ。

 つまり、原料の違いやリサイクルのプロセスによっても、環境に対する負荷は異なってくるのだ。まずはリサイクルしやすい製品とはどんなものか。明確な評価基準を設けることが必要だろう。さらにリサイクルされた繊維で製造された衣料品については、消費者に理解してもらう意味でアパレル業界で統一のルールを作らなければならないということだ。

 2015年、温室効果ガス削減に関する「国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)」が合意された。これにより、日本は中期目標として2030年度の温室効果ガスの排出を2013年度比で26%削減する目標が課された。ただ、この数値は米国の14~21%、EUの24%に比べると、高い。日本にとっては欧米諸国からの圧力と見られなくもないわけだ。

 穿った見方をすれば、EUが実現を目指す「再生可能な素材を使わない製品を市場から締め出す」ことも、日本をはじめアジアからの製品に対する輸入障壁にもなるだろう。そのためにも国際的な統一ルールが必要なのだが、その一方で、⑧の長期使用できる製品を作ったり、⑨のリペア・リユースサービスを充実するなど、衣料品そのものの価値を見直すという原点に帰ることも重要ではないか。まず隗より始めよである。

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