

トランプ政権が中国およびアジア各国に課す高関税の品目は、家電やおもちゃ、アパレル、携帯電話やパソコン、ヘルス&ビューティ、家具やホームデコ、アクセサリー、キッチン、アウトドアグッズ、医薬品&サプリメント、学用品、そして自動車&バイク、自転車と多岐に渡る。政権は、これらの製品を米国に輸出する一部の国について90日間の猶予期間を設けたが、終了後の7月8日(米国)以降は中国の145%を最大にカンボジアに49%、ベトナムに46%、スリランカとミャンマーに44%の高関税が課せられる。また、バングラデシュに37%、タイに36%、台湾に32%、パキスタンに29%、インドに27%、韓国に25%、日本とマレーシアに24%の関税が課され対米輸出への影響は必至だから、それまでに各国と米国との協議でどこまで折り合いをつけるかが注目される。
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では、課税される具体的な商品名と輸出国を見てみよう(Fortune.comより)。まず、洗濯機、ドライヤーは韓国、中国。冷蔵庫は日本、中国。掃除機、空気清浄機は中国、マレーシア。コーヒーメーカー、ブレンダー、トースターは中国、タイ。おもちゃやボードゲーム、子供用家具や遊具セットは中国のみ。乳幼児向けの器具は中国、ベトナム。子供服はミャンマー、カンボジアになる。Tシャツ、ジーンズ、アウターはバングラデシュ、ベトナム、インド。アンダーウェアとソックスは中国、スリランカ、パキスタン。競技用ウエア、スニーカーは中国、ベトナム、カンボジア。ファストファッションはバングラデシュ、ベトナム、インドになる。スマートフォン、パソコンは中国、ベトナム、韓国、台湾。スマートウォッチ、フィットネストラッカー(身体活動量の記録機器)は中国、マレーシア。パソコンのモニター、パーツは中国、台湾。テレビは韓国、ベトナム。周辺機器、アクセサリーは中国のみになる。
スキンケア(シートマスク、美容液、保湿剤)は中国、韓国、タイ。ヘアケアは中国、ベトナム。化粧品は中国、韓国、インド。電動歯ブラシ、カミソリは中国のみになる。机、椅子、本棚は中国、ベトナム。ラグ、カーテンは中国、インド。壁紙、ランプは中国、マレーシア。各種道具、金属器具は中国、台湾。寝具、タオルは中国、パキスタン、インド。自転車、電動バイク、ペット用品、携帯アクセサリー、ソーラーパネル、充電器はそれぞれ中国のみになる。ゴールド&シルバーのジュエリーはインド、タイ。ファッションジュエリーは中国のみ。腕時計は中国、日本。ハンドバッグ、財布は中国、インドになる。ポット、フライパン、台所用品は中国、インド。テーブルウエアは中国、ベトナム。給仕用コンテナは中国のみになる。カバン、バックパックは中国、ベトナム。テント、寝袋、アウトドア用具は中国のみ。スポーツウエアはベトナム、カンボジアになる。
ジェネリック&処方箋薬はインド。痛み止めは中国、インド。ビタミン剤、サプリメントは中国、インド。風邪&インフルエンザ薬は中国、インド。糖尿病関連の用具、治験用具は中国のみとなる。ノート、ペン、紙類は中国、インド、計算機、学習家電は中国のみになる。そして、日本がいちばん懸案とする自動車では新車は日本、韓国。交換用部品、タイヤは中国、EU。バイク、スクーターは中国、インド。電気自動車のバッテリーチャージャー、コンバーターは中国のみになる。

上記のリストを見る限り、米国の庶民生活をアジアからの格安商品がいかに支えているか。その大部分が中国製であることがわかる。消費者は関税の猶予期間中にできるだけ買い溜めに動くとみられるが、終了後に価格が上昇すれば消費への影響は避けられない。輸入業者や小売事業者は、アジア諸国以外の多様な国から最適調達を探るとみられるが、サプライチェーンを作り上げるには時間がかかる。また、消費者がインフレに対する生活防衛を考えて、中古品のリユースや古着の購入などThrift=倹約に動くことも考えられる。米国ではリユースはビジネスとして確立しており、secondhand storeやthrift storeが一定の市場を掴んでいる。それがトランプ関税によりどこまで拡大するかだ。また、YouTubeなどでは日用品などのリペアの動画が盛んにアップされている。これまで格安の商品に甘んじてきた米国の消費者が手持ちの日用品を修理してまで使うようになるのか。その辺はなかなか読みきれない。

