メンバーシップ・ホールセール・クラブのコストコでは万引きとは無縁だと思われている。なぜならコストコで買い物するには会員に加入する必要があり、個人情報を収集できる立場にある。
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また年会員費もゴールド会員の60ドルとエグゼクティブ会員の120ドルと決して安くはない。気軽に加入できないほどの年会費であれば、良からぬことを考える家計の苦しい世帯を寄せ付けないのだ。
またコストコの入り口ではスタッフが常駐し非会員の入店をブロックしている。会員が連れてくる同伴客についてもコストコの会員規則で厳しく制限をもたせてあるのだ。
昨年からはさらに厳格に目を光らせるようになり、身分確認のため抜き打ちで免許証まで提示させたりする。
一部のコストコではエントランスにスキャナーを導入し会員カードの有無を徹底して監視している。
店の出口では常駐スタッフが複数人でレシートとカートにある商品を確認している。
この結果、コストコCFOのリチャード・ガランティ氏は昨年5月、(万引きを含む在庫の減少である)シュリンケージの変化はほとんどないとした。
「我々のシュリンケージに大きな変化は見られない。その点では幸運だった」とガランティ氏は決算説明会で胸を張ったのだ。
全米小売業協会(NRF)が昨年9月に発表したデータでは集団略奪が増加していることで、すでに圧迫されていた利益をむしばんでいるとレポートしている。
盗難や商品ダメージなどの在庫ロスは2022年、総額で1,121億ドル(約17.4兆円)にも上っており前年の939億ドルから大幅に増加しているのだ。
NRFのデービッド・ジョンストン副会長は「小売店に対する犯罪が横行する中で業者は未曾有レベルでの盗難を目の当たりにしており、 状況はいっそう酷いものになっている」と述べた。
一部のアナリストは「窃盗の増加ペースが売上高の伸びを上回っている」と指摘。ディックス・スポーティング・グッズやファイブビロウ、ダラーゼネラル、TJX等の大手チェーンストアも決算声明で組織的犯罪集団による略奪が急増していると警鐘を鳴らしていた。
ターゲットのCEOであるブライアン・コーネル氏は昨年5月、「将来を見据え、私たちは今年の収益性が前年に比べて5億ドル以上減少すると予想しています」とし「在庫の縮小には多くの潜在的な要因がありますが、盗難や組織犯罪がこの問題の重要な要因となっています」と述べた。
そしてターゲットは窃盗犯罪による損失を抑えるために4州に展開する9店舗を閉鎖した。
チェーンストア最大手のウォルマートも不採算店を理由に2019年以降、150ヶ所の店舗を閉鎖しているのだ。売上不振の不採算店というよりも盗難が多すぎて採算が合わないという意味となる。
ウォルマートCEOのダグ・マクミラン氏は2022年12月、万引きの多さから閉店も辞さない考えを示していたからだ。
"万引き天国"の米国で特別区になるコストコでも場所によっては万引きから逃れられないところもある。
巨大掲示板のレディット(Reddit)でスタッフルームに貼り出された「2024年度トップ・シュリンケージ・アイテム(Top Shrink Items of FY24)」の画像が掲示され議論を呼んでいる。
万引き等で盗まれた商品に金額まで表示しているのだ。この画像はニューヨーク市マンハッタンに唯一あるコストコ内で撮影されたもの。
このコストコがあるイースト・ハーレムの「イースト・リバー・プラザ(East River Plaza)」は昨年10月までターゲットがあった場所だ。
万引き多発により昨年10月21日に閉鎖したターゲットの隣に、問題のコストコがある。
このことから600店以上あるコストコでもトップクラスの高シュリンケージ店だと推測できるのだ。
トップ・シュリンケージで目を引くのは450ドルのダイソンのコードレス掃除機だ。コストコ・イースト・ハーレム店では6210ドル(約96万円)分となる14台のダイソン・コードレス掃除機が万引き等で紛失した。
1ヶ月に1台強は他のチェーンに比べればかなり少ないとはいえ、あの厳格なチェック体制をどのように突破できたのか不思議でならない。
また大きな商品では23ドルのカークランド・ペーパータオルも5021ドル分がやられている。
12本のペーパータオルが入った商品は218個分に相当。1週間で4個の割合でペーパータオルが紛失していることになる。
この2つ以外は万引きされやすそうな小さいものが目立つ。
32ドルのジレット替刃が6,189ドル(193個)、デュラセル乾電池で21ドルの単3が3,527ドル(168個)と単4が2,916ドル(139個)、24ドルのビタミンD3が1,694ドル(71個)、25ドルのマルチビタミンが3,407ドル(136個)との紛失額になる。
シュリンケージなのでレジ係りのスキャンミスなども含まれ必ずしも全てが盗難で紛失にはならないが、会員でも手癖の悪いスティッキー・フィンガー(sticky finger)がいるのだ。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。英語のネイティブ表現にスティッキー・フィンガー(sticky fingers)があります。"sticky"は「粘着性のある」「ねちゃねちゃした」という意味で、sticky fingersを文字通り訳すと、ノリが指に付いたような「ねちゃねちゃした指」になりますが、慣用句の意味は「手癖が悪い」「盗み癖がある」です。スティッキー・フィンガーといえば1971年に発売されたローリング・ストーンズのアルバムです。芸術家アンディ・ウォーホル氏が手掛けたスティッキー・フィンガーのアルバムデザインは、ジーンズを穿いた男性の股間というユニークなものです。アルバム・ジャケットの表側には本物のジッパーが取り付けられていたので昔、レコード屋で見かけた方も少なくないのではと思います。このアルバムの代表曲には"精製されていないヘロイン"や"黒人女性"の隠語となる「ブラウン・シュガー」がありますね。ヘロインとかスティッキー・フィンガーとか無縁なコストコでもハーレムなどの場所によっては素行の悪い会員によって被害を受けているというお話。
手癖が悪くてもダイソンのコードレス掃除機やカークランドのペーパータオルのような大型アイテムをどうやって外に持ち出せたのでしょうか?会員にプロのマジシャンがいたとか?「悪いマジシャンに本気出されたら、コストコでも見抜けない説」の検証をお願いしたいですね。
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