おなかが大きくてもウエストにくびれを作る独自のパターンで製作したドレス
日本では挙式時に5人に1人が妊娠している調査報告がありますが実際に妊婦専用のウェディングドレスは少ないです。妊婦の花嫁がドレスに抱く悩みや不満を、ファッションデザインで解消しているラナチュールを紹介します。
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美しさにこだわる
デザイナーの昆野美津子さんは、80年にアパレル企業のデザイナーとしてキャリアをスタート。96年に独立してオートクチュールを始め、97年からウェディングドレスに携っています。18年にラナチュールを設立。マタニティーウェディングドレス「シェリアン」の企画製造、卸、レンタル事業を行っています。
一般的なドレス店では、妊婦用には大きいサイズのウェディングドレスを選び、おなかの大きさに合わせて調整します。そのため、バストが合っていなかったり、ドレスにしわが寄ったり、シルエットが崩れたり、美しさが後回しになっていました。また、この方法は本人とおなかの赤ちゃんに負荷がかかります。「挙式の時にすごく苦しかった」と昆野さんは何度も耳にしました。
そこで1000人以上の妊婦の体のデータを基に、ドレスのパターンを開発しました。ウエストの高い位置で自然なくびれを作る設計で、体にフィットした美しいラインが実現します。おなかが大きくなる妊娠後期でもAライン、プリンセスライン、ソフトマーメイドなど好きな形を無理なく着用できます。おなかの膨らみはレースやチュールを生かした立体的なデザインで目立たないようにしたり、スッキリしたシルエットであえて見せたりと、様々な要望に応えます。150着近くの選択肢を揃え、独自のパターンは次世代に引き継ぐ基盤を作るために特許を取得しました。
困り事解決のため
今年5月には、ビネット&クラリティと共同でデジタルフィッティングルームを開発しました。試着時と挙式時では、妊婦の体形は変わります。挙式当日の自分の姿をイメージしにくいことは課題でした。ラナチュールが蓄積した妊婦の体の変化のデータを基に、試着時の体の状態からデジタルの力で予測してアバターを作成します。変化した体形でのドレス姿を様々な角度から見ることができ、ドレスを選びやすくなりました。また、着用時の体やおなかの赤ちゃんにかかる負担も、シミュレーション機能で可視化できます。
昆野さんは、挙式を終えたお客様から「ラナチュールのドレスで良かったと言ってもらえることが一番のやりがい」と言います。結婚式の形も多様化する中で、フォトウェディングなどの協業も積極的に行っています。地方へのアプローチも強化し、必要としている人に自社の情報を広く届けていきたいそうです。
■ベイビーアイラブユー代表取締役・小澤恵(おざわ・めぐみ)
デザイナーブランドを国内外で展開するアパレル企業に入社、主に新規事業開発の現場と経営で経験を積み、14年に独立、ベイビーアイラブユーを設立。アパレルブランドのウェブサイトやEC、SNSのコンサルティング、新規事業やイベントの企画立案を行っている。
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