一方、米国向けに輸入品を製造する中国では中小の工場に高関税の影響が出始めている。格安越境通販の「シーイン」の下請け業者がそうだ。トランプ大統領は5月2日から800ドル(約11万円)以下の小口貨物にも関税を課す。シーインは対抗策として、下請け業者にベトナムに工場を移すように通知した。広東省広州市にある中小の縫製工場では受注が減少し、経営体力が乏しい町工場は次々と廃業に追い込まれている。中には、シーインからの受注をやめて、SNSのライブ配信で直接衣料品を売るスタイルに転換を図ることもある。高関税の影響は米国の輸入業者やバイヤーから直接発注を受ける業者も深刻だ。東莞市で革製品を製造するある工場は、発注先の米企業4社から2024年末までに全ての取引を打ち切られたという。それでも、24年の売上高約5億円のうち、8割はアジアを中心にしたもの。今後は日本やシンガポールとの取引などにシフトするところが増えていくと見られる。
中国の習近平主席は4月14日~18日から近隣のベトナム、マレーシア、カンボジアを歴訪。3カ国のトップには米国の保護主義への抵抗をよべかけ、対米共同戦線の構築を図った。ベトナムは米国の貿易赤字が問題視されると、3月25日には自動車やLNGの関税引き下げを発表。中国との間では領有権問題がくすぶるため、経済的利益を追求する上でも共同するしないをはっきりさせるなどバランスのある外交方針を取る。マレーシアは米中対立の煽りを最小限に抑えたいのが本音で、、同月10日にはASEAN(東南アジア諸国連合)議長国でとしてオンラインで経済相特別会合を開催し、報復措置を講じない方針を取りまとめていた。カンボジアはインフラ整備などで中国から支援を受けているが、ASEAN脱退をしてまで親中路線を傾斜すれば、その反動がもろに出ることに危機感を滲ませる。各国は中国が提供する経済協力の実利は得たいものの、米国に対して対抗措置を講ずることには二の足を踏む。中国の思惑通りには行きそうもないのが現実だ。
米国で赤字が続くメルカリに福音!?

では、日用品などに課される高関税を前提とした場合、米国の個人消費はどうなるのか。以下のようなことが考えられる。
①低関税の国に同様の商品の製造委託し輸入する。
②米国国内に工場を設けて製造する。
③中古品のリユースや修理して暫定対応する。
①は選択肢としていちばん可能性が高いが、米国のマーケットに対応するサプライチェーンを築くには時間を要する。しかも、チェーン化を急げば、安全基準などに適合しない非正規品の流通を促すかもしれない。中国を排除した新しい貿易体制を作る上では重要なことだから、時間をかけながら少しずつシフトしていくことが理想だ。
②は家電からおもちゃ、バイク、自転車までの全てで、今から新規に工場を作るには何年もかかるは、できる限り消費地の近いところでの生産に動き出す企業もある。LVMHはルイ・ヴィトンの米国工場およびティファニーのアトリエでの生産拡大を図る考えを示した。デンマークの玩具大手レゴは、2027年の稼働を目指して東部バージニア州に工場を建設中だ。20億ドルにおよぶ大型投資になる。アイリスオーヤマは米国の4工場に総額1300万ドル(約18億円)を投じ日用品などの生産を拡大する。各社とも関税引き上げや貿易摩擦の影響を受けにくい生産体制を確立するのが目的だが、米国の製造業全体を見ると労働力の確保とコスト構造が国内製造に対応できる体制にはなっていない。コストを下げるために低賃金の不法移民を雇用すれば、トランプ政権の方針に反してしまう。どれほどの企業が後に続くかは不透明だ。
③は低所得者が多い米国では一定のマーケットが出来上がっている。課税により格安の商品が入ってこなくなると、緊急避難的に拡大することは考えられる。日用品などを修理して使うという文化が広がる可能性はあるが、そのコストが新品より高くなれば利用者は限定的になる。トランプ大統領が宣う米国内の製造業を復活させるのは厳しいにしても、中国とその周辺国に頼らない新たなサプライチェーンの構築や中古品のリユースや修理、対応する倹約スタイルがさらに広がれば、米国経済の活性化にはつながると思う。

