客を引き付けるには品揃えの魅力は欠かせない。物作りへのこだわりや店頭の見せ方、伝え方にも工夫を凝らしている。各部門とのコミュニケーションを深め、一緒に築き上げている。商品企画、販売担当者に聞く、客に商品を伝える工夫とは?
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店長がオーダー、高い消化率
今年、ブランド誕生30周年を迎えたダウン製品メーカーのナンガ(滋賀県米原市)。コロナ下によるキャンプブームやアウトドアブランドへの注目もあり急成長し、近年は直営出店を拡大している。10月19日には神戸で11店目となる直営店を開設する。渡邊和弘販売部長は「お客様とのつながりや商品知識が本部と販売現場で乖離(かいり)しないように」と心掛ける。
同社は15年に直営1号店を東京・目黒に出店したが、直営出店を本格化したのは22年に出店した旗艦店の原宿店以降。コロナ禍もあり、直営出店は少し遅れ、京阪地区や北海道ではFCも開設した。
渡邊部長は19年に入社。それまではジーンズカジュアルブランド、ジュエリーメーカーを経て、直前までは大手スポーツ専門店チェーンで、PB商品を手掛けていた。ゴルフからアウトドア、ライフスタイルまで全般的なウェアを企画、生産していた。
本物を突き詰める
物作りに携わるようになる中で「やはり本物を突き詰めて、世の中にない物をお客様に提供したい」という思いが強くなった。そこで、自社工場を持ち、ダウンジャケットや寝袋を生産するナンガを選んだ。入社後は「物作りをすごく大事にしていて、とても自分に合った」。ちょうど直営店を広げると同時に春夏商品も開発していこうという気運もあり、これまで培った経験が生かされている。
昨年には組織改編があり、販売部と商品部が新設された。渡邊部長が管轄する販売部には販売課と販売計画課がある。販売課は直営店とECを運営。販売計画課は直営店と卸先部門も含めた製品供給のディストリビューションやプロモーション・広報、VMDなどを担う。
現場視点で考える
販売には、まず「何を、どの時期に、どれぐらい必要か」という立案が必要になる。ただ、渡邊部長は計画立案を「どちらかと言うと、数字からは入らない」という。前年の数字や課題を抽出した上で、今季はこうしたいというMDを組み立て、ピークにしたいところに向けて何をアピールするかプロモーションを考える。同時に、顧客へ最適に伝えるVMDを落とし込み、展示会前には、これらのアウトラインを組み立てる。
展示会では取引先のオーダーと共に、同社では直営店でも各店のオーダーを取る。「店舗ごとに顧客層も違うので、現場を一番よく知るメンバーがお客様の顔を思い描きながらオーダーしてほしい」からだ。
直営店の全店長を集めて、企画説明などの会議も数回行い、全販売員にも製品の意図を伝える。他社では本部の指示で販売計画を立てることも多いが、同社では各人が当事者意識を持ち、「今年はさらに現場での浸透力が高まってきた」と見ている。こうした会議を毎月開催するのは大変だが、「店舗を回っても会話の質が変わってきた」と実感している。今年の春夏物も大幅に予算を超過達成した。同社では直営店のプロパー消化率80%を目指しているが、おおむね達成しているという。
ファッション業界、アウトドア業界を目指す人たちには「おそらく好きなことを仕事にしようと思うのだろうが、簡単に情報を調べるだけでなく、深掘りする探究心、実際に経験することが大事」と助言する。探究心を維持するには情熱も必要になるが、「探究心は、どんなキャリアや役職になっても持ち続けなければいけないこと」と指摘する。
(繊研新聞本紙24年10月16日付)
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