トランプ関税により、それまで手頃だった商品が値上がりすれば、購入に二の足を踏む消費者は少なくないだろう。従来は価格が安いから新品に買い替えていた層も安い中古品でもいいかと思うようになれば、リユースビジネスは一気に勢いづく。今回、高関税が課されるおもちゃ、ボードゲーム、子供用家具、遊具セット、乳幼児向けの器具、子供服、机、椅子、本棚、ファッションジュエリー、ペット用品、テント、寝袋、アウトドア用具は日本では中古品も人気だ。米国でも新品が高騰すれば、消費者はこれまで以上に中古品に流れていくと思う。注目されるのはメルカリだ。同社の米国事業は赤字が続いているため、消費者に倹約ムードが漂えばリユースビジネスにも追い風が吹く。それをいかに引き込むかである。

メルカリが強みとするのは、出品される商品そのもの。Amazonのような新品サイトとは異なり、メルカリにしかないアイテムが買えることが利点だ。新品は高いが、中古品だから安く買えるほかに、すでに廃盤、販売が終了したものなどもある。DIY系のホビー商品などもあり、一般の小売店では買えない商品もある。アジアからの格安な商品が高騰しても商品そのものの価値が上がるわけではないが、メルカリのサイトには付加価値のある商品が手頃な価格でラインナップしている。メルカリに出品されているおもちゃ、ボードゲーム、子供用家具、ファッションジュエリー、ペット用品、テントは、高関税が課される品目と共通する。これらの出品が増えていけば、リユースへの注目度はさらに高まっていくと思われる。
メルカリでは個人取引に伴う様々な問題が発生している。一例を挙げると、メルカリで8万円ほどのデニムを購入したが、実際には果汁グミが届いたという驚くもの。購入者がXに投稿すると8000万以上のインプレッションを叩き出したことから、それだけ多くの関心を集めたのがわかる。概要は以下だ。デニムはレアでなかなか出回らないもので、購入者がずっと探していたアイテムだった。8万円は安くはないが、購入に迷いは無かった。受取評価が高い出品者だったことも、即決の決め手になった。しかし、購入後にデニムの型番で検索をかけると、別の出品者からの無断転載画像であることが判明。そこで、出品者に別の写真を提示するよう求めたが、送られてきたのは無断転載画像の背景だけを加工処理したものだった。疑念が深まる中で、送られてきたのはデニムではなく、果汁グミだったのだ。購入者は念の為、郵送されてきた袋の形状から何らかの証拠となるように、開封の際には動画を撮影しておいた。
購入者はメルカリに対して、事件のあらましを説明し返金を求めましたが、なかなか事態は進展しなかった。そうこうしているうちに出品者の方が先に取引をキャンセルしたため、結果として返金はされた。購入者はXへの投稿が大きな反響を呼んだことで、それを見た出品者が慌てて取引をキャンセルしたのではないかと、推測する。しかし、これで問題が解決したわけではない。出品者が取引をキャンセルした場合、購入者は相手を評価することができない。高い評価のままでは、また同じような詐欺行為が起こる可能性もある。Xへの投稿は世界中の人々が閲覧しているわけで、それはリユースビジネスを行うメルカリにもシステムの不備を突きつけられた形と言える。むしろ、フリマアプリの開発者として出品者、購入者の双方が安心して取引ができるようにするためにも、初めから相手を騙す意思を持って出品するような行為を阻止できるようなルール作りやシステムの改良に踏み込むべきだ。
5月5日、トランプ政権が関税引き上げを巡る日米交渉で、米国がほぼ全ての国・地域からの輸入品に課す一律10%の相互関税に加え、日本に対する上乗せ分の14%の撤廃も拒否していることがわかった。となると、米国民はインフレによる日本車の高騰を懸念して買い控え、それとも中古車で凌ぐのか。中国や周辺国の関税率も撤廃することはないだろうから、日用品のリユースに追い風が吹けば、メルカリとしても米国事業を黒字化するチャンスと見るかもしれない。となると、日本以上に不正行為が続出することも考えられる。新たなビジネスチャンスには相応の対策が求められるということだ。